戦況の見極めと迷いのない仕掛けが魅力

　今回紹介するのは、熊本・113期の嘉永泰斗選手。先行や捲りを得意とするデビュー5年目の25歳、若手自力型の選手だ。

　眞杉匠選手(24歳・栃木=113期)、前回紹介した犬伏湧也選手(28歳・徳島=119期)、それに嘉永選手の三人が「期待の若手枠」から抜け出した次世代のGI候補筆頭格だろう。

　自力選手はレース展開が一辺倒なぶん、展開に左右されがちな面もあるが、嘉永選手には安定感もある。総合的な能力が高く、展開不問でソツがない。ダッシュ力やトップスピードの高さ、スピードの持続力などに加え、レースセンスも兼ね備えている。仕掛けのタイミングや思い切りの良さがあり、渋太い外並走やイン粘りなど横の動きが出来るのも強みだ。

　数年前までの嘉永選手はどこか自信無さげで仕掛けが遅いレースも散見されたが、今では残り1周半から動く機会が増えた。自分からレースを組み立ててライバルたちにプレッシャーを与えることもできれば、マークがキツいときは一瞬の隙をついて捲りにも回れる。

　今期の競走得点が116点を超えているのは充実の証だろう。S級S班であればレース平均点が高い記念競輪以上だけを走ることができるが、嘉永選手はS級1班でFIにも出走する。FIは3連勝しても113点ぐらい。5月〜7月はGII以上のビッグレースが続くとはいえ、それでも、ここまで高い数字を叩き出す選手は見たことがない。大叩きも少なく、車券貢献度はS班並みだ。将来的には、松浦悠士選手や古性優作選手のように、爆発的な脚力を持ちつつ番手戦もこなせるポテンシャルを秘めている。

　今開催の金鯱賞争奪戦は、先行勢が手薄で、嘉永選手にとっては走りやすいメンバー構成だ。S班の守澤太志選手、新田祐大選手、平原康多選手はいずれも捲りや追い込み主体の戦法。S1で先行力が強力なのは坂井洋選手、渡邉雄太選手、山口拳矢選手、三谷竜生選手、取鳥雄吾選手、伊藤旭選手。捲りのスピードは山口選手が上かもしれないが、それ以外のメンバーと比較すると、優勝候補筆頭といっても過言ではない。弱点を挙げるならラインの総合力。彼を後ろを守る選手が手薄な感じはする。

　前場所のサマーナイトフェスティバル(GII)では初日予選で4着と敗退したが、内容は悪くない。徹底先行型の野口裕史選手の3番手を取って捲れていた。野口選手を追ったこと、自分の後ろの選手が佐々木悠葵選手と並走になったことで、脚力やメンタルを消耗してラストの失速につながったと見ている。ただ、他の選手に位置取りの厳しさを見せることは、後々のレースを考える大事なこと。2日目と3日目はしっかりと1着を取っているので力はある。

　今開催は車券は頭固定で狙いたい。番手に強烈な差し脚を持つ選手もいないので、差される展開は考えづらい。逃げて差されて2着よりも、捲り切っての押し切り期待できそうだ。初日で打鐘あたりから仕掛けていれば、調子が良い証拠。記念3勝目に期待したい。