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不屈の男・金子貴志の奮闘記 〜40代の挑戦〜

【金子貴志の方法論】偶然できる最高傑作などない! 理想の実現のためには“こだわり”こそが鍵になる

2022/05/26 (木) 18:00 6

 netkeirinをご覧の皆さん、金子貴志です。ダービーが終わった直後から新しい自転車に乗ってトレーニングに励んでいます。今回は自転車のセッティングやフレームサイズ、角度、選び方と植物の共通点について書いていきたいと思います。

職人技で作られるオーダーフレーム(写真:本人提供)

自転車を作ることと植物を育てることは似ている

 私は今、上のステージで戦うために自分ができることに取り組んでいます。今乗っている自転車は、前回作ったものにさらに改良を加えて作りました。

 オーダーする時には『自分の求めている自転車のイメージ』を正確に職人さんへ伝える必要があります。私はフレームの角度やサイズなども細かく考えて伝えています。そして出来上がったフレームをセッティングで微調整し、自分の体とマッチさせていきます。

 私の自転車は「プレスト」というメーカーの自転車です。このプレストというメーカーは私が初めてグレードレースで勝った時から使っているものです。2004年のふるさとダービー佐世保(GII)はそれまで乗っていた自転車をプレストに変えて臨んだ結果、いきなり優勝することができました。

 その時の「誰かに押してもらっているような感覚」は今でも忘れられません。それから20年近く「この人しかいない」と信頼してフレームを作ってもらっています。ビルダーの本城さん、いつも親身に相談に乗ってもらい、最高の自転車を届けていただきありがとうございます!

オーダーはパイプ選びからはじまり、そこから作り出されていく(写真:本人提供)

パーツに刻まれた選手名(写真:本人提供)

 植物を育てていると本当に“工程”が似ているように感じる時があります。植物も大きくて迫力があるものもあれば、小さくても形が良く存在感があるものもあります。植物と鉢をマッチさせることによって、より一層に植物の魅力は引き立ちます。それに加えて、水のやり方、光の当て方、土の作り方によって全く同じものでも形や表情が変わってくるんです。どういうイメージの植物にしたいかで育て方も変わるんですよね。

迫力のある存在感を持つグラキリス(写真:金子貴志instagramより)

表情豊かなアガベ(写真:金子貴志instagramより)

試行錯誤の過程がおもしろい

 また、植物が夏と冬で育て方が異なるように、自転車のセッティングも体調や季節、その日の気温や湿度によって細かく合わせている人もいます。その逆に、一切そういったことを気にしない選手もいます。この辺りは選手の個性によってさまざまです。

 自転車と体をうまくマッチさせるには大きく分けて2種類あります。一つは「体を自転車に合わせるか」もう一つは「自転車を体に合わせるか」です。私は体を自転車に合わせる方ですが、思ったようになるまでは試行錯誤を繰り返しながら、納得いくまでセッティングをしていきます。

体と自転車をマッチさせるために時間と神経を注ぎ込む(撮影:島尻譲)

 最後は自分の感覚頼りになりますが、その試行錯誤していく過程が面白いと思っています。セッティングは奥が深く、練習の感触は良くても、レースでは結果が出ないこともあります。成績に直結する部分ですから、追及していくほかありません。レースが終わる度にセッティングを確認する選手もいますが、私はよほどのことがない限り、一度決めたセッティングで走るようにしています。

 今の競輪はスピード全盛の時代とも言える“速度重視”のレースが多くなっています。そういった流れに対応できるフレームを作り出し、もっとスピードに対応できる仕様にしていきたいです。「どうしたらロスなく力を自転車に伝えることができるか」「どうしたら推進力を生み出せるか」といった課題に向き合い、今は取り組んでいます。

時代の流れにも対応できるように自転車を作っている(撮影:島尻譲)

理想から逆算して創り上げていく

 植物の育て方も多様なアプローチがあります。自転車と同じで「いかに自分の理想に近いものを育てられるか」という部分を私は大切にしています。私は特に光の当て方や水やりのタイミングにこだわりを持って育てています。

 植物も自転車もまずは集中できるような環境作りから始めて、理想を追い求めていかなくてはいけません。「何も考えず偶然にできるものではなく、自分の理想から逆算して、しっかりこだわって必然的に創り上げていく」ということですね。

完璧な環境を求め、専用ラックもフルオーダー(写真:金子貴志instagramより)

 植物なら『世界から称賛されるようなハリウッドスター』のように “カッコイイ”と思われるまでの植物を作っていきたいですし、選手としては“時代に負けない昭和生まれ”の良いところを活かしながら戦っていきたいと考えています。

 生命力の強いマダガスカル島の植物たちのように、しぶとく我慢強く結果を求めて走り続けていきたいと思います。

妥協なくストイックに育てられているアガベ(写真:金子貴志instagramより)

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金子貴志

Kaneko Takashi

愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。

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