アプリ限定 2023/06/20 (火) 12:00 133
岸和田競輪場で6月13〜18日に開催されたGI「第74回高松宮記念杯競輪」で、古性優作(32歳・大阪=100期)が地元GI連覇という偉業を成し遂げた。初日の戦いで落車、再乗しての8着というスタートだった。
一次予選が2走で争われるため、2走目で上位着を取れば二次予選に進める可能性が残る。それに、かけた。
「やってはいけない落車をしてしまい、お客様に迷惑をかけてしまった」。痛む体だったが、ファンに返すべきものがあると歯を食いしばった。
一次予選2走目、二次予選、準決と3連勝でファンからの信頼を少しずつ、初日の失敗から取り戻していった。苦しい時に、どうかーー。
ファンの目は、これまで以上に古性の体に集まっていった。そこ体の奥には“魂”が宿っていた。
村上義弘さん(引退=73期)が2012年の京王閣グランプリで、肋骨骨折を負ったすぐ後に優勝したことがある。その体でーー。
ファンは競輪選手のすごさに改めて感動したものだ。村上はそのレースにとどまらず、ケガや病気、苦しいことと戦い続け、その戦いを克服していった。下を向かず、鬼の形相で戦い続けた。
重なる姿があった。村上さんがいないからこそ、古性の“魂”は震えたのかもしれない。ここでくじけてしまうことは、近畿の選手として、“村上義弘”の背中を追いかけた男として許されない。決勝は脇本雄太(34歳・福井=94期)、稲川翔(38歳・大阪=90期)と3人で結束。考えることはない。
ラインの動きに身を任せることが、すべてだった。それが、近畿がやってきたこと、だった。
前受けとなった脇本は新山響平(29歳・青森=107期)の上昇を突っ張った。今回の仕上がりから、また、その力をもってすれば、この時点で優勝のチャンスは近畿の3人に絞られたと言っていい。
「ラインから優勝者を」
近畿地区のGIに込められた脇本の思いが、あの判断につながった。スイッチが入るポイントになったのは赤板前の4角辺りとのことで、「全プロの失敗があったから」。新山との細やかな駆け引きもあったそうだ。
ちなみに、古性が涙する姿は取材する中では見ることはないものだった。
しかし、ワッキーに聞くと「以前にも、あるんですよ」とのこと。その姿を見たことがある。古性という男を知っているからこそ、また3番手にいた稲川翔への信頼、思いからの判断だった。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。