2022/07/03 (日) 12:00 7
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は小松島競輪場で開催されている阿波おどり杯争覇戦の決勝レース展望です。
【阿波おどり杯争覇戦】が開催されている小松島競輪場は、全国の競輪場で最も海に近いというよりも、海と隣接する場所に宿舎があります。個人的な感覚としては、部屋の窓から釣竿を垂らしたのならば、魚が釣れるのではと思ったほどです(笑)。
選手用の大浴場も宿舎の最上階にあるので、とにかく景色が良く、いいレースをした後には、ついつい長風呂になってしまいました。
ただ海に近いからこそ、バンクの中を駆け巡る強風に悩まされることもよくありました。バンクに出てみて、それほど風が強く無い時はホッとしましたが、今大会を見ていると、好タイムも出ているように、風の影響もほとんどないようです。
こうなると、傾斜が緩い「皿バンク」の特徴が出てくるのか、先行選手が圧倒的に有利となり、逆に捲りが利きづらくなります。今大会でこの特徴を生かした走り方をしていたのが、地元徳島の選手たちでした。
決勝に進んだ太田選手も、いつもよりも早い仕掛けで準決勝を勝ち上がってきました。決勝にはその太田選手も含めて、地元選手が4人も進んできたのは、やはり、このバンクの仕掛けどころを熟知してと言えそうです。
しかも、準決勝では松浦選手も勝ち上がってきたことで、5人という一大勢力となった中四国ライン。並びがどうなるか注目していましたが、話し合いの結果、3対2の別線となりました。
3名のラインとなったのが、太田選手-阿竹選手-小倉選手。2名のラインは松浦選手の後ろに、準決勝でも連係をした室井選手が付けました。京都-岐阜で並んだのが、高久保選手-志智選手で、眞杉選手と山田選手は単騎となります。
細切れ戦かつ、2車の高久保選手の先行も考えづらいですし、松浦選手も室井選手が付けてくれたとは言えども、普段から連係をしている太田選手と叩き合うことはしないでしょう。
小倉選手が1番車に入っただけに、前受けは太田選手が取れそうです。その太田選手を後方にいる高久保選手が抑えにかかった時に、動き出してくるのが松浦選手です。
先ほどの理由からしても、松浦選手の先行は無さそうです。むしろ、一度先行体制に入るかと思わせてから、高久保選手の前でイン切りをしてくるはず。その時に太田選手が一気に踏み出していくのではないかと見ています。
松浦選手にとっても、太田選手が先行してくれたのならば4番手を取れます。動きが気になる単騎の2人(眞杉選手、山田選手)は、室井選手の後ろ辺りから、切れ目切れ目を狙っていくはずです。
今大会の太田選手は調子も良さそうですが、この加速に乗る形で、優勝のチャンスが巡ってきそうなのが阿竹選手です。今日の準決勝でも、先行した上野選手の番手で仕事をすると早めに発進。結果は山田選手に差されていますが、このメンバー構成ならば、番手捲りが決まる可能性は更に高くなるはずです。
徳島ラインの3番手を回る小倉選手ですが、ポジション的にも内側をしっかりと締めることになりますが、早めに阿竹選手が番手捲りをしていくようだと勝機が見えてきます。
むしろ、4番手を回ってくる松浦選手や、単騎では眞杉選手に魅力を感じます。松浦選手はさすがSS班といえるような立ち回りの上手さを見せていますし、徳島の3人とは別線となったことで、より、勝つことに集中したレースができそうです。
眞杉選手は単騎だけに道中の位置取りが難しくなりそうですが、もし、果敢に前に行ってイン切りをしてくるようならば、徳島の3人や松浦選手-室井選手の仕掛けも変わってきます。決勝までに眞杉選手がどんな作戦を練ってくるかもポイントとなりそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。