2022/12/06 (火) 12:00 8
現役時代はKEIRINグランプリを優勝するなどトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は高松競輪場で開催されている玉藻杯争覇戦の決勝レース展望です。
高松競輪場はうどんで有名な香川県にあります。綺麗な選手宿舎でも、たらいに麺が入っている、釜揚げうどんが食べられます。昼食時は勿論、夕食時もひっきりなしに注文の声が聞こえる人気メニューでもあります。時には晩酌の締めとして、釜揚げうどんを頼む選手もいるほどです。きっと、【玉藻杯争覇戦】の出場選手たちのほとんどが、美味しいうどんで鋭気を養っているに違いありません。
さて、決勝には関東が4人、近畿が3人、そして静岡の簗田選手と、地元の香川選手が勝ち上がってきています。その並びは
関東ラインが眞杉選手-佐々木選手-吉澤選手-宿口選手
近畿ラインが稲毛選手-稲川選手-南選手
この並びを見て、初日の特選とほぼ一緒だと思った方も多かったに違いありません。その時も関東ラインは4車で、並びは眞杉選手-坂井選手-吉澤選手-宿口選手。そして近畿ラインの稲川選手と南選手の後ろに、香川選手が付けました。
特選では外から捲っていった関東ラインですが、3番手を走っていた吉澤選手の位置に、前受けをしていた稲川選手が飛びついていきました。その後、吉澤選手と南選手の落車もあり、結果は坂井選手が押し切って、稲川選手が2着、香川選手が3着となっています。
今回も近畿ラインは4車の関東ラインの分断を図る作戦もありますが、特選と違うのは、稲川選手の前を稲毛選手が回っていることです。今大会の稲毛選手は調子も良く、近畿ラインとしては飛びつきよりも、捲りを狙う手も出てきました。
一方で、関東ラインは特選を勝利した坂井選手が二次予選で4着に敗れたあとに欠場しています。ただ、その時と同様に、自力型が揃ったメンバー構成は強力です。
スタートを取るのは近畿ラインだと思います。これは稲毛選手が捲りやかましを得意としているだけに、後方から眞杉選手が押さえにかかれば車を引くはずです。
そのまま眞杉選手が発進さえしてしまえば、関東ラインは盤石となりますが、今大会の眞杉選手はそこまでの出来ではないように見受けられます。むしろ眞杉選手の番手を回り、今大会は動きの良さが目立つ佐々木選手の方が優勝に近いと見ています。
ただ、後方から捲ってきた近畿ラインが、眞杉選手を交わし切れなかった時には、また話が変わってきます。こうなると、並走の外にいる稲川選手は、南選手と共に関東ラインの飛びつきも考えているはずです。番手を回っている佐々木選手と、3番手を固めている吉澤選手は、横の動きが決して上手くはありませんから、眞杉選手は初日よりも更に積極的なレースをしてくる可能性があります。
稲毛選手が前を回ることで更に盤石になった感もある近畿ラインですが、関東ラインにとっては、逆に分断される可能性が減り、ラッキーなのかもしれません。
簗田選手は3日目のゴール後に落車をしてしまったのが気になります。捌きの上手さはありますが、タテ脚では眞杉選手と稲毛選手に劣っているのは否めません。後ろを回る香川選手は後方で脚を溜めながら、タイミングを見計らって、突っ込んでくるレースが理想と言えるでしょう。
決勝で唯一のS級S班となった宿口選手は、踏み出しが良くないのか、今大会も前の選手と離れてしまうレースが見られました。今年はS級S班の重みを感じながらレースに臨んできていますが、GIで結果を残した脚力は健在ですし、関東の4番手から一つでも上の着順を目指してもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。