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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

【太田りゆの優勝報告】10秒596で日本記録更新! 自己ベストの裏側に“ラプンツェル現象”と“掟破り”/2023UCIアジアトラック選手権

2023/06/29 (木) 18:00 22

 netkeirinをご覧のみなさん、今月もこんにちは太田りゆです⸜(˙꒳˙)⸝今回のコラムでは6月16日〜19日にマレーシア・クアラルンプールで行われたアジア選手権を振り返ります。嬉しいご報告を書ける結果になりました♡♡♡

心強い仲間とアジア選手権へ。信頼する通訳・アリス氏と現地にて(写真:本人提供)

スプリントで連覇達成、日本女子が表彰台を独占

 今回のアジア選手権はスプリントで優勝しました! 予選の200mタイムトライアル(以下:200mTT)では10秒596の自己ベストを出して日本記録を更新! アジアチャンピオンジャージを死守し、2連覇を達成できました(*^^)v

 今開催はスプリントだけではなく、チームスプリントで銀メダル、ケイリンでは銅メダルを獲得し、出場したすべての種目でメダルを獲得することができました。オリンピックポイントをかけた大陸選手権、昨年よりもハイレベルになったメンバーを相手にしっかり結果を出せたことはとても前向きに捉えられる内容です。

金銀銅のメダルを全色コンプリート(写真:本人提供)

 スプリントとケイリンの両種目で日本女子が表彰台を独占。世界選手権の出場枠を「3つ」獲得することに成功しました! 私自身の成績もチームの成績も本当に充実していて、とても良いシリーズになりました。

日本に残り留守を守った愛猫を表敬訪問し結果を報告した(写真:本人提供)

タイムトライアルに向けたシミュレーションは“サイアク”

 さて、今回は日本新記録を出した200mTTの話をします。私たち自転車競技選手にとってタイムはとても重要な指標で、日々ずっと向き合っているものです。タイムトライアルの結果によって対戦メンバーも決まるため、結果を左右するものといっても過言ではないです。

 私たちの現地入りはレース2日前でした。トレーニング、調整を含めて200mTTのシミュレーションができるチャンスはたったの1本…。普段は本番前に最低でも3本くらいはできるので、環境としては厳しかったです。

自転車競技選手のステータスにおいてタイムこそ最重要(撮影:Takenori Wako)

 このシミュレーション段階でトラックの特徴を掴み、「助走の加減」、「最適な走行ライン」をチェックするのですが、走る前にジェイソンコーチと相談タイム。いつもの流れのとおりに意見をもらいました。『トラックにクセがあるけど色々タイミングは変えずにいつも通り走って』とジェイソン。

 大切な1本なのに、なぜかすべてのタイミングがちょっとずつ早くなってしまい“ぐっちゃぐちゃ”に…。走行後にはジェイソンから『サイアクだった…。いつも通りに走ってと言ったじゃん…』と言われる始末…。本番を前にめちゃくちゃ不安になる1本となってしまいました。

ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチ(写真:本人提供)

本番前に“ラプンツェル現象”

 そして当日、朝のウォーミングアップで1度だけ走行ラインを確認できる時間があり、前回の反省点をすべて改善して走ることができました。そしてジェイソンの元へ意見を聞きにダッシュ!『ごめん。りゆのこと見られなかったよ。シンジのタイム取ってたから。ちゃんとできた? 大丈夫! ラインのことは気にせず! とにかく思いっきり踏んで♡♡♡』とのことでした。

「ふぁああ!?!? 見てなかっただとぉぉおお!?!? 思いっきり踏んでだとぉぉおお!?!?」とココロが大波に襲われました(笑)。ただでさえ朝起きた時から「今日はハロン速く走れるかなぁ怖ァ⤵⤵(⚭-⚭ )」とドキドキとしょぼんの気持ちでしたから。ジェイソンの「OK!」だけがココロの支えになるのに!

 でも「いや、ここ最近は10秒7より遅いタイムは出ていないし、さすがにもう自己ベスト更新できるかも♪」と今度はルンルン楽しみになってくる感じもあって。恐怖と期待の二つの感情が行ったり来たり!

