2023/04/30 (日) 12:00 8
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は久留米競輪場で開催されている大阪・関西万博協賛競輪の決勝レース展望です。
5月2日から【日本選手権競輪】を控えていることもあって、【大阪・関西万博協賛競輪】は、S級S班不在での大会となりました。
しかも、初日の特選に出ていた村上選手が、落車の影響で3日目から欠場するなど、有力視されていた選手たちの敗退が続いた一方で、この大会を盛り上げていたのが、若手の先行選手たちです。
横の動きに強いベテラン選手が少ないことも相成って、スタートの位置取りから思い切ったレースをしていく若手選手たちが、どのレースでも台頭していった結果、決勝には20代の先行選手が5人も名を連ねました。
しかも、関東だけで6人が決勝に進んできたのも驚きでした。どんなラインを組むのかと思いましたが、結びつきの強い「栃茨」の4人が朝倉選手-橋本選手-小林選手-岡田選手で連係し、伊藤選手-柿澤選手は別線を選択しています。
九州は2車だけとなりましたが、林選手-塚本選手のラインとなり、青森の嵯峨選手は単騎でのレースとなっています。
栃茨の4人の中では競輪選手としてのキャリアは上(115期)ながらも、年齢は下(23歳)の朝倉選手と、橋本選手(119期、29歳)の並びがどうなるかと見ていました。
バックの回数では橋本選手の方が多かったものの、ここは年上の橋本選手を、年下の朝倉選手が立てる形となりました。
先行が濃厚と言える4車のラインとなれば、番手の橋本選手はかなり有利にレースを運んでいけます。しかも、別線になったとは言えども、伊藤選手は橋本選手の後ろを攻め込んでくることはしないでしょうし、単騎の嵯峨選手もここで脚を使いたくはないはずです。
となれば、並走から栃茨ラインの分断を狙ってくるのは九州ラインぐらいですが、それも朝倉選手が後方から一気に仕掛けてしまえば、付いていくのは困難でしょう。
一番車は林選手ですが、伊藤選手はスタートを取りに行くことが多く、また林選手は前受けをしてしまうと、後ろにいた伊藤選手にインを切られた瞬間に、栃茨ラインに一気に行かれてしまいます。
むしろ林選手としては中団で構えながら、6番手から上昇してくるであろう、栃茨ラインと共に動き出していった方が、分断策も含めて選択肢は広がってくるはずです。
それでも、朝倉選手が行き切ってしまえば、後ろにいる橋本選手の番手捲り、そして後ろを回っている伊藤選手との上位独占が本線になりそうです。
怖いのは切れ目からレースをしてくる単騎の嵯峨選手です。今大会は優勝こそできていませんが、3日間と通して内容のあるレースを続けているだけに、はまった場合には頭もあるかもしれません。
また、先行していく栃茨ラインと、九州ラインの並走する時間が長くなった場合には、その後ろから捲りを狙う伊藤選手にとって、絶好の展開となります。伊藤選手が頭まで来た場合は万車券も狙えそうです。
決勝に進んだ9名の誰が優勝してもGIII競輪の初優勝であり、そして、上位3名には11月に行われる【朝日新聞社杯競輪祭】の出場権が与えられます。
まだGIを走ったことのない若手選手にとって、【競輪祭】の出場は名前を売る絶好の機会ともなります。まずはここで優勝を目指すだけでなく、悔いのない走りを見せてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。