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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の詳細解説】地元広島で優勝! ホームバンクで負けてたまるか

2021/03/24 (水) 15:00 5

あのレース中、松浦悠士選手は何を思っていたのか。あのとき、状態は良かったのか悪かったのか。今回は、松浦選手が出場した川崎GI「全日本選抜競輪」と玉野記念in広島「瀬戸の王子杯争奪戦」を振り返ります。松浦選手がバンクで見ている景色からレース後の感情まで、今月も松浦選手はリアルのままを綴ってくれました!

 皆さんお久しぶりです。松浦悠士です。遅くなりましたが、全日本選抜の振り返り、そして玉野記念の振り返りをしていきたいと思います!

今年最初のGI戦! 川崎『全日本選抜競輪』

今年一発目のGI戦を走ってきました

前検日では絶好調の感覚があった

 今年最初のGIは決勝4着という結果に終わりました。

 それでは初日から振り返ります。初日はかなり風が強く、とても厳しいコンディションでした。豊橋の時とは違う風で、「少し風が強いな」という感じでしたが、レースの時には激しい突風が吹いたりして、すごかったです…。初日はホームの突風に助けられた感じはありましたが、新山選手を捲ることができたことは自信になりました。

 実は前検日の指定練習でとても感じがよく「絶好調!」と言える出来でした。しかし、前検日の夜に少し寝違えたような感覚があり、首に痛みがある状態でした(自分は調子がいい時に首に痛みが出やすく、それは悩みの種でもあります泣)。

 道中は全く余裕はなかったのですが、無理矢理いきました。なんとか捲りきれたものの、レースが終わってからはもうバテバテでした…。ただ、前検日での状態が良かったことから、思い切って仕掛けられてよかったです。

 しかし、風の中での走りだったので、また節間で(冬場は特に変わりやすい)バンクコンディションが変わるのが……、と思っていました。やはりバンクコンディションが変わると、仕掛け所や自分自身の感触も変わるので、レースが難しくなったりします。

スタールビー賞、裕友から躍動感を感じた

 1着で初日を勝ち上がり、二日目は全員が準決勝にいける『スタールビー賞』を走れることになりました。やはり準決勝が決まっているというのは良いものです(笑)。そして、ここではGP以来の(清水)裕友との連係になりました。初日の走りを見て、自分は後ろでという感じでした。裕友から前で走りたそうなイキイキとした動き、躍動感を感じたためです。レースはその通り、躍動感溢れる動きをしてくれました。

 すごいスピードで郡司君の上をも越える勢いでしたので、これはいったなと思ったのですが、一回出られたところから郡司君が盛り返してきました。僕は裕友が合わされたので、外では間に合わないと思い、最終3コーナー、2センター付近で内に進路をとろうとしましたが、小倉選手(接触した時は誰かわかっていません)と接触して事故が起きそうになったので、踏み込んでいたのですが、一度立て直すような形になりました。

 その間に前との距離が空いてしまい3着でした。ただ、このレースで自分よりも裕友の調子がかなり良いなと確信しました。そして、まさか準決勝も裕友と一緒になるとは…!

準決勝、裕友を抜けなかった

 もう裕友の出来の良さは確認できていたため、何も言うことはありませんでした(笑)。自分はただ信頼してついていき、最後に抜けるかどうかだけだと思っていました。裕友は準決勝も素晴らしいレースをしてくれました。すんなり番手でついていって、抜けなかったのはかなり久しぶりでした。それだけ彼の仕上がりはよかったです。僕は前検日の良い感触を取り戻せないままでした。

次のレースに活かす敗戦にする

 そして決勝戦はもう成す術なく…という敗戦でした。深谷さんがあんなに早いタイミングでいくとは想定しておらず、中団にいたことが裏目に出てしまいました。残り2周からかまされて、あのスピードで後方に置かれてしまっては万事休すです…。

 とは言っても今後もレースは続きますので、対策は練らなくてはなりません。そして今年最初のGIということもあり、GIIIを走る以上に”力関係”が把握できました。これを参考に今後戦っていこうと思っています。

地元戦! 玉野記念in広島『瀬戸の王子杯争奪戦』

 今年の玉野記念は、玉野競輪場の施設改修のため広島競輪場で行われました。S級S班になってからは初めて広島で走れることとなりました。それだけに地元のお客様の前で走りたかったのですが…。新型コロナウイルスが早く落ち着くことを願うばかりです。

 地元広島で行われるレース。もちろん負けられません(笑)。決勝戦は厳しい展開となりましたが、裕友のチャンスメイクにより、優勝を飾ることができました。のちほど詳しく振り返りたいと思います。

 広島で行われますが、冠は『玉野記念』であることから、岡山の選手が地元と言えます。とはいえ、ここは広島です(笑)。「自分が絶対優勝するぞ!」という気持ちを持ってシリーズに入りました。