 私はこの心理状態を勝手に「ラプンツェル現象」と呼んでいます。(ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』でお母さんから逃れるため塔を抜け出した喜びとお母さんが心配するかもしれないと悲しみ、二つの感情を行ったり来たりするシーンにちなんで)

感情の起伏が激しいラプンツェル現象(撮影:Takenori Wako)

絶対的な掟を破り送った自分への言葉

 そんなラプンツェル現象とともに本番へ。私はアジア選手権の出走の中では世界ランクトップなので最終発走となります。最終発走の“独特”な緊張感は言葉で表すのは難しいです。私以外の全員のタイムを把握してから自分が走る部分に“独特”があるのだと思います。

 自分の発走する前の上位3人は10秒6台をマーク。その結果に「何かを思うのか? 思わないのか?」かは『思うべきではない』のが今までの正解です。人に意識を向けず自分に集中するのが鉄則。でも今回は違いました。その結果に対して奮い立つメンタルがありました。

「なるほど3人は10秒6台か! それなら私は10秒5台で行けるじゃーん! ルンルン!」そう思って準備していました。なにこのメンタル!って感じでしたが、ラプンツェル現象は完全に立ち消え、覚悟決まりまくり。

 いざスタートしてフェンス沿いを走っている時には過度の緊張からハンドルを支える肩周辺がプルプルしていました。ハロンをする時の私の絶対的な掟『本番は自問自答しないルール』も破りました。「緊張しないでとにかく思いきり踏んで!」とひと言だけ自分に強く言い聞かせて走りました。

覚悟決まりまくりの掟破り! フルパワー全開!(撮影:Takenori Wako)

10秒596の日本新記録

 走行ラインはガタガタだったし、感覚も良くなかったです。でも思いっきり踏んだ! ゴール後に頭を上げて液晶画面を見るのがあんなに怖いと思ったことはありません。おそるおそる見てみると『10秒596』の表示!

顔を上げると自己ベストかつ日本新記録が表示されていた(撮影:Takenori Wako)

 日本記録とかではなく自己ベストを出せたことが最高でした。嬉しかったぁ、ほんとに嬉しかった! スプリントは対戦で最後まで勝ち上がってやっと優勝になるので、タイムが良くても喜ぶに喜べませんでしたけどね(笑)。

 今回のスプリントは2日間に渡って行われたため「次の日優勝してから喜ぼう!」と決めました。そして、次の日しっかり優勝できました♪

2連覇を達成しスプリント種目アジア女王の座を死守した(撮影:Takenori Wako)

世界選手権に向けてもう一段あげていく

 今回の会場はタイムが出やすい環境に位置していたと思います。トラックも出やすい環境でした。それでも、どんなトラックでもどんな装備でも確実に10秒7をコンスタントに走れる力がついてきました。

 帰国後、新田祐大さんに「環境が良かったから10秒5が出たけど、またあのタイムがすぐに出せるかわからない」と言ったら、『世界記録だって高地のトラックの記録が認定される。その日その場所で同じ環境下で1番速かったことに変わりはないんだよ』と返してもらいました。その言葉を受けて自信を持っていいんだ! とやっと思えました!

 全日本選手権→アジア選手権→世界選手権と徐々にコンディションが上げられるようにコーチ、スタッフ、ナショナルチームの全員が選手のために調整をしてくれています。今回もたくさんのサポートを受け、本当にみなさんのおかげで完璧な状態で本番を迎えられました。そして、たくさん応援してくれてパワーを送ってくれた日本のみなさんにもたっくさんたくさん感謝しています。本当にありがとうございました!

 次は8月の世界選手権! ここからさらにいい状態にできるよう頑張って行きます✧。٩(ˊωˋ)و✧*。

チーム一丸となって8月の世界選手権へ乗り込む(撮影:Takenori Wako)

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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

太田りゆ

Ota Riyu

埼玉県上尾市出身。112期生のガールズケイリン選手。2017年7月、高松競輪場でレースデビューし、初勝利を飾る。同開催では3連勝を果たし、デビュー場所で完全優勝という快挙を成し遂げる。また日本代表・自転車競技選手としても活躍しており、2019年にはワールドカップに出場し、ケイリン種目で銀メダルを獲得。2020年11月には全日本選手権女子スプリントで優勝。国内外のハイレベルな戦いに華麗なダッシュで挑み続けている。趣味はメイクとファッション、パワーの源はコカ・コーラ。

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