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【KEIRINグランプリ2022】新山響平インタビュー後編「テレビを観て強く思っていた“そっち側に立ちたい”」

アプリ限定 2022/12/18 (日) 19:00 39

今年の競輪祭で特別競輪(GI)を初制覇し、KEIRINグランプリの出場権利を獲得した新山響平選手。インタビュー後半では自身の武器や理想とする競輪選手像、初出場となるKEIRINグランプリへの意気込みなどをお聞きしました。話題は今ハマっているものなどプライベートなことにもおよび、新山選手のオンオフにも迫ることができました。それでは後編もお楽しみください。
(取材・文 netkeirin編集部)

初出場となるグランプリへ(撮影:島尻譲)

来季はS級S班で自分のスタイルをさらに磨く

ーーここまではレースの振り返りや1年を振り返っていただき話を聞かせてもらいました。ここからは新山選手ご自身について、また「これからの意気込み」を中心に教えてください。

 わかりました。

ーーまず新山選手のスタイルですが、ご自身の思う武器・持ち味を教えてください。

 細かいペース配分をして走れるところだと思います。風を切る時間が人よりも長いところが持ち味です。

ーースピードを落とさず長い距離を踏んでいく先行が新山選手の魅力ですよね。

 それが自分のスタイルなので、しっかりと追及して走ってきました。まだまだ課題を感じているので、もっと磨いていかないといけないと思います。

ーー来季S級S班として走ることになりますが、戦い方に変化はありそうですか?

 いいえ、より自分の持ち味を出せるようにと考えているので、スタイルを変えることはないと思います。あくまでも自分の武器を活かしていく先行が基本です。でもヨコの動きや位置取りの甘さを克服したいので、その部分と向き合って、来年は武器を一つでも増やしたいというイメージがあります。

 今年、大きい着で終えてしまったレースを振り返るたびに「せめて3着以内に入らなくては…」と反省していました。決勝にコンスタントに乗るためにも、厳しく位置を求めたり、際どいところを捲っていく意識だったりが必要になると感じています。そこは意識を変えていこうと思います。

先行基本の姿勢は変えず、レースの幅を広げていく意識はさらに持つと話した(撮影:島尻譲)

ーー目指していく理想はどのような選手像でしょうか?

「圧倒的な脚力を持ちつつ、変幻自在にヨコもできる」が理想形だと思います。一気に理想に近づけようとすると、今すでに持っている自分の持ち味を失いかねないので、焦らずに少しずつという感じで取り組んでいきます。

ーー新山選手にとってライバルは誰ですか?

 自分よりも脚力がある選手はたくさんいるので、特定の選手をライバル視はできないです。でも同期の吉田にはやっぱり意識が向きますね。吉田と自分は選手としてのスタイルは違いますけど、“勝ちにこだわっているからこそ”の走りが見えるというか。吉田の走りから学ぶことは多くあります。

ーー「新山響平VS吉田拓矢」の同期対決をこれからも楽しみにしています。

頑張ります(笑顔)

ライバルに挙げたのは同期・吉田拓矢選手(撮影:島尻譲)

座右の銘「明日やろうは馬鹿やろう」

ーー話は変わりますが「競輪選手って厳しい…」と感じた瞬間と「競輪選手になってよかった」と感じた瞬間を教えていただけますか?

(しばらく考えてから)これ、答えが一緒かもしれないです。以前レース間隔が空いた時に気持ちが軽くて、全然緊張しなかったことがあります。そのレースは結果が出せず、緊張感のなさが問題だったと反省しました。その時に「常に張り詰めるような緊張感を抱えて取り組み続けるのか…競輪は厳し過ぎるなあ…」ってなりましたね。

 でも嬉しい気持ちを感じるのも緊張感の部分にあるんです。ヒリヒリするような緊張感を味わえた時に競輪選手になってよかったと喜びを感じます。1か月に4日制レースを2開催走るとして、1か月に8回もハラハラドキドキしているわけで、そんな職業につけたことが嬉しいです。緊張感を味わいながら真剣勝負できることに幸せがあります。

レース前の緊張感が嬉しくも厳しくもある(撮影:島尻譲)

ーー“緊張”が新山選手のキーポイントなのですね。続いて大切にしている考え方や自身を奮い立たせる言葉、座右の銘などがあれば教えてください。

『明日やろうは馬鹿やろう』です。今やれることを明日に回さず、この瞬間この瞬間でできることを最大限やっていこうと考えています。

ーーすぐにやれることはすぐにやろう、という意識を大事にしているんですね。モチベーションの源はどういったところにありますか?

『明日やろうは馬鹿やろう』と言いつつ、たまに後回しにしちゃうんですけどね(笑)。モチベーションは近くにいる選手たちの活躍を見ることでしょうか。兄弟子や後輩が調子を上げている姿を見るとやる気が湧いてきます。

 ナショナルチーム時代にはチームのみんなの成績をよく意識していましたね。「調子上がってきているなあ」と思う選手を見ては、それがモチベーションに繋がりました。 身近にいる選手の活躍を見ると、自分もやるぞとなります。

ーー新山選手が自覚しているご自身の性格はどのような感じでしょう?