「地元で負けてたまるか」の気持ちで開催を迎えた

初日は後ろで

 初日はフォーム改善により、直前の練習の感じが良かったことから前検日の前日に、裕友に「前で走りたい」と伝えました。彼に後ろでしっかりチェックしてもらう為です。レースは何度考えてもホームで行く展開しか浮かびませんでした。その通りにホームで仕掛け、出足もよく、いい形で運べ、ラインで決めることができました。内容と感触は満足できるものでした。もう少しゴール前でいい勝負ができるように脚力向上は常にテーマとしてありますが。

二日目に感じた“過去最高”の手ごたえ

 二日目は地元の柏野さんと連係しました。最近は本当によく連係が決まっていて、柏野さんと一緒だと安心します。二日目は福岡の新人岩谷君と、(過去回の)コラムでも書いたことのある川口聖二君との対戦でした。この日もホームで仕掛けることを念頭に置きつつ、川口君がいるので、臨機応変に走ろうと思っていました。

 レースは残り一周前から仕掛けようとしたところを川口君が仕掛けたので、それに乗るような形から踏んでいきます。踏み込んだ感触、スピードの乗り、フォームの安定性が”過去最高”でした。仕掛け、前団を捉えたあとも、しっかりゴールまでハイスピードで踏み切れ、満足のいくレースでした。この仕上がりなら「優勝争いはしっかりできるな」と感じました。

岩津さんの300勝に貢献できた

 ここも地元の岩津さんと連係することになりました。岩津さんはプライベートでも交流があり、自分が強くなったきっかけを作ってくれた先輩の1人です。育ててもらったと勝手に思ってます(笑)。絶対に一緒に決勝戦に乗りたいという思いで臨みました。

 しかし、メンバーは中部が川口君を先頭に自力、自力で並び三番手はかなりの曲者の坂口(晃輔)さん…。そして近畿は、縦も横も強い野原君が相手です。仕掛け所を間違えればあっさり負けてしまうことも頭に浮かびました。ここで僕は状態の良さをいかしてキツイ仕掛けを選びました。「川口君が踏み込んだタイミングでいこう」と。これならば中団の野原君が仕掛ける前に先頭に立つことができるな、と。

 普通は仕掛けるタイミングが合ってしまうと、横で止まってしまったり、行ききれずに浮いてしまったりしてしまうのですが、中部の番手が自力の伊藤君だったので、車間を切ることを予測していました。なのでタイミングが合っていても苦しくはなるけど、なんとか越えれるだろうと思っていました。それだけ準決勝は厳しいと思っていました。

 仕掛けが苦しくなった分、最後は失速してしまい岩津さんに差されてしまいましたが、一緒に決勝戦に行けたこと、そして300勝に貢献できたことは嬉しかったです。三番手の小川勇介さんとも別府記念で連係が決まらなかったこともあり、一緒に決勝戦に上がれてよかったです。

決勝戦! 中四国は別線の戦い

 決勝戦の並びはすごく時間がかかりました。準決勝が終わり、決勝メンバーが出揃ってから中四国の5人で話をして、最終的には取鳥君が太田(竜馬)君について、中四国で別れて戦うことになりました。僕は裕友の番手にいかせてもらいました。

 レースは地元の二人を連れた太田君が早めの先行をするだろう、と思ってました。黒澤君も対抗して踏むとは思っていましたが、太田君のスピードがあまりにもすごく、一瞬「これはヤバイな」と思いましたが、裕友がホームで無理矢理仕掛けてくれて、取鳥君が番手から踏むのを一瞬躊躇したため、前団はひとかたまりになりました。

 外から踏んでは間に合わないと判断し、内に進路をとり「頼む! コース空いてくれ!!」と願うと和田(健太郎)さんが取鳥君の内を攻めていったので、前が空きました! ハイスピードになったものの余力はあったため、空いたコースを全開で踏み込みました。そして1着でゴールすることができました。

地元広島で優勝できた

 ゴールしてからはホッとした気持ちと、地元広島で優勝できた嬉しさが込み上げてきました。そしてやはり、裕友は頼もしいなと思いました。『瀬戸の王子』という称号は欲しかったので嬉しいです(笑)。

『瀬戸の王子』になりました!

 広島記念(ひろしまピースカップ)は12月にあり、GP直前に行われることもあることから、広島でレースを走る機会が本当に少なくなり「地元のお客様の前で走りたい」という思いは、より一層強くなりました。

 新型コロナウイルスが落ち着き、広島で走る機会ができましたら、是非皆さんご来場していただけると嬉しいです。その頃にはファンサービスもできるようになってるといいなぁと思ってます(地元選手が1着をとるとカープとのコラボTシャツ、タオルの投げ込みを行ってました)。

ウィナーズカップいってきます

 連覇がかかるウィナーズカップですが、今のところ正直自信はありません(笑)。玉野記念からウィナーズカップの間に練習量と強度を高めており、疲れが溜まりに溜まっています。何とか初日までに抜けてくれるといいな、という感じですが、疲れてるからといって負けるわけにはいきません。状態を確かめながら、戦法でカバーしつつ、しっかり戦っていこうと思っています。

 日に日に状態は上がると思いますので、レース前のコメント等で確認していただき、予想の参考にしていただけたらと思います。それでは精一杯頑張ってきます! 応援よろしくお願いします!

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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