2023/04/12 (水) 12:00 30
小田原競輪場で4月13〜16日に開設74周年記念「北条早雲杯争奪戦(GIII)」が行われる。例年、夏真っ盛りの8月が小田原記念の印象だが、今年はうららかな4月の開催。川崎競輪場が10月まで改修工事ということもあり、川崎記念「桜花賞(GIII)」のシーズンに収まった形だ。
郡司浩平(32歳・神奈川=99期)からすれば、小田原から平塚ダービー(GI日本選手権・5月2〜7日)と今年一番の勝負所だ。2021年2月の川崎「全日本選抜競輪」から遠ざかっているGI優勝。平塚で、南関の意地を示すためにも今回流れを作れるかどうかは重要だ。
目には見えない気運というものがある。静岡記念の優勝はあったものの、何か乗り切れない2023年。1本欠場することで、一度精神的にもリセットし、“ここから”を期す。今回何が大事かというと、大挙出場の神奈川勢をまとめ、また南関全体で「郡司を」をアピールできるか、だ。誰しもが頂点を目指しながらも、やはり大将を据え、ラインとしての強さを誇る必要もある。
昨年の大会では、決勝で深谷知広(33歳・静岡=96期)ー田中晴基(37歳・千葉=90期)と、神奈川4車で別線だった。今回も多く南関勢が勝ち上がってくれば、準決、決勝で南関がどう並ぶか、が焦点になる。
その時に、どう並んで、どう戦ったのか、が結果以上に大きくなってくる。南関ラインへの意志を、誰がどんな形で、強さを確かさをアピールするか、できるか。今節は、そうした選手心理の状況を南関の選手を中心に見つめていきたい。
郡司は表立って強い主張をするタイプではないので、そのスタイルでみんなをどう引っ張るのか。「もしかして南関の中心が郡司から動くのか…」などとファンに感じさせないことも大事だ(いつかは来て仕方ないが)。今は盤石と思うが、このさらに上にたどり着いていい男だ。
新田祐大(37歳・福島=90期)が高知記念(よさこい賞争覇戦)を制し、そこから間もなく小田原に乗り込んでくる。現在の新田は何でもやっていくスタイルを確立した。内を突くことはリスクもあるが、ガムシャラに攻めるのが今の意識なのだろう。
別線分断も上等。キバをむくホワイトタイガーの姿がある。グランドスラマーとなり、S班に返り咲いてのこの走りは熱い。南関の脅威1番手であるし、「ただ並ぶことがいいのか」「いや、やはり結束」「どうするべきか」と新田がいることで思わせることもまた競輪の深みだ。
守澤太志(37歳・秋田=96期)としては、四日市GIII(BNR大阪・関西万博協賛)決勝の悔しさをすぐに晴らしたいところ。新山響平(29歳・青森=107期)の後ろを守り切れなかったことは事実。わずかなことが、攻められる要因になってしまう。KEIRINグランプリ出場の賞金争いでは順調だが、地位を確立するためには踏ん張り時だ。
守澤のところに競りに行った中田健太(33歳・埼玉=99期)の戦いぶりは激しかった。
「冷やかしにならなくて良かった。新山と嘉永が踏んでいる打鐘のところを追い上げられたのは良かった。でも、とにかくきつかった〜」。
それぞれがいろんな思いを抱えての戦いが続く。
競輪選手にとって“競り”は心の部分で相当な負担があると、何度も聞いてきた。しかし、その戦いの価値も揺るぎない。“競り”が燃え盛る競輪でも、あってほしいと思う。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。