2022/06/28 (火) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は久留米競輪場で開催されている中野カップレースの決勝レース展望です。
自分が競輪選手を志したきっかけは、中野浩一選手への憧れでした。
中野選手は1980年には日本のプロスポーツ選手としては初めて、獲得賞金で1億円を突破。それを決めた松戸競輪場での「開設30周年記念」決勝レースは今でも覚えています。
当時、中学生だった自分は、千葉県内で自転車部のある高校への進学を志すと、いつか中野選手とGIで戦うのを目標に練習を重ねてきました。
競輪選手としてその夢は叶えられましたが、中野選手のホームバンクである、久留米競輪場で行われた全日本選抜競輪の優勝は嬉しかったですし、その開催ではバンクレコードも樹立できました。
中野選手の名前が刻まれた【中野カップレース】は、記念大会の中でも勝ちたかったレースであり、評論家となった今でも予想を当てたいレースです。
九州の4人が乗った決勝の並びは、阿部選手-伊藤(颯)選手-北津留選手-伊藤(旭)選手でまとまりました。福島ラインは渡邉選手-成田選手。中部ラインは竹内選手-岡本選手で並び、決勝では唯一のSS班となった郡司選手は単騎となりました。
自力型が4人揃った、九州ラインの先行は間違いないと思います。むしろ、他のラインに分断されるのを避けるべく、抑えて駆けるというよりも、突っ張り先行も考えられます。
車番的にも北津留選手が1番車なので、前受けをするのも九州ラインとなりそうです。そうなると、2番車の郡司選手が5番手で、その後ろが福島ライン。中部ラインは8番手、9番手で流れていきそうです。
残り2週で後方にいる中部ラインは、九州ラインを抑えに行きますが、他の3人から前を任された阿部選手は、竹内選手を相手に突っ張っていくはずです。そのまま九州ラインがレースの主導権を握ると、伊藤(颯)選手の番手捲りに付いていった北津留選手が、ゴール前で美味しいところを持って行きそうです。
軽いバンクの特徴を生かして、生きのいい先行選手の活躍が目立った今大会ですが、3日間を通して上がり10秒台の時計を、全て捲りで叩き出していたのが北津留選手でした。先行体制に入った時に他のラインに内を掬われなければ、優勝に最も近いポジションにいると言えるでしょう。
ただ、そうは問屋が卸さない、と思っているのが郡司選手です。今大会の出来は抜群ですし、準決勝でも後方から捲っていった伊藤(楓)の番手を取り切った走りは上手さも感じさせました。
その郡司選手と同じように調子の良さが目立つのが渡邉選手と成田選手です。郡司選手とは東日本でラインを組む機会もある福島の両者ですが、この決勝では郡司選手の後ろを回り、動き出すタイミングも郡司選手の仕掛けに合わせてくるはずです。
しかも、伊藤(颯)選手が早めに番手捲りをすれば、郡司選手は4番手を回れます。道中で脚を使わずにこの位置に付けられたとするのなら、自力型が揃った九州ラインを相手に回しても捲りが決まるはずです。この展開になった時、郡司選手の後ろを走っている渡邉選手にもチャンスが出てきます。
阿部選手と岡本選手とのもがき合いが長引き、一瞬の緩みも出てくるようだと、郡司選手ならその間隙を縫っていけるはずです。残り1週ぐらいから捲っていけるようだと、郡司選手+福島ラインでの上位独占も考えられるでしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。