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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士のレース回顧】一つひとつのレースを糧に!松阪、四日市の激闘を振り返る

2021/04/22 (木) 18:00 13

今月も松浦悠士選手によるレース回顧をお届けします。今回は3月末開催の松阪競輪「ウィナーズカップ(GII)」と4月初旬開催の四日市競輪ナイター「ベイサイドナイトドリーム(GIII)」の振り返りです。 レース中の心境やファンの皆様に伝えたい想いなどを真直ぐに綴っていただきました!

 netkeirinをご覧のみなさん、松浦悠士です。今回は松阪ウィナーズカップの振り返り、そして四日市ベイサイドナイトドリームの振り返りをしていきたいと思います!

雨の中のGII戦! 松阪競輪『ウィナーズカップ』

昨年優勝しているウィナーズカップ、連覇は意識せずに臨んだ(撮影:島尻譲)

シリーズ前の練習の反動

 まずは、ウィナーズカップを振り返っていきたいと思います。開催前にかなり練習を追い込んで入ったので、感触が悪いかなと思いきや、前検日はあまりいつもと変わらず、いい感触でした。「意外に大丈夫だな」と思ったのですが、初日は全然自転車が出てくれず、レースが終わってからも、かなり身体がしんどかったです。やはりダービーに向けてハードに追い込んだ反動があるなと感じました。

 とにかく日に日に軽くなることを祈るばかりでした。二日目は後ろでかなりの牽制があり、一旦前まで出るか迷ったんですが、あそこまで意識し合うならば、先行争いかなと思ったのですが、野口さんがスッと出てしまったので、早めに巻き返しにいきました。自分のいつものイメージでは、ホームあるいは2コーナーぐらいでもう1車身、2車身は前にいけるイメージでしたが、やはりこの日も自転車の進みが良くなく、なんとか内に入って、ゴール前接触しながらも3着で準決勝戦に進むことができました。まともなレースができずに悔しい気持ちでした。

苦しい時に感じるラインの力

 準決勝戦はまさかの中四国が三人一緒のレースとなりました。ここは門田君が先頭で「自力でやりたい」ということでしたので、三人で相談して、門田君、僕、裕友で並ぶことにしました。門田君の後ろの前後は「もし決勝戦一緒に勝ち上がれたら、僕が前」という話をしたので、この並びになりました。

 レースは門田君がものすごく早くから仕掛けてくれて、後ろの状況を判断しつつ、番手から早めに抜け出しました。最後は裕友に交わされたものの、二人のお陰で決勝戦に上がることができました。こういう苦しい時こそ、ラインの力というのが大切になってきますし、「助けてもらったな」とすごく感じました。

 この日も感触自体はあまり良くなかったのですが、タイムをみて一安心しました。二日目まで迷いもあり、思い切ったレースができてなかったので、決勝戦は思い切りのいいレースをしよう、と思いました。全日本選抜では深谷さん、郡司君にいいようにやられてしまったので、その借りを返すためにも(笑)。

雨の決勝! 自分のことのように嬉しかった

 そして決勝戦です。雨のレースとなってしまいました。昔は雨のレースは得意だったのですが、今はあまり好きではありません。レース自体のスピードが上がってきているので、滑りそうになる感覚があるためです。しかし、条件は皆一緒なので、好き嫌いは言っていられません。

 レースは深谷さんを後ろに置き、高橋君が先行体制に入っているところを「残り一周半の打鐘からは駆けないだろう」と考え、隙をついていく作戦でした。最初の仕掛けは作戦通りにいきました。その後、高橋君のダッシュにまさか守澤さんが一瞬離れ(これは嬉しい誤算でした)、高橋君の番手で一回休むことができました。しかし、あのまま番手で休んでいると、裕友か僕が守澤さんと競り合いになると思い、競り合いになる前に、と思い仕掛けました。この日は感じもすごく良く「ワンツーが決まるかも!」と思いましたが、裕友に抜かれた後、古性君の強襲に合いました…。

雨の決勝、裕友と確定板に乗ることができた(撮影:島尻譲)

 しかし、特別競輪の決勝戦で二人揃って確定板に乗れたのは2019年の競輪祭以来となります。絶好の展開でしたが、やはり決勝戦となると二人で決めるのは難しいなぁと改めて思いました。裕友の優勝は苦しんでいた時期も近くで見ているため、自分のことのように嬉しかったです。むしろ、自分が優勝するよりも嬉しかった感覚です(笑) そして、この時のコンディションで、これだけ戦えたのは自信になりましたし、今後が楽しみにもなりました。あとはダービーにむけて突き進むのみです!

