2022/11/27 (日) 15:00 8
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は小倉競輪場で開催されている競輪祭の決勝レース展望です。
【競輪祭】は今年最後のGIだけでなく、決勝の結果で【KEIRINグランプリ】出走メンバーが決まります。
決勝メンバーもその思惑がうかがえる並びとなりましたが、やはり注目すべきは4車で並んだ北日本ラインと言えるでしょう。
決勝の並びですが、その北日本ラインは新田選手-新山選手-守澤選手-成田選手。関東ラインは坂井選手-平原選手。神奈川ラインは郡司選手-小原選手となり、九州では唯一の決勝進出を果たした荒井選手は単騎となります。
決勝メンバーの顔触れを見た時に、福島の両者(新田-成田)と青森、秋田(新山-守澤)で分かれる可能性もあるのではと思いましたが、この並びを見て、やはり北日本の結びつきは強いと再確認しました。
ただ、新田選手がラインの先頭となったのには驚きました。新田選手は【寛仁親王牌】を優勝して、【KEIRINグランプリ】出場を決めています。
同様に賞金順で出走を確定させている守澤選手、そして、決勝には進めなかった佐藤選手も含めて、北日本は現時点で3人が出場を当確させています。
そうなると、更にラインを厚くしたいと思うのは自明の理となってきます。新田選手は新山選手、そして成田選手にもチャンスが出てくるように、自分が先頭を回る決断をしたのでしょう。
この並びを見た他のラインや荒井選手、そしてファンの皆さんも、新田選手の先行は間違いないと思ったはずです。
これで北日本ラインが前受けをしたのなら、他のラインが抑えにかかったとしても、新田選手が突っ張り先行。そこから新山選手が発進してしまえば、今大会の出来の良さや、小倉バンクとの相性の良さから考えても、新山選手のGI初制覇、そして【KEIRINグランプリ】出場は濃厚となってきます。
ただ、気がかりなのは北日本ラインの4人の車番が、総じて悪くなっていることです。車番通りにスタート位置が決まるのならば、1番車に平原選手がいる関東ライン、そして、2番車に郡司選手がいる神奈川ラインが前受けに行っても不思議ではありません。
そうなれば、新田選手は後方まで下げてからのかまし先行となりますが、問題なのは、番手に入った新山選手が、横の動きを苦手としていることです。
そこを狙ってきそうなのが、今大会で名前を売った感もある坂井選手です。準決勝での自力も見事でしたし、もし、北日本ラインを分断できたとするならば、【KEIRINグランプリ】出場を果たすのは坂井選手となるのかもしれません。
また、北日本ラインが出切ったとしても、準決勝では新山選手の先行を捲り切った、郡司選手の出来の良さ、そしてトップスピードの速さは充分に脅威となります。
北日本ラインが後方に置かれた場合は、波乱の予感も感じさせます。それでも新田選手、新山選手と旧ナショナルチームの2人ならば、後ろ攻めになったとしても、スピードの違いでドカンと踏み出してしまえば、坂井選手も郡司選手も飛びつけないのではと見ています。
準決勝では単騎戦で1着を取った荒井選手は、切れ目を縫いながらチャンスをうかがっていくレースをしてくるでしょう。
初手も関東ラインや神奈川ラインのどちらかに付けていると思いますが、ベテランらしいレース感と、年齢を感じさせないスピードがあると言えども、この展開で優勝まで突き抜けるのは難しいのではと見ています。
同様に北日本ラインの4番手を固めた成田選手も、優勝すれば【KEIRINグランプリ】出場が見えてきますが、新山選手が番手捲りをしたとしてもまだ3番手。しかも、スピードに乗った新山選手だけでなく、その後ろは守澤選手も抜き去るのは大変かもしれません。
それでも荒井選手、成田選手共に決勝に進んだからには、【KEIRINグランプリ】出場へのチャンスは残されているだけに、悔いのないレースをしてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。