2022/09/30 (金) 12:00 17
10月1〜4日に久留米競輪場で、熊本競輪GIII開設72周年記念「火の国杯争奪戦」が開催される。熊本の一番星・中川誠一郎(43歳・熊本=85期)は名古屋の共同通信社杯初日の落車で大ケガを負い、無念の欠場となってしまった…。つらいものがある。
いつでも、思い出す。2016年4月、2度にわたる大地震が熊本を襲い、競輪場も崩れ落ちた。現地から送られてきた写真を見ただけで、卒倒する思いだった。
「再開できるんやろうか」と思った。
基本的には「再開しかない」と信じつつ、情勢も情勢。一般生活も復旧しない中、「別に競輪なくてもよかろ」と廃止の声すら上がる状況だった。その翌月の5月静岡ダービー。中川が奇跡的な優勝を遂げたことで機運は「再開」となり、紆余曲折はあったが、2024年下期での再開が決定している。
「あの時、誠ちゃんがダービー勝ってなかったら」
熊本記念が久留米競輪場で代替開催される中、中川の奮闘に何度も目の奥がにじんだ。いつもは苦手なヨコの動きも、この開催だけは歯を食いしばって…。
その姿を見て、熊本の若手たちは育った。常に緩やかな中川だが、「オレたちがやらんば」と火を点ける背中があった。S班は松浦悠士(31歳・広島=98期)や郡司浩平(32歳・神奈川=99期)、守澤太志(37歳・秋田=96期)と揃い、深谷知広(32歳・静岡=96期)に小松崎大地(40歳・福島99期)など、強敵ばかり。
九州勢は苦戦を強いられそうだが、北津留翼(37歳・福岡=90期)を筆頭に迎え撃つ。中本匠栄(35歳・熊本=97期)が中軸を絞り、嘉永泰斗(24歳・熊本=113期)、瓜生崇智(27歳・熊本=109期)の昨年のワンツーコンビ。そして上田尭弥(24歳・熊本=113期)に松岡辰泰(26歳・熊本=117期)、松本秀之介(22歳・熊本=117期)も意地を見せる。
嘉永と瓜生は結果を求められる。嘉永は今年、不運な落車に何度も見舞われているが、だからこそ、踏ん張るシリーズになる。苦しい時を踏ん張ってこそ、中川の後継者になれる。まだ「熊本1番手」は中川のもの。超えるには、今回の走りが重要になってくる。
瓜生も「この大会にかける」という思いを爆発させ、ファンを巻き込んでこそ、になる。もう、追い込み選手としての戦いになっていくが「瓜生はやってくれる」の信頼度を高め、400バンクに改装される熊本競輪場では、最終4角を堂々と番手で回ってくる選手になってほしい。
最終日の6Rで行われる「ルーキーシリーズ2022プラス」には東矢圭吾(23歳・熊本121期)、松本秀之慎(20歳・熊本=121期)の熊本2人に大分の一丸尚伍(30歳・大分=121期)が出場する。
3人並ぶのか、どういう連係になるのか、はまだわからないが、3人で並んで九州の意志を示すことになるのか。それぞれが自力にこだわり、お互いに戦い、競うことで将来につなげるのか、3日目に集合し並びが決まる時を楽しみにしたい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。