2022/07/10 (日) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は福井競輪場で開催されている不死鳥杯の決勝レース展望です。
【不死鳥杯】は3日目に行われるはずだった、準決勝の3レースが全て悪天候で中止。抽選で決勝に進む9名が決まりました。
選手時代、そして解説の仕事を始めてからも、自分が関わった大会の準決勝3レースが、全て中止になった経験は無かったと思います。しかも記念競輪となれば、初めてではないのでしょうか。
抽選の結果、大本命だった脇本選手、そしてSS班の松浦選手が決勝に進めなかったのは非常に残念です。それでも実力も運のうちとも言いますし、車券的にどの選手からも狙えそうな面白い決勝となりました。
並びは北日本ラインが坂本選手-菅田選手-佐々木選手。南関東ラインが松井選手-鈴木選手、近畿ラインが古性選手-南選手となり、森田選手と松岡選手は単騎となっています。
2車と言えども唯一のSS班で、今年に入ってからG1を2勝。しかも後ろを回るのは、連携実績のある南選手とくれば、古性選手が人気を集めるのは仕方ないメンバー構成だと思います。
ただ、この決勝はどこからでも狙えるレースになったと思いますし、その中でも本命の印をつけたいのは、単騎の松岡選手です。
ポイントとなるのは先行争いです。北日本ラインの先頭を任せられた坂本選手が、後ろの2人と共にレースの主導権を握るのか。もしくはナショナルチームで鍛えられたスピードで、松井選手が果敢に仕掛けてくるのかですが、並びや展開からすると、松井選手が先行をしてくると見ています。
今大会の松井選手は調子も良く、それは二次予選で記録した10秒6というバンクレコードタイにも表れています。その松井選手-鈴木選手の後ろを回っていきそうなのが、松岡選手ではないかと見ています。
車番的にも、そして近畿のファンの前で、横綱相撲のレースを見せる古性選手が前受けとなるでしょう。
その後ろが単騎の森田選手で、4番手が南関東ラインと松岡選手。7番手となった坂本選手ですが、北日本ラインの2人と共に古性選手を抑えにかかると思います。
その時に一気に仕掛けていきそうなのが松井選手です。坂本選手が古性選手を抑えに行かず、松井選手の横で蓋をする作戦も考えられますが、一度、車を下げたとしても、そこから捲っていく松井選手の方が、坂本選手よりスピードは上です。
しかも福井競輪場は高速バンクであり、松井選手のようなスピードスターには、またとない舞台となります。
こうなると松井選手の番手に付けた、鈴木選手に願っても無い展開ともなりますが、それならば、道中は松井選手のスピードをもらう形で追走していける、松岡選手の捲りが決まるのではないかと見ています。
怖いのはやはり古性選手です。先行した南関東ラインと松岡選手の後ろを回ってくると思いますが、その時、横の動きの上手さで、松岡選手の位置を奪っているようだと優勝も見えてきます。
また、坂本選手が松井選手を封じ込めながらスローで先行し、半周ぐらいかかりきるようだと、番手を回る菅田選手には願っても無いチャンスともなります。
いずれにせよ、様々な展開だけでなく、高配当も期待できるだけに、買い目を増やしておいた方が良さそうな決勝となりました。その分、松浦選手が出場する10レースの特秀、そして脇本選手の出場する11レースの特秀は、共に堅そうな決着が予想されるだけに、ここで資金稼ぎをしておきたいところです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。