2023/04/25 (火) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は武雄競輪場で開催されている大楠賞争奪戦の決勝レース展望です。
【大楠賞争奪戦】の準決勝は、北日本ラインでの上位独占となった10レース。そして、脇本選手が地元の山田選手を引き連れながら捲っていった12レースと、共に堅い決着となった一方で、11レースではS級S班の平原選手、松浦選手を含めた5名が落車という波乱のレースとなってしまいました。
S級S班の2人と木暮選手、吉田選手は、この後に【日本選手権競輪】への出場も予定しているだけに、怪我が軽傷であって欲しいと願うばかりです。地元の山口選手も決勝まであと一歩だっただけに、この落車は悔しかったのではないのでしょうか。
決勝ですが新山選手-佐藤選手-内藤選手と、準決勝と全く同じ並びとなったのが北日本ラインです。
意外だったのは九州ラインの伊藤選手-山田選手の後ろに、四国ラインの橋本選手-湊選手が連携したことです。
伊藤選手と山田選手は地元の利を生かして、脇本選手の後ろを回る選択肢もあったはずです。ただ、脇本選手と山田選手とで並んだ準決勝の結果を見ても、後ろに付いていては優勝は無いとの判断だったと思います。
四国ラインの2人も、脇本選手が捲っていった時に引き離される可能性もあっただけに、それならば九州とラインを組んだ方が、まだ勝機はあると踏んだのでしょう。
脇本選手の後ろは広島の大川選手となりました。ただ、大川選手は自力も出せる選手なので、脇本選手のスピードにも付いて行けるはずです。
この9名でやはり人気の中心となりそうなのは、ここまで3連勝の脇本選手でしょう。二次予選での上がりタイムの10秒7は、バンクレコードタイでもありますし、準決勝のレース内容からしても、決勝に向けて更に調子を上げてきた感もあります。
ただ、好調の脇本選手に対抗できる出来と言えそうなのが新山選手と言えます。初日の特選では直線で脇本選手に捲られながらも、4着に粘りこんでいただけでなく、準決勝で見せた突っ張り先行は、強いインパクトを残してくれました。
スタートを取るのは車番的にも脇本選手となりそうですが、中段には北日本ライン、そして5番手以降が、九州プラス四国ラインで流れていきそうです。
4車のラインの先頭を任せられた伊藤選手は、脇本選手を抑えに行ってから先行体勢へと入ると思いますが、その時に先捲りを打ってきそうなのが新山選手です。
8番手まで車を下げてからの捲りを狙っていく脇本選手ですが、伊藤選手はラインから優勝者を出していくような走りをしていくはすです。となれば、番手から捲っていく山田選手にとっては絶好の展開となります。
連日に渡って先行をしてきた新山選手も先捲りならば、持ち前のスピードを更に持続できるできるはずです。互いに捲りを放っていく山田選手と新山選手がその差を更に広げていくようだと、脇本選手がバンクレコード以上の上がりを使っても、前にいる2人を差し切れない可能性が出てきます。
脇本選手の能力が抜けているのは間違いありませんが、展開次第では高配当も狙えそうなレースです。ここは新山選手が頭となる車券、そして山田選手の2着、3着付けも絡めながら、細かい予想をしていきたいと思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。