アプリ限定 2022/08/29 (月) 12:00 51
“競輪とは”で、真っ先に出てくる言葉が“ライン”だ。ラインとは隊列を組んで並ぶこと。現在では所属する地域や、様々なつながりでラインを組んでいる。そのラインの強さが、勝敗に直結する。強さの一つに、「長さ」や「数」がある。
9車立ての場合。3人ずつでわかれる「3分戦」というものが主流になる。番組編成の基礎みたいなものだが、決まりはない。基本的には多い方が有利。ただし、多すぎて隙が生まれるということもある。
並びを決める要素はたくさんあって、各選手の考えや思いもそれぞれ違う。並びを決めるために、しっかり話すことが重要だ。時に、その過程の方が、実際のレースより面白いこともある。それは人間模様そのもの。
8月28日に最終日を行った小田原競輪の「開設73周年記念 北条早雲杯争奪戦(GIII)」の決勝には南関勢が6人が勝ち上がった。
郡司浩平(31歳・神奈川=99期)、松谷秀幸(39歳・神奈川=96期)、和田真久留(31歳・神奈川=99期)、佐藤龍二(34歳・神奈川=94期)の神奈川4人に、静岡の深谷知広(32歳・静岡=96期)、千葉の田中晴基(36歳・千葉=90期)だ。
他地区は清水裕友(27歳・山口=105期)が山口一人で、三重勢が浅井康太(38歳・三重=90期)と坂口晃輔(34歳・三重=95期)の構成。
準決12Rを走り終えた田中は「南関で別線というのが嫌」と口にした。当然、並び自体は南関6人で話してからだが、田中は「まとまりたい」が本音だった…。その上で「でも、それでは走りづらい、というのであれば、別線ということに」と待つことになる。
今回は深谷が「6車並ぶのは違うと思う」というような思いを語ったことが大きかったそうだ。郡司もその話を聞いて「先輩たちが5番手、6番手になってしまう」。それでは勝機があまりにも、ない。
「全員にチャンスがあるように」。
若干、神奈川4番手になった佐藤は遠い位置だが、それは同県の結束力。究極の話、清水の後ろに行ってもいいわけだが、それは個人個人の考え方になる。佐藤は、言うまでもなくライン重視の昭和スタイル。
タイトルの「競輪は何車まで並んでいいの? 」に戻ると、何車までという規則はない。「ライン」というそのものに規則がなく、それが人間模様を生んでいる。常識的に9車立てで9人で並ぶことはない。
高知競輪のミッドナイト競輪で5車立ての時に5人が並ぶというコメントを出したことがある。その時は「マジでどうすんの!? 」と思ったものだが、5番手の選手がレースを動かしたことで、全く何もないということはなかった。
小田原決勝の南関6人のケースにも、正解はないと思う。このコラムで書きたいのは、なぜこの並びになったのか、どうしてこういう並びじゃないのか、この並びの方がいいんじゃないか、などと考えるだけでも競輪を楽しめるということだ。
それが選手一人ひとりをより深く知ることになり、レースを見る時に感情を移入させて見ることにつながる。
そして、それが競輪への愛という形になっていく…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。