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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の優勝報告】目標の“ダービー王”に! さらに努力を重ねていきたい

2021/05/14 (金) 11:00 15

5月9日、最高峰のGI・日本選手権競輪の決勝を制し、『ダービー王』の座を勝ち獲った松浦悠士選手。今回は、連覇を成し遂げた武雄記念『大楠賞争奪戦(GIII)』、凄まじい死闘が繰り広げられた京王閣『日本選手権競輪(GI)』のレース振り返り・優勝報告をお届けいたします。

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。この度はいつも応援してくださってるファンの皆さんに、武雄GIIIと、目標にしてきた日本選手権競輪(以下、ダービー)の2つの優勝報告ができることをとても嬉しく思います! そして、このコラムは函館GIIIへ行く新幹線の中で書き上げております。おやつを食べながら…(笑)。

たくさんのおやつを用意して函館に向かっています

武雄記念の連覇

武雄連覇でダービーへの弾みをつけることができた(撮影:島尻譲)

 それではまず武雄GIIIから振り返りたいと思います。武雄は昨年に続いての連覇となりました! 裕友がいいレースをしてくれて、小倉さんと室井さんがしっかり後ろを固めてくれたので、小倉さんとのワンツーフィニッシュで優勝することができました。

ダービー優勝に繋がる“気づき”があった

 武雄は初日と2日目に昨年7月に使っていた、いつもと違うメーカーの自転車を使用しました。練習での感触がとてつもなく良かったからです。以前使っていた時に感じたことのない好感触を得ていたので、「ダービーでも使えるかもしれないな」と思いました。

 しかし、いざレースを走ってみると「うーん…」という感じでした。フレーム自体の踏み応えが少し軽いため、早くスピードが上がる分、そこからの加速感や、伸びが足りないような感覚…。ダッシュ等はいいんですが…。「練習には向いていて競輪には向いていないのかな」という印象でした。練習はある程度ゆっくりしたスピードから始まり、競輪はある程度早いスピードから始まることに違いがあります。

 僕は競輪には、いわゆる「惰性」が効かないフレームはセッティングでは厳しいと感じています。武雄で使ったフレームも良いものなんですが、競輪になると、いつも使うフレームと比べて「あと少し…」という感じです。全くダメならレースでは使うレベルにはいかないので、レースで試すという時点でフレームはそれなりに良い(合っている)物です。しかし、その少しの差が、必ずレースには影響してくるので、僅かな違いを感じ取らなければなりません。

 練習では好感触を得ていたものの「ダービーで使用するべきか」という迷いを武雄の時になくすことができたことは大きかったです。こういう精神的な迷いがなくなったこともダービーの優勝に繋がっている、と振り返っています。そして、準決勝からはいつものフレームに戻してのレースでした。準決勝は小倉さんには抜かれましたが、ラインで上位独占することができ、決勝戦を有利に戦うことに繋がりました。

 決勝戦は山田庸平さんと郡司君、そして裕友の3人の仕掛けが重なり、苦しい流れになりましたが、裕友がなんとか出切ってくれました。これは自分だったら出れてないだろうな…と、裕友の強さを後ろで体感しました。いつも本当に頼りがいがあります(笑)。

裕友の強さを肌で感じる決勝だった(撮影:島尻譲)

 ウィナーズカップ、四日市ナイターGIIIに比べると調子も上がってきて、優勝もできたので、ダービーがすごく楽しみになりました。あとは最終調整をしてどこまで仕上がるか…。

待ちに待った2年振りのダービー

目標にしてきたダービーがはじまった(撮影:島尻譲)

 そして京王閣へ。さぁ、待ちに待ったダービーです。今年は「ここが目標」と言い続けてきました。自分にできることは全てやってきて、あとはレースで出すだけ。前検日の指定練習の感触もとても良く、「仕上がってるな」という感じでした。

 ダービーは6日間開催と長く、力を出すための過ごし方も重要になってきます。僕は2日目の出走だったため、1日目は休みでした。休みといっても、1走もせずにダラダラし過ぎると身体が鈍るので、指定練習とローラー練習で身体を動かしました。この日も感触が抜群で、走るのが楽しみになりました。

 しかし、2日目の朝起きると身体の状態があまり良くなく…あれ? 昨日までの良い感触がない…と感じました。そして「優勝したい」とずっと言い続けてきたため、いつもはそんなに緊張しないのに、めちゃめちゃ緊張するではありませんか…。2年振りのダービーに気持ちも舞い上がっていたのかもしれません(笑)。

決して甘くなかった道のり

 ただ、いざレースになると緊張感もなく進めることができました。この日は風がかなり強く、いきなり突風が吹いたり、なかなか厳しいコンディションでした。選手紹介の時にホームに追い風が吹いているように感じたため、なるべく主導権をとる形で「最終ホームで仕掛ける形をとりたいな」と思っていました。

 郡司君を後方にやるように…と思いながら踏んでいましたが、ものすごいスピードでこられてしまいました。ただ、自分も駆けるつもりで踏んでいたため、番手にはまることができました。あとは強い郡司君が先行しているため、後ろの状態を確認しつつ、いつ抜け出すかという感じ。

 ところが最後の直線で抜け出したものの、浅井さんに交わされてしまいました。正直、自分としては絶好の展開で、最終バックでは1着を獲れると考えていたため、この敗戦はショックでした。それと同時に、自分の調子や、浅井さんの調子を把握できた瞬間でもありました。思ったほど仕上がってないな…、緊張のせいなのか…?

