覚醒した印象の清水、仕上がりは抜群

　全日本選抜競輪(GI・川崎競輪)ですが、自分は第7回大会を優勝しています。今とは違って、当時は6日間開催で行われていたのですが、事前にオーバーワーク気味の調整を行ってから、決勝に向けて身体が軽くなるように大会へと臨んでいました。

　今回の決勝メンバーも、初日に特選を走っていたような選手たちが名を連ねています。予選から決勝へと進むためには、初日から結果を残せる状態で挑まなければいけないことを考えると、高い能力を持った選手たちは、初日から先を見越したレースができます。それでも準決勝に出走してきたS級S班の選手たちが、全て決勝に乗ってきたあたりは実力通りであり、その辺の勝負強さも含めて、さすがといったところです。

　決勝の並びですが、清水選手ー松浦選手の中国コンビの後ろに、福岡の園田選手。静岡に登録地を変更してから、初めてのGI決勝となった深谷選手の後ろには、郡司選手ー和田選手で南関東ラインを形成しました。2車となったのが、平原選手-諸橋選手の関東コンビ。守澤選手は単騎でのレースとなります。

　このメンバーで先行が見込めるのは、清水選手か深谷選手です。

　この2人を比較すると、深谷選手の方が清水選手よりも、ナショナルチームでトレーニングを重ねてきた効果も出ているのか、ダッシュがいい。しかも深谷選手は後ろに地元の郡司選手が付けているだけに、先行する意欲はかなり高いと思います。

　最近の深谷選手ですが、もがく距離が短ければ力を発揮できる一方で、その展開にならないと末脚が甘くなってしまう。この辺が調子の波にも表れている印象を受けます。

　3日間のレースを振り返った時に、仕上がっているなと思ったのが清水選手です。スタールビー賞で松浦選手との並びがどうなるかと見ていましたが、松浦選手が前を任せていたことからしても、今大会の出来がいいのでしょう。準決勝もすんなりと後ろを回ってきた松浦選手を抜かせませんでしたし、まさに覚醒したような印象を受けます。

南関東と中国の争いが激化すれば守澤の浮上も

　ただ、清水選手の調子が良くて、松浦選手と園田選手が後ろを回っているといっても、深谷選手を相手にしながら、捨て身に近い先行をすることは考えづらいと思います。

　仕掛け的には、スタールビー賞のように捲っていくことになりそうですが、それを見越したかのように、深谷選手の後ろにいる、郡司選手が番手捲りをしてきそうですし、郡司選手との絆も強い和田選手も内を開けることなく、ラインとしての仕事をしてくるはずです。

　怖いのは南関東ラインの後ろからレースを進めると思われる、単騎の守澤選手です。

　頭まで突き抜けるのは難しいかもしれませんが、2着、3着なら突っ込んでくる可能性はかなりありそうです。平原選手は絶好調ではありませんが、レースのうまさで切り抜いてきた印象があるだけに、決勝でもどの位置から動き出すのかにも注目です。

　今年初めてのGIとなりますが、ここを勝つことによって、グランプリに向けての調整も計画的に運ぶことができます。また、GIや記念競輪で、同地区の選手が決勝に乗ってきた際には、共にグランプリ出走を目指すようなレースもできる。その意味でも全日本選抜競輪を勝利した選手は、最もグランプリ制覇に近い選手とも言えそうです。

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