2022/10/13 (木) 12:00 6
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は松山競輪「道後温泉杯争覇戦(GIII)」に出場する渡部哲男選手を解説する。
⚫︎渡部哲男
公式プロフィールでは181cm、86kg。四国を代表するマーク選手として、長年GI戦線で戦い続けている。20代の頃は自力中心だったが、時代の移り変わりと共に自然にマーク選手になっていった印象だ。
渡部選手は筆者の1学年歳下とほぼ同年代。それにもかかわらず、スピード、スタミナ、テクニック、全てにおいて総合力が高い。
特に“人間性”は突出している。他地区の同年代、さらには筆者にも常に敬意を持って接してくれる。いつでも礼儀正しいのだ。それぞれ関係性は違うだろうが、筆者にとって哲男(渡部選手)は、会話する度に「自分もこう在らねば」と思わせてくれる存在だ。
さて本題に戻ろう。180cmを超える恵まれた骨格と柔軟性を持つ哲男。骨盤と肩関節、そして肘関節が、約90度ほどまで折り曲がり、身体をパタンと折りたたんだような乗車フォームだ。見るだけで美しい。
大柄な選手は、パッと見レーサー(自転車)から身体が浮き上がったような、一体感に欠ける見た目になる事が多い。しかし哲男は実にフィットしている。筆者はガチガチのフォームだったので、現役時代は非常に参考にしたものだ(モノに出来なかったが…)。
しかしそんな哲男も、“腰痛”で苦しんだ代表的な選手である。GIレースの決勝戦にも乗り、あと1歩でタイトルホルダーという経験もしているなか、重度の腰痛に何度も苦しんだ。
当時20代中盤で腰痛に苦しんでいたのは、哲男と筆者のみだった。レースで会う度に「こういう治療がある」「あそこの病院が良い」「結局腰痛は“気合い”らしいよ」などと、情報交換をしたものだ。
そんな哲男は、何度も低迷期に打ち勝ち競走得点110点を超えてきた。筆者も44歳になり、加齢によるフィジカル能力の低下、視力、判断力の欠如、再度コンディションを上げる難しさを身をもって痛感しているだけに、この成績は素直にリスペクトしかない。
今回は、哲男にとって地元GIII戦。優勝が狙える位置まで来ている。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
渡部選手にも優勝のチャンスはあると断言したのは前述の通り。新鋭の犬伏湧也選手を先頭とする四国ラインが、総力戦で挑んでいけば優勝も近づくだろう。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。