2023/07/01 (土) 12:00 26
少し前の話になるが、富山競輪場で「全プロ(FII)」が行われた。競技大会の方では菊池岳仁(23歳・長野=117期)が1キロメートルタイムトライアルとチームスプリントの2冠に輝いた。1キロを勝った後、囲み取材の時にあるポーズを披露してくれた。
「キクちゃんポーズ、やって!」
声の主は古性優作(32歳・大阪=100期)だった。
すると菊池が、ラブ注入のようなポーズを激しく決めてくれた。最初は構えが甘かったものの、何度も撮る内に一気に安定感が出てきた。アイキャッチという言葉があるが、まず読者や視聴者を惹きつけることが情報の世界では重要だ。
菊池のそれは、完璧だった…。
おっ、何だこれ。このきっかけがあるだけで、競輪や自転車競技をあまり知らない人たちでも、そこに目が行くことになる。古性がスーパープロピストレーサー賞を勝った後、「後ろ乗り」という超絶の曲劇を披露したのもファンサービス。
「古性さんがあれだけのことをやっているんだから、自分がやらないなんて」
菊池は競輪界を引っ張る古性の姿を見て、自分も何かできないかと行動に移したわけだ。以前にも書いたことだが、野球のWBCの盛り上がりは選手の姿をファンが共有することで加速した。
その面では競輪界は取材規制によりいったん失速している形になっているのは事実。だが、ミックスゾーンができた後も関係各所、関係者が意見を交わし合い、ファンに伝えるべきもの、が見直される流れもある。進展に期待したい。
全プロ競技大会の時は取材が広くできる体制だったので、選手のリアルな姿に迫ることができた。やはり、これだけ魅力的で面白い選手たちが揃っていて、そしてやっていることは人間離れしたすさまじさ…というものが相まって伝えられるといいなと、改めて感じた。
片手ガッツポーズ写真には、みんな飽きたことだろう。選手サイドからも「これでいいの?」という声を聞く。公営ギャンブルとしての公正安全に関わる写真があるとすれば、古今東西問わずダメだが、これまでも、そうではない、選手の思いが伝わるいい写真はいくらでもあった。
選手からすれば、あれもこれも撮られる、では集中できずたまったものではないもの事実。ただしその上で、過去の取材では取材側が気を使いながら、その中でいい表情や闘う姿を収めてきた。取材できる場所、タイミングは非常に重要。進展に期待したい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。