2022/06/07 (火) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は取手競輪場で開催されている水戸黄門賞の決勝レース展望です。
取手競輪場のバンクは直線も長すぎず、短すぎずで、コーナーの傾斜もあるので捲りも出ます。先行選手や追込選手が有利といった偏りもありませんし、非常に公平だからこそ、実力がある選手が結果を残せるバンクです。
雨が降りしきる中での開催となった3日目は、バンクコンディションの悪化から波乱となったレースもありました。ただ、決勝が開催される4日目は天気も持ちそうであり、どの選手も力を出し切れるレースが期待できそうです。
決勝メンバーを見ると、地元の杉森選手と三谷選手が3連勝と、調子の良さが目立っています。また、今大会は宿口選手が復調してきた印象を受けました。
初日の特選こそ9着に敗れていますが、二次予選を勝利。準決勝では前がもがき合っていたところを捲ってくると、後ろの杉森選手に交わされはしたものの2着に残っています。
宿口選手は昨年の高松宮記念杯を優勝し、今年はSS班として臨んでいますが、思ったような成績が残せていません。
自力型の選手ながら先行は難しくなっており、高松宮記念杯のように、先行選手の後ろにつけての捲りが決まり手となっています。ただ、横の競りが弱いので、レースによっては強い先行選手に番手を奪われることもありました。
この準決勝のように脚が溜まっている時の走りは見事ですし、決勝でもどんなレースをするのかと注目していましたが、茨城の3人(吉田選手-吉澤選手-杉森選手)とは別線で、単騎のレースとなりました。
それでも宿口選手にとっては、この決勝に関しては、単騎の方がレースがしやすくなった感もあります。
他の決勝の並びですが、近畿ラインでまとまったのが元砂選手-三谷選手-南選手。そして中四国ラインの石原選手-松浦選手となりましたが、宿口選手は2車となった中四国ラインの後ろに付けると見ています。
こうなると誰が先行するのかにも注目が集まりますが、地元開催ということで茨城の3人はこの中から優勝者を出したいと考えているはずです。
しかも、先行した吉田選手は準決勝では2コーナーで一度後ろを見てから捲っていきましたし、この決勝では自分も勝ちたいと思っているからこそ、先行は無いとみています。
そうなると石原選手と元砂選手との先行争いになりそうです。3車かつ、三谷選手に任せられた元砂選手の方が先行意欲があるように見受けられますが、実力的には石原選手の方が上であり、しかも松浦選手が後ろに付けているからこそ、もがき合いになったとしても、レースの主導権は石原選手が奪うと思います。
こうなると、松浦選手の後ろにつけている、宿口選手にもチャンスが出てきます。松浦選手の番手捲りに付いて行けたのならば、直線で高松宮記念杯のような脚を見せてくれるのかもしれません。
完全優勝を狙う三谷選手ですが、それも元砂選手次第となりそうです。順当ならば、この決勝は吉田選手の捲りが決まると見ていますが、いずれにしても先行争いが一つの鍵となりそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。