2022/08/24 (水) 12:00 19
郡司浩平(31歳・神奈川=99期)が4回目の当大会制覇を目指すわけだが、直前の西武園競輪「オールスター競輪(GI)」の最終日に落車しており、気がかりだ…。帰り支度をするところを見かけると、脚を引きずっていて、欠場かなとすら思ったものだ。とはいえ、元々がケガに強いタイプなので、実戦になれば…と思う。
過去、膝の大ケガを負った後のルーキーチャンピオンレースで2着に入ったように、多少どこか痛くても、気力でカバーする。
清水裕友(27歳・山口=105期)は浮上のきっかけをなった小田原でまたもう一つの何かをつかみたい。2018年後半の大ブレークの始まりとなったのが、小田原記念での決勝進出。弾丸のような仕掛けが、“ヒロト”の原点だ。
8月24日現在、賞金ランキングは清水が7位で郡司が10位。今年はGIを脇本雄太(33歳・福井94期)が2回、古性優作(31歳・大阪=100期)が2回制覇という状況。賞金でのKEIRINグランプリ出場枠が増えているわけで、これは一体何を意味するのか…。
郡司も清水もこれからの記念が非常に大事になってくる。10月前橋競輪の「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」、11月小倉競輪の「競輪祭(GI)」を控え、賞金でいえば9月の名古屋競輪「共同通信社杯(GII)」も大きな意味を持つ。
賞金での出場枠が増えることは、9番目の戦いがより熾烈を極める。何かあった時に、滑り込んでいられる状況を作っておきたい。できれば競輪祭までに、貯金が欲しい。心理面でも切羽詰まって競輪祭を走るとなると、焦りを生む。11月競輪祭に向けて、誰もが有利な立場を取りにいくことになる。
残り2つの内、GIを勝つことは理想だが、それだけを言ってはいられない。
一戦たりともおろそかにできない中で、この小田原記念は激しさを増す。守澤太志(37歳・秋田=96期)はやや穏やかだろうか。前半にあまり出走できていない中でもランキング5位。当確とはまだいえないものの、今年の戦いの中でこの位置にいるということが、心理的に大きなアドバンテージになるだろう。自分自身の戦いに集中して、結果につなげてくる。
直前の23日に決勝を行った富山記念(瑞峰立山賞争奪戦)は松浦悠士(31歳・広島=98期)が制した。動いて位置を取り、攻めて、勝つ。お手本というには、困難なほどのハイレベル。歴史に残る勝ちっぷりだった。
富山記念は10年以上、動画取材を交えて取材させてもらってきた。今年は、今まで以上に感じるものがあった。関東ラインを中心にした物語が、切迫感を持って迫ってきた。競輪選手は自分自身を、また何かを信じ、戦っている。
現実が感動や興奮、虚勢や嘲笑に満ちたとしても、戦い抜いている真実は変わらない。
競輪が示してきた真実は変わらない。結束し、力を合わせ、また敵となるものは口から血を吐きながらでも噛みついてくる。嚙まれながらも、振りほどいて前へ前へと進んでいく。選手が示す真実は、輝くのみだ。
転がり続ける石は丸みを帯びるが、真実という舞台において相克される石は形を変えず、硬度のみを増す。そんな競輪選手たちの姿を、改めて目の当たりにしたシリーズだった。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。