2024/11/08 (金) 12:00
10月16から20日まで、デンマークのバレラップで開催された「UCIトラック世界選手権」は日本勢のメダルラッシュで沸いた。パリ五輪からわずか2カ月。パリの悔しさをデンマークで晴らした感じだ。
まずは男子ケイリン。世界選手権で37年ぶりに山崎賢人が金メダルを獲得した。37年前は競輪選手としても活躍した本田晴美さん以来の快挙だ。山崎はパリ五輪の代表から漏れ、リザーブに回った苦い経験を持つ。独特のアフロは現地でも大注目だったらしい。外見が先行で注目された訳だが、実力もあることを証明して見せた。リザーブだったが代表団に帯同はせず、五輪後の世界選手権を見据えて日本で研鑽(けんさん)を積んでいた。
女子は佐藤水菜がケイリンで金、スプリントで銅と史上初の偉業を成し遂げた。佐藤はパリ五輪でメダルの有力候補だったが、決勝に勝ち上がれず涙にくれた。デンマークでパリの借りを返したといった感じだろう。決勝には梅川風子も勝ち上がり、こちらは5着。佐藤の快挙に目が行きがちだが、梅川も大健闘だろう。
パリ五輪では判定に泣いた太田海也は、まずチームスプリント(長迫吉拓、太田、小原佑太)で銅。これまた日本初というおまけがついた。個人種目ではスプリントで銅。これが神山雄一郎(銀)、松井英幸(銅)以来、35年ぶりとなるメダルだった。この他、窪木一茂がスクラッチで、これまた史上初の金。過去2年は銀だった。3度目の正直ではないだろうが、シルバーコレクターの名を返上してみせた。
金3、銅3の6個のメダルを獲得し、日本の強さと進化を見せつけた大会でもあった。五輪直後の世界選手権は、スーパースターが出場しないケースもあるが、今回は、男子の絶対王者であるハリー・ラブレイセン(オランダ)も出場。もちろんのこと、五輪後のモチベーション低下が懸念されたが、ラブレイセンが参加となれば、大会は盛り上がった。その中で山崎のケイリンVや太田のスプリント3位はものすごいことであろう。太田はラブレイセンとセミファイナルで対戦し敗れている。3位決定戦の相手は昨年大会銀メダルのニコラス・ポール(トリニダード・トバゴ)だから、一線級との対戦が続いたわけだ。
山崎は世界選手権で金メダルを獲得したが、年末に行われる「KEIRINグランプリ2024」の出場権は得られなかった。五輪イヤーでなければ出場できたのだが、これも巡り合わせなのだろう。佐藤はこの後、「競輪祭女子王座戦G1」でガールズグランプリ2024の出場権をかける。
残念なのが、やはりメディアの扱いが小さいことだろう。史上初の快挙があったのにもかかわらず、筆者の知る限り、大々的に報じていたメディアは少なかったように思えた。例え競輪を知らなくても、自転車競技での快挙をもっとアピールできれば、それが競輪ファン増加へと繋がるはずだ。
Text/Norikazu Iwai
Photo/P-NAVI編集部
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター