2022/12/24 (土) 18:00 44
現役時代は「KEIRINグランプリ」を優勝するなどトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は30日に平塚競輪場で開催されているKEIRINグランプリ決勝レース展望です。
12月30日に平塚競輪場で「KEIRINグランプリ2022」が行われます。20日には共同記者会見が行われ、そこでは車番だけでなく、並びも発表されました。
ファンの皆さんも並びが決まった瞬間から予想を組み立てているのではないかと思います。それだけ待ち遠しいレースとも言えますが、昨年はひろしまピースカップで守澤選手が落車。右鎖骨を骨折したまま大会へと臨みました。
幸いなことに、今年は9名の選手たちが万全の状態でグランプリへと臨めそうですが、まだまだレースまでは時間もあります。更に状態を上げて、最高のパフォーマンスをグランプリでは見せてもらいたいです。
このグランプリで誰もが気になっていたのが北日本ライン4名の並びでした。結果は新山選手-新田選手-守澤選手-佐藤選手と4車での連係を選びましたが、この並びの立役者となったのは、4番手を回る佐藤選手ではないのでしょうか。
同じ北日本の同型である守澤選手と、自分の現在の調子を比較した上での判断だったとは思いますが、この判断が北日本を結束させたとも言えます。
対抗する近畿ラインは脇本選手-古性選手の2車。郡司選手、松浦選手、平原選手は単騎戦と、改めて北日本ラインの厚さは、他の選手たちにとって脅威となりました。
こうなれば、レースの主導権を握る北日本ラインの先頭を任された、新山選手のすべきことは1つだけ。初GI制覇となった競輪祭における新田選手のような、レースの主導権を取っていくようなレースです。
1番車が古性選手であり、車番的にもスタートを取りやすいのは近畿ラインかと思います。
ただ、北日本ラインが前受けをしてくるようならば、後方から脇本選手がおさえてきたとしても、ダッシュ力のある新山選手なら反応できるはずです。そのまま、突っ張り先行も辞さない走りをしてくると思います。
そうなれば競輪祭とは逆に、新田選手の番手捲りには絶好の展開となりますが、ここで注目したいのは、北日本ラインの後ろにどの単騎選手が付けているかです。
車番的にその後ろを回っているのは、郡司選手ではないのでしょうか。決勝に進んできた単騎の3人の中で最も自力型として強いのは郡司選手です。
競輪祭では新山選手のダッシュ力に仕掛けが遅れたのと、守澤選手のブロックにスピードも削がれる形で2着に敗れています。ただ、グランプリでは二の轍を踏まない走りを考えているはずであり、競輪祭の借りを返すのはここしかないと見ています。
もし、車番通りに近畿ラインがスタートを取ったのならば、北日本ラインは後方からおさえてからの発進となります。
この展開となると、松浦選手と平原選手は早めに北日本ラインの後ろに切り替えていく選択ができる一方で、郡司選手は内に包まれてしまうので、不利な展開ともなります。
北日本ラインはこの展開を作り出せれば、更に速いタイミングで、新田選手が番手から発進。そうなれば新田選手だけでなく、3番手を回っている守澤選手にもグランプリ初制覇が近づいてきます。
ただ、この展開となった時、単騎の3人が新山選手の番手を狙ってくる可能性もあります。
新田選手は横の動きが苦手なだけに、もし、松浦選手や平原選手がラインを分断してくるようならば、せっかくの4車の連係も台無しになってしまいます。北日本ラインの作戦として、スタートを取りに行く可能性は充分にあると見ています。
脇本選手は突っ張り先行よりも、捲りでの一発を狙っているはずですが、平塚バンクはコーナーが浅く、カントもあまりないので、捲りには不利なバンクです。ただ、選手としての能力の高さは、誰もが認めるところであり、北日本ラインを相手にしても、次元の違う脚で一気に捲り切ってしまうのかもしれません。
単騎の松浦選手、平原選手は展開的にも難しいレースとなりますが、そこは位置取りの上手さや、勝負勘を発揮して、切れ目から優勝を目指すレースをしてくるはず。むしろ怖いのが、北日本ラインの4番手を選択した佐藤選手ではないのでしょうか。
佐藤選手は番手としての仕事は勿論のこと、コース取りや中割りの上手さもあるからこそ、現在の地位を確立しています。新田選手が抜け出した最後の直線で、守澤選手が後方から来た選手をブロックするべく、外に車を踏んだ時に空いた内を付いてくれば、46歳・最高齢にして2度目のグランプリ制覇が現実となっても不思議ではありません。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。