 2走目は4日目に行われたゴールデンレーサー賞でした。レースは裕友の番手で最終4コーナーを番手ながら、またしても交わされてしまいました。少し待ったとはいえ、足も溜まっていましたし、合わせられると思いましたが…。郡司君もかなり仕上がってるなと思い、僕の自信は少しずつなくなっていきました。

ゴールデンレーサー賞で郡司君の仕上がりの良さを感じた(1番車・白が松浦選手 撮影:島尻譲)

緊張からの解放、勝負の準決勝

 そして勝負の準決勝です。この日が一番緊張しました。そもそも決勝戦に勝ち上がらないことには優勝のチャンスもありません。「目標なんて言わなければ良かったな」とこの日は少し後悔してました(笑)。

 レースは正直、あの打鐘前から、どうしようどうしようって感じでしたが、あの位置にいても厳しいなと思ったので、とりあえずいけーって感じで仕掛けました。そうすると古性君が全く同じタイミングで仕掛けてきたので、無理することなく一旦番手に入りました。しかし、そこから古性君の横の動きを恐れてなかなか動けず…。でも慎太郎さんが二車後ろにいたのが見えたため、仕掛けないとチャンスないしな…、と思いながら踏んでいきました。

 そうするとやはり大きく牽制されてしまいました。かなり距離的なロスがあったものの、ある程度準備ができていたため、なんとか3着で勝ち上がることができました。やっと緊張から解放された瞬間でした。あとは裕友が上がってくるのを祈るのみです。裕友もなんとか無事に決勝戦に上がり、連係が叶いました。正直、裕友がいなければ優勝はなかったと思います。それだけ決勝戦のメンバーとは、出来に違いがあったと思います。

裕友と一緒に決勝の舞台へ(撮影:島尻譲)

決勝レースの振り返り

 レースはスタートから始まりました。車番はお馴染みの3番車でしたが…。3番車だと理想のスタートの位置が取れないため、作戦的に厳しいレースになります。この日は後ろになりたくないと思っていたので、スタートは全力で出ていきました。すると平原さんが中団に引いてくれたため、前からレースを進めることができました。後ろで郡司君が眞杉君に並走しているのが見えました。

 いつ来るのか、と、ダッシュする準備をしつつ、レースが進んでいきます。残り一周半の2コーナーまで仕掛けてくる気配がなかったため、これはもう裕友の先行だな、と思いました。あとは仕掛けてきた選手を牽制して…と色々考えます。

 そしていよいよ裕友が踏んだとき、郡司君が仕掛けてきて三番手に入ったのが見えました。「うわー、真後ろにいるよ…」と思いながら走っていました。「頼む! 早めに仕掛けてきてくれ…」と仕上がりに自信が持てていなかったので、牽制できるタイミングできて欲しかった…。脚を溜められると最後交わされてしまうかも…という思いがありました。

 しかし、仕掛けて欲しい気持ちとは裏腹に郡司君は脚力を温存します。そして、最後は後ろを見ずに自分のタイミングで踏み込みました。そして、案の定、郡司君と自分とはスピードの差があり、やばい、交わされる…と思って、外に牽制しながら追い込んでいると、内から物凄いスピードで突っ込んでくる選手が…。

 郡司君は身体が当たらないように外に避けていったため、次は内へ牽制を入れます。この時「抜かれたくない!」という思いで肘を出しました。引っかかりさえすれば抜かれないためです。日頃からそういう練習もしていますし、この日のためにハンドル投げの練習もしていて良かったなと思いました。

ゴール直前の動作、これは日頃の練習の成果が出た(撮影:島尻譲)

 持てる力、技術を全て出して、展開も絶好…、「これで負けてたらもう獲れないかも…」とまで考えました。自分としては、慎太郎さんには勝っているのはわかっていました。が、外の郡司君に行かれたかも…というゴールでした。レースが終わって、敢闘門に帰る間もオーロラビジョンを見てましたが、どっちが勝ったかわかりません…。そして敢闘門に帰ると、裕友が「獲っとる」と言ってくれました。僕は本当に? と思いながら、決定を待ってました。結果は微差で優勝!

日本選手権競輪を優勝し、ダービー王になりました(撮影:島尻譲)

さらに進化できるように努力する

 優勝して一番に思ったことは、裕友の頑張りが無駄にならなくて良かったということです。あれだけやってくれたのに、自分が優勝できなかったら合わせる顔がありません…。終わってみれば、4走全てで最終4コーナー2番手という、運と展開に恵まれた開催だったと思います。もちろん優勝に関しては、裕友の走りに尽きますが。

 これで目標としていたダービーを優勝することができ、次はグランプリへ照準を絞っていけます。ただ、ダービーで自分の足りないところがまだまだあるな、と痛感したため、やるべきこともまだまだあります。GIを獲ったからといって、慢心や妥協をせずに、さらに進化できるようにまだまだこれからも努力していきます。スイーツを好きなだけ食べながら…(笑)。これからも応援よろしくお願いします!

ダービーが終わり、帰りには目当てのスイーツをたくさん買いました

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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