2022/11/20 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は富山競輪場で開催されている富山湾カップの決勝レース展望です。
競輪場の宿舎では開催地ごとに、普段の食事のメニューだけでなく、地元の名物料理が頼める「別注メニュー」があります。
【富山湾カップ】が開催されている富山競輪場の宿舎では、地元の海産物が山盛りに入った「あら汁」が名物メニューでした。
他にはご当地ラーメンとしても知られる、「富山ブラックラーメン」も頼むことができます。【富山湾カップ】の好調選手の源となっているのは、宿舎で味わえる、地元の名物料理なのかもしれません。
その【富山湾カップ】ですが、この後に【競輪祭】が控えていることもあって、S級S班が不在どころか、どの選手にも優勝のチャンスがあるような混戦となりました。
330バンクらしく、先行選手の仕掛けが早くなる傾向にある中で、野口選手、北井選手といった自力型の選手が、持ち前の先行力を発揮して決勝に進んできています。
その並びですが、全員が自力型となった南関東ラインの並びは、北井選手ー野口選手ー近藤選手。北日本ラインは4車で結束する形で、その並びは根本選手を先頭に、飯野選手-竹内選手-泉選手。九州ラインは準決勝と同じように伊藤選手-大塚選手となっています。
この並びを見た時に、ポイントとなるのはスタートの位置取りだと思いました。1番車は飯野選手ですが、2番車の近藤選手もスタートが速い選手です。もし、南関東ラインがスタートを取れるようだと、北井選手の突っ張り先行が濃厚となってきます。
その並びとなれば、北日本ラインは4番手で、九州ラインは8番手からのレースとなります。伊藤選手はその位置からでも前を抑えに行くしかありませんが、北井選手とのスピードの違いからしても、交わし切って先頭に立つのは難しいはずです。
伊藤選手が元の位置まで下げて、一本棒で流れてしまえば、ますます南関東ラインは有利となりますが、これもあくまでスタートが取れればの話。車番通りに北日本ラインが前を回り、その後ろが南関東ラインだと、混戦の度合いは深まっていきます。
それは南関東ラインの番手を任された、野口選手の横の動きの弱さにあります。
元Jリーガーだった北井選手と同じく、野口選手も陸上男子ハンマー投げで、日本選手権を制した一流のアスリートです。
共にその身体能力の高さを自力での走りで発揮しており、今大会でも両者ともに、早めの仕掛けから2周、時には2周半も踏みながら、逃げ切リ勝ちを決めています。
その一方で両者ともに、番手戦でのレースや、競り合いは得意としていません。
北日本ラインがスタートを取る流れとなった場合、後方の伊藤選手は飯野選手を抑えに行くのではなく、その位置から先行を狙っていく北井選手に蓋をするように、外を並走していくはずです。
もし、北井選手が無理やりこじ開けたとしても、伊藤選手が次に狙ってくるのが野口選手のポジション。ここを取れると、単騎先行となった北井選手の番手を回れるだけに、一気に優勝の可能性が出てきます。
ただ、南関東ラインと九州ラインの駆け引きを、黙って見ているわけにはいかないのが北日本ラインでしょう。
前を任された根本選手は先行よりも捲りを得意としていますが、4車というラインの長さを生かすべく、スタートが取れた場合には、あっと言わせるようなレースをしてくる可能性もあります。
その場合に俄然、有利となるのが番手の飯野選手であり、早めに自力に切り替えた場合には、そのまま押し切ってしまうのかもしれません。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。