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加藤慎平のオニチェック!気になるあの選手のココを見よ!

【加藤慎平の選手解説】北井佑季、Jリーガー時代に培った“タフなメンタル”と“神経伝達能力”が魅力

2023/10/10 (火) 15:00 45

元グランプリレーサーで競輪評論家の加藤慎平さんがビッグやグレードレースで推したい注目選手を紹介。競走データからは見えてこない選手の特徴を解説します。今回は12日から15日まで小田原競輪で開催される「施設整備協賛小田原城下町音頭杯(GIII)」に出場する北井佑季選手です。

ずば抜けた“適応能力”

 今回、紹介するのは、神奈川・119期の北井佑季選手だ。筆者からすれば、いまGI初制覇に最も近い選手といっても過言ではない。

 そんな北井選手、実は元Jリーガーなのだ。30歳手前まで、松本山雅FCなどのクラブチームで、MFやFWとして活躍。その後、競輪選手に転身し、2021年5月にデビューしたオールドルーキーと言える。

 完全な自転車未経験から、約2年半という短いキャリアS級1班に昇格。異例のスピード出世を果たした。

 自転車競技は、長く自転車にまたがった時間が長いほど完成に近づくという格言があるほど。S級S班の選手を見ても、佐藤慎太郎選手や平原康多選手などのベテラン勢が活躍しているように、経験やレース勘がモノを言う競技と言っても過言では無いのにだ。

 ではなぜ、北井選手はここまではやく頭角を表せたのか。筆者が分析するに、Jリーガー時代に培った“メンタル”と“適応能力”が大きいと見る。

 もちろん競輪一筋の筆者からすれば想像の範疇を超えないが、競技人口やファンも多いJリーグの選手として、数々の局面を切り抜けてきた精神力は並大抵ではない。しかも、相手からボールを奪い取るフィジカルや、一瞬の判断で身体を動かす神経伝達能力にも優れており、心身ともにタフなのだ。

 これらのストロングポイントが、競輪でもいかんなく発揮されている。

 一例を挙げると、北井選手はレース中でのリカバリー能力がずば抜けているのだ。

 北井選手の代表的なスタイルは基本的に、前受けから突っ張って逃げてそのまま押し切るレーススタイルだ。するとライバル選手たちは、警戒して北井選手を“叩きにいく”。叩くとは、“後方から一気に上昇して先頭のラインより前に出ること”だ。つまり他のライバル選手は、北井選手に逃げの手を打たせないために、先に逃げようと仕掛けるわけだ。

 まだデビュー2、3年の先行選手だと、一旦叩かれるとそこですでに自分のレースプランが崩れてしまうことが多く、そのまま力が出し切れず不発に終わってしまうケースが多い。一度叩かれてしまえば、ラインの切れ目(主にライバル選手が併走しない4番手や7番手のこと)までポジションを下げざるを得ないため、そこから挽回するのが難しいのだ。

 しかし北井選手は、叩かれた後も簡単にポジションを譲らない。ライバルたちとの位置取り争いに競り勝ち、2番手や3番手の位置をキープする場面も多いのだ。これを競輪では“外を捌く”といい、一般的にはキャリアを重ねるにつれて身に付いていく”経験”がものを言う技術と言える。

 考えてみてほしい。時速60キロ以上も出てるレース中、ブレーキもついていない自転車で走るだけでも相当怖い。そんな状態のなか位置取り争いをするために、時には強引にライバルとぶつかったり、急激な横移動したりすると考えたら、その恐怖はかなりのものだ。

 ただ、強靭なメンタルを持つ北井選手は、臆することなくポジションを取っていく”勇気”も兼ね備えていると言っても過言では無い。

 しかも判断力も長けているのでいざピンチの展開になってもすぐさま次の行動に移すことが出来る。

 レース中はコンマ1秒でも相手より速く動く必要があるなか、北井選手はどう動くか頭で考えた瞬間身体が動いているので、その情報を身体に伝える神経伝達能力も優れているのだろう。

 もちろん逃げ切るスタミナや、一瞬でライバルを出し抜く瞬発力など、脚力も競輪界トップクラス。そのうえ前述の”メンタル”と”適応能力”も兼ね備えている。サッカーの世界で、酸いも甘いも経験してきた北井選手だからこそ、他の選手にはない強さを持ち合わせているのだ。

8月の富山記念(GIII)決勝。最後まで眞杉匠選手(紫・9番)に主導権を渡さなかった。青・4番が北井選手(写真撮影:チャリ・ロト)

優勝は濃厚、どう勝つかを見届ける4日間に

 急成長を続ける北井選手。12日から開催される施設整備協賛小田原城下町音頭杯(GIII)では、最有力選手としての立ち回りが期待されるだろう。

 寛仁親王牌(GI)直前でS級S班不在、勝率64.7%・2連対率76.4%・3連対率88.2%と相性抜群の小田原バンク。北井選手にとっては地元地区のレースーー。有利な条件がそろった今開催は、”どんな勝ち方で優勝してくれるか”、そう断言してもいいほど優勝は濃厚だろう。

 当然、車券も北井選手の1着固定で問題ない。2着は松坂洋平選手をはじめ同じ番組に出場する南関東勢に流し、3着は中団のラインから選ぶのが吉だ。なぜなら北井選手は前受けからの突っ張り先行(道中から終いまで逃げること)だと、後方のラインは突っ張られる可能性が高くなるからだ。

 ともかくここは、北井選手の強さに酔いしれる4日間となりそうだ。

北井佑季選手3行メモ
主戦法は逃げてそのまま押し切るレーススタイル
叩かれた後もポジションを譲らず2番手や3番手をキープする事がある
一瞬の判断で身体を動かす神経伝達能力が優れている

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加藤慎平

岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々なメディアでMC・解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。筋トレ、サウナ、ゲームなどに造詣が深い。

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