 めちゃくちゃマイペースです。本気で直したいと思ってはいるんですけど、待ち合わせ時間には遅れちゃいます。自分は感情の浮き沈みが少ないタイプだと思います。お酒を呑むとハイテンションになります(笑)。

ーー感情の浮き沈みが少ないといえば新山選手のTwitterで見たんですが、競輪祭優勝後のご飯もカップラーメンを食べていましたよね(笑)。「勝ったぞ! いいもの食べよう!」みたいな気持ちにはならなかったのでしょうか?

 競輪祭の時は競輪場を出たのも遅かったので、お店の「開いている開いてない問題」もありました。でもたしかに「勝ったぞ! いいもの食べよう!」って気持ちはあんまりないタイプかもしれないです(笑)。帰ってからも特別なものは食べていないし。あのカップラーメンは後泊したホテルの自販機で買ったんですが、このご時世なので「祝勝会でドンチャン騒ぎはしてないですよ」のアピールも込めてツイートしました。おいしかったです。

カップヌードルカレー味(写真:本人提供)

ーーマイペースと言えばルーティンとかマイルールにこだわりはありますか? ゲン担ぎをする・しないも教えてください。

 ゲン担ぎは兄弟子から教えてもらったものは必ずやっています。新しいものをおろして使うときには厄落としの塩を振るし、新しいレーサーパンツやシューズは誰かに踏んでもらってから使うようにしています。これをしないと不安になります(笑)。

 そのほかはウェアの洗濯関係にこだわりがあります。洗うときは表で洗って、すべて裏返しにして干します。表の部分に何か付着したり、色褪せたりしないように気をつけています。あと、一回畳んだものしか着ませんね。これはルーティンのひとつですね。

ーーちなみにオフの日は何をしてリフレッシュしていますか?

 ウイスキー探しに酒屋巡り、です。

ーー北日本の選手はウイスキー好きが多いように思います。みなさんと情報交換したりするのですか?

 そうですね。北日本の先輩たちはウイスキー好きが多いです。今ジャパニーズウイスキーが手に入りにくくて価格高騰が起きているんですけど、先輩たちと「あの銘柄は転売価格になってます? あれ買いですか?」とか話し合いをしています。「それは転売価格だね。今は買いじゃない」など会話も盛り上がっています。僕たちは『定価付近で買えないと負け』だと思って取り組んでいます(笑)。

「小松崎さんも本当に詳しくて…!」など楽しそうに話す新山選手

ーー楽しそうですね(笑)。新山選手のおすすめの銘柄は?

 僕が好きなのは「イチローズモルト ホワイトラベル」です。

ーーあとひとつプライベート系の質問をしたいんですが、新山選手は色々なヘアカラーを楽しんでいる印象があります。個人的にシルバー髪の口髭・アゴ鬚の新山選手がかっこよかったです。お気に入りのカラーや失敗したカラーがあれば教えてください。

 シルバー系の髪にヒゲ、しましたね。あれは自分でも気に入っていました。でもあれは髪へのダメージがやばくて、色もすぐ抜けちゃって。状態維持に時間をかけてもいられないのでやめちゃいました。前髪に赤のメッシュみたいなやつをしたことあるんですが、あれは失敗しました(笑)。髪を切るのは気分転換になるので、リフレッシュ方法のひとつになっていますね。

ワイルドスタイルの新山選手(撮影:島尻譲)

赤のメッシュみたいなやつ(撮影:島尻譲)

「そっち側に立ちたい」ずっとイメージしてきたグランプリの舞台

ーーそれではKEIRINグランプリに対する意気込みを教えてください。

 今まではテレビで「そっち側に立ちたい」と強く思いながら観ていました。ずっとイメージトレーニングはしてきたつもりです。自分の武器をしっかりと出して勝負したいです。まだ現時点でライン構成も並びも決まっていません。でもどんな並びになっても、応援してくれたお客さんや一緒に戦ってきた選手に恩返しになるような走りを見せたいです。気合を入れて走りたいと思います。

ーー大舞台で勝つために必要なことは何だと思いますか?

 大きなレースは勝利に貪欲な選手が集結しています。その関係で、僕の場合は自分の先行したいタイミングで行けることって大舞台の方が多いです。普段からしっかりと風を切れることを他の選手に認識してもらうことが駆け引きにおいて重要になりますし、いつでも自分のスタイルで勝負しておくことが必要なのかなと思います。

ーーKEIRINグランプリ2022を楽しみにしているファンにひとことお願いします。

 初めてグランプリに出場します。僕が優勝したら、それはきっと穴だろうし高配当になりますよね。だから穴をあけられるように精一杯自分の力を出し切り戦います。応援よろしくお願いします。

ーー今日はお忙しい中、インタビューありがとうございました! さいごに新山選手の思う『競輪の魅力』をお伝えいただきながら、締めてもらえると!

 こちらこそインタビューありがとうございました。

 僕が思う競輪の魅力は“命懸けの迫力”です。選手は勝たなければ賞金が入らず生活になりませんし、落車のアクシデントがあれば大きなダメージもあります。文字通り命懸けです。大の大人が命を懸けて全力勝負でぶつかり合うレースでは真の迫力を届けられると思っています。これからも競輪に期待してもらえると嬉しいです。グランプリもぜひ楽しんでください!

グランプリで見たい“響平スマイル”(撮影:島尻譲)

※取材日:12月8日(木)
※インタビューはオンラインで実施

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