2023/08/02 (水) 12:00 29
富山競輪場で「開設72周年記念 瑞峰立山賞争奪戦(GIII)」が8月3〜6日の日程で開催される。7月函館競輪「サマーナイトフェスティバル(GII)」で大会3連覇という離れ業を披露した松浦悠士(32歳・広島=98期)に、佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)と新山響平(29歳・青森=107期)、そして郡司浩平(32歳・神奈川=99期)とS班が4人出場する。
松浦の勢いが増してきた今、新山ーシンタロウ(佐藤)、郡司がそこを叩けるか、西武園競輪の「オールスター競輪(GI)」に向けて意味を持ってくる。その西武園で勝負をかけるためにも、S班勢を打ち破っていきたいのが眞杉匠(24歳・栃木=113期)だ。2021年の5月に京王閣ダービーでGIの決勝に勝ち上がった。
その決勝は内に詰まり悔しいものとはなったが、「この男はやる」を満天下に知らしめた。記念の優勝も手にし、関東で誰もが認める存在だ。関東を代表する選手として、今回は結果が欲しい。西武園ではもちろん平原康多(41歳・埼玉=87期)が中心になるが、「眞杉が頑張ってこそ」を、この富山から発信したい。
眞杉は先行を中心とした戦いで、堂々と上位に上がってきた。2周突っ張り先行も苦にせず、ラインを生かし、またそこに圧倒的なスピードを備えてきた。脇本雄太(34歳・福井=94期)というまだ手の届かないところにあるスピード、持久力の世界はあるが、挑戦権は持っている。
では、勝つために何が必要か。今までのラインで戦うことは基本。函館の準決に何を見るか。先行した眞杉は、清水裕友(28歳・山口=105期)を合わせ切るも、新田祐大(37歳・福島=90期)にはまくられてしまう。しかし2センター。守澤太志(38歳・秋田=96期)に渾身の体当たり、諦めない姿勢でゴール前までもがき抜いた。
あとわずかのところで4着になり、決勝には進めなかった。それでも、あの体当たりの意味は眞杉自身の体の中に深く残っただろう。
「噛みつけ」。自分との戦いだけではなく、敵があるのが競輪。敵に噛みついてこその姿勢があった。優しく幼いのは見た目だけでいい。これからは敵を倒すマインドで攻めてほしい。
相撲の双葉山に象徴される“後の先”という領域がある。相手が攻め込んでいるようで、実は主導権を握っているというもの。相手は操られるように攻めさせられている格好だ。勝負事の究極として語られることが多い。
ただ、そんな風にカッコよく語る必要もないレースをシンタロウは函館の最終日に見せた。6Rは最終2角で9番手。シンプルに厳しい位置に置かれてしまった。競輪は展開があるので、それは仕方ない。別に、それを望んだわけでもない。
ただ、不利な状況に置かれた。
しかし、明らかに不利なところから勝利をもぎ取った。後の先、という奥深い戦い方も強いわけだが、このシンタロウは強かった。もしかしたらシリーズで一番の盛り上がりだったかもしれない。“神”の強さじゃない“。カッコいいオジサン”の強さだった。そんな人間の姿に、誰もが惚れ抜いている今がある。
そうだ、富山行こう。みんな〜、富山行こう!
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。