ナイターGIII! 四日市『ベイサイドナイトドリーム』

 松阪に続き、また三重県でのレースになりました(笑) 前走のウィナーズカップの後、かなり身体にダメージがあり、ケア中心に調整しました。四日市は「なんとか走れるな…」そんな状態でした。

初日からハイペースな争いに

 初日特選レースは深谷さんの先行を捲る流れとなりました。打鐘の時点でかなりハイペースの流れとなり、苦しい仕掛けになりました。深谷さんの先行がものすごくかかっていて、これいけるかな…と思いながら捲ってました(笑)。なんとか深谷さんのすぐ後ろまではいけたものの、そこで脚はもう残ってなく…。深谷さんのすぐ右後ろの風がこないところで何とか耐えていました。一瞬深谷さんのサドルと左手が接触してしまいましたが、なんとか2着でゴールしました。

 今回も状態面は不安な感じだったのですが、思ったより良くて安心しました。そしてこの日、心ないヤジがありました。これについては最後に書こうと思います。

 二日目は四分戦でした。僕は自力の選手が多いほど入れ替りが激しく、巻き返す機会も多くなるため、自力が二人の二分戦、自力が三人の三分戦よりも得意としています。そして、その通り出入りは激しくなり、最終先行する形をとりました。叩き切ったあたり脚にまだ余力もありましたが、最終バックあたりからだんだんと余力がなくなり…、最後はラインの香川さんに交わされ2着となりました。いつもなら押し切れると思い仕掛けましたが、、、。香川さんの仕上がりが良かったのか、僕の仕上がりが良くなかったのか…。

準決勝、会心のレースができた

準決勝のレースは会心の走りができた(撮影:島尻譲)
 続いて三日目です。この日は会心のレースができました。深谷さんがかなり早めに仕掛けて、展開の助けはあったものの、踏み出した感触がとても良く、和田さんのブロックも耐えて、(原田)研太朗と1、2着でゴールできました。過去に何度かワンツーしてますが、僕が前で押し切れたのはおそらく初めてです。自転車の進みも良く、「ブロックがきても大丈夫だな」という感覚がありました。ただ、深谷さんもあれだけ長い距離を踏んでの3着でしたので、かなり仕上がりは良さそうだな、とも思いました。

同じ敗戦をしてはいけない

 そして最終日です。決勝戦はライン4車まで固めてくれましたが、一瞬あった仕掛けるタイミングを逃してしまい、無理やり仕掛けて平原さんに合わされてしまい、番手の諸橋選手に一発もらったところで終わってしまいました。

決勝は5着(橙・7番車が松浦選手)という結果に(撮影:島尻譲)

 踏み出した感触と、伸びる感触が違った感覚がありました。最終バックでは雨走路で滑りそうな感覚もあったため、身体のバランスが良くなかったのかもしれません。四日市で感じたことを活かせるように、同じ敗戦をしないようにしなければなりません。これは年間何十走とありますし、相手がいることなので中々難しいことでもあります。しかし「このシーン、前にも見たな」ということにならないようにしなければ、観てくださってる、車券を購入して下さってるお客様を楽しませることはできません。

 なのでスタートの並びでこれはまずいな、と思ったら、みんなが予想していないだろうという動きを第一に考えていたりします(笑)。これはスタートの並びもそうです。セオリーだけで考えれば「何で前からなんだ」、「何で後ろから?」と思われるかもしれません。ただ、僕は勝つための作戦としてスタートからの計算があります。そこも見ていただけると嬉しいです。

ちゃんと伝えたいこと

 最後に、初日のヤジについて書かせていただきます。選手紹介の時からレースの周回中、ゴール後と『お前ドーピングしとるらしいなー!』、『ドーピングで強くなったんやろー!』とのヤジがありました。これは着位や、レース内容に全く関係のない事実無根のものであり、到底聞き流せるものではありませんでした。そして、選手間でも『松浦はドーピングしている』という噂が流れているのも耳にしています。

 自分はGPでもドーピング検査をしています。今も昔もドーピングをしていないですし、引っ掛かるような薬を服用したことも一度としてありません。病院に行くことがあれば、医師にドーピングに引っ掛からないようにと入念に相談をした上で薬を処方してもらっています。自分なりに努力して、細心の注意を払って生活しているにも関わらず、こういう事実でない噂、ヤジが出ることが信じられません。こういう行為は”人を傷付ける”ということを認識して欲しいです。これはファンの皆様だけでなく、関係者の皆さんにも言えることだと思います。

 僕は自分で見たこと、聞いた話以外は100%信用しないようにしてます。昔、自分も選手間での噂話を信じたことがありました。が、それが間違いだということに気付きました。全く事実と異なる噂がとても多いのです。自転車の寸法や、練習にしても、選手によく聞かれますが、事実と違うことを聞かれることが多々あります。

 長くなりましたが、噂話等は鵜呑みにせず、ヤジも節度をもって(誹謗中傷や名誉毀損等にならないように)してもらいたいと思います。僕自身は『着位やレース内容に関するヤジはあって当たり前』だと思っています。その分、車券に貢献できた時、レースに勝った時は、皆さんと一緒に喜べるので! これからもこんな僕でよければ、応援のほどよろしくお願い致します!

連覇のかかる武雄記念、そして目標のダービー

 まず武雄記念ですが連覇がかかっています! 今年は昨年からの連覇が多いので(和歌山は岸和田GIIIですが、個人的には連覇だと思っています笑)自分でも期待しているところです!しかも裕友がいるので安心感は抜群です(笑)優勝を目指して頑張ってきます!

 京王閣ダービーももちろん優勝を狙っています。「ダービーを目標に!」というのを今年は言い続けてきました。大変名誉のある大会ですし、僕はGIレースの最高峰だと思っています。ここをとるためにしっかり準備して挑みたいと思います!

皆さんの応援が力になりますので、よろしくお願いします!(撮影:島尻譲)

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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