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【オートレース入門コラム】森泉宏一のオート語らんまいけVol.1『湿走路の考え方』

2025/08/06 (水) 10:00

先日自宅にて、大食い選手権のテレビ番組を観ていました。
トップ集団に離されている選手を見て、
「この人、もう厳しいんじゃないの?」
と、大食い番組好きの妻に聞くと、
妻「この人は追い上げてくるから、前半はこれでも大丈夫」
筆者「前半の展開が悪くても追い上げてくる後半型か。角南(一如選手)支部長みたいなものか」

少し前に川口オートの場内イベントに出演されていた、某双子の姉妹選手たち。
こちらも序盤の順位が後ろながら、後半で上げてくる姿を見て、
筆者「双子揃って後半巻き返してくるレーススタイル、中山兄弟か!」
前半は飛ばすものの、後半は急に失速する選手を見て、
筆者「あのリードで予選落ち!? 垂れすぎでしょ! ◯◯か!」(◯◯部分は自粛。読者の皆さん、想像の羽を広げるのだ)
と、番組を観ながらの例えツッコミに余念がなかった筆者。途中から妻の反応が無くなったのは言うまでもありませんが(苦笑)。

さて、オートレース界も8月に入りました。
暑い日が続いていますが、選手もファンも、梅雨シーズンから対応に追われることが多くなるのが「雨」対策でしょう。

私がオートレースの仕事を始めた頃。
まだオートレースの多くのことを知らない筆者に対し、さまざまなことを教えていただきましたが、「イロハ」の「イ」として最初に言われたことが下記のことでした。
・夏の熱走路は追い選手が厳しい展開になることが多い
・2級車について
・雨走路は固い決着になる

一番最後に記した「雨は固い決着になる」
これについては、雨が降ると、走路が濡れて、選手の得意、不得意が出やすく、勝率などのデータにも表れやすく、それゆえ予想がしやすい。イコール固い決着になりやすい。
そう教えられて仕事をしていました。
仕事を始めた最初の頃は、確かにその傾向が高かったと思います。
しかしここ数年、雨のレースを見ていると以前よりも荒れることが格段に増えました。少し前の話になりますが、6月の伊勢崎で開催されたG2稲妻賞でも、4日目に業界屈指の雨巧者で、当然断然の1番人気に推された加賀谷建明選手が3着に敗れ、3連単6万円超えの大波乱が出ていました。

「今日は雨だからいい配当は期待できないね」
なんて会話は、もう成立しない今日この頃。
最初に述べた「雨は固い」が通用せず、予想が難しくなってきているのは皆さんも感じておられると思います。

では、なぜ難しくなったのか?

よく聞くのは、以前は雨が降ったらお手上げの選手が、雨を克服している場面が増えたこと。
雨の連対率が極端に低い選手でも、走路状況や前逃げであれば、展開的にチャンスはあり(走路が雨により一本道のような状態になり、雨が得意な選手でも後ろから追いきれなかったり)、これまた高配当に頭を悩ませます。
しかし、難しいとはいってもレースはやってくる。私たちは難しい雨予想に立ち向かうしかないのです。
ですが、難しいということはいい配当を掴めるチャンスでもあります。周りより一足先に攻略して勝ち組に回れば、問題ないのです(偉そうに(笑))。

さて、そんな難しくなってきた雨走路に立ち向かうポイントですが、以下の点を挙げてみました。

・その選手の雨に対するイメージを一旦消すこと
→展開と走路の特徴(一本道なのかなど)で、雨の実績を一旦置いておき、残れる可能性を考える。

以前は雨が降ることで、実績のない選手や雨のイメージがない選手を「消去法」の形をとり、残った数選手で考えていました。今はそれが通用しなくなり難しくなっているのかなと考えます。
「『実績ではなく展開で考えれば』可能性はある」という考え方も、1つではないでしょうか。

また、オートレースには試走タイムがあります。
もちろん重要な予想ファクターの1つではありますが、見た目・気配はチェックするものの、雨の場合、タイム自体はそこまで重要視する必要がない場面もあります(1人だけ飛び抜けたタイムを出していれば別ですが)。

雨はタイム以外にも、次のポイントをチェックします。
・どのコースを走り、そこが利いているのか
・道中の気配、レース足
・スタート力(行ったままの一本道ならば、なおさら重要)
・実績重視なら、試走タイム劣勢でオッズ妙味があれば見逃さず
・雨の降り方(土砂降りは外回り、小雨は内回りなど)

いくつかピックアップしてみていきます。
まず、「どのコースを走り、そこが利いているのか」
「雨が降っている」といっても、ひとくくりにはできません。また、レース場によってのクセもあります。今は走路改修に入りましたが、浜松走路の一本道などは皆さんご存知かと思います。
一本道の場合は、雨を乗りこなす選手でも前を追えないまま終わったり、得意でない選手でもスタートからの展開次第では残ることもしばしば。ハンデが前の選手が逃げて、後ろにいる雨巧者が届いてこない場面もよくありますので、雨が得意ではない逃げ選手の残り目を狙うのが高配当への一歩かもしれません。
この逃げ選手をどこまで狙うかが、面白さの1つだと思います。
「雨実績がないけど、一応3着までにしておこうか」
「後ろからくる選手が1人だけで、8-1のパターンもあるので2着」
「え、このメンバーで後ろ届かないの!?パターンで、逃げ選手の頭狙い」
この狙い方は、ある意味、度胸も試されているような気がしますが(笑)。

次に、「雨の降り方(土砂降りは外回り、小雨は内回りなど)」について。
雨の降り方、すなわち雨の強さですね。降り方によって、どのコースが利くのかが変わります。
・土砂降りなら外
・水気が引いているなら内、あるいは逃げ展開の選手
というところが基本でしょうか。

雨の降り方では、
「雨は好きだけど土砂降りだと苦手」という選手も存在します。
また、雨が降り続いているときに、前のレースと降り方が変わりそうという場合もあります。
少し時間がかかりますが、あらかじめ雨の振り方で予想のパターンをいくつか考えておいて、その時の状況ですぐ出せるようにするのも手かもしれません。

筆者は土砂降りのレースが大好物でして、すごく雨が得意というわけではない選手でも、外のコースからいく選手。あるいは、ほぼ全員が内を走る選手が集まった時に、勝率度外視で外を回る選手を狙って、1着ではなくても2着、3着で高配当ゲットということもありました。

ですが、最も困るのは、試走後の突然の雨。とくに、今の季節には多いパターンです。
試走のときは良走路で、選手が良走路仕様に競走車をセッティングしている場合は、さらに難解です。さまざまな雨がありますが、この「突然の雨」のときに最も高配当が出ている印象があります。
これについては、攻略法を記すことはできませんが、筆者がよくやるのは、普段の3連単予想を一旦中断し、2連単予想などに戦略を変えるくらいでしょうか。

ということで、今回は雨走路における考え方について記してみました。
先述したように、「雨が難しくなったということは、いい配当を掴めるチャンス」。今までの雨のイメージにとらわれない発想で、予想を組み立てていくことが必要と感じています。

今回から今までの連載コラム『実況天国』から、オートレース入門コラム『オート語らんまいけ』として、予想をする上で筆者が考えていることなどを記していこうと考えています。
「筆者が考えていること」と書くと何だか偉そうな感じがしますが…。
配信番組などで他競技ファンの方、あるいはオートレース初心者の方にもたくさんご覧いただきました。そんな皆様からのコメント、やはり「予想の仕方」に関するものが圧倒的に多かったのです。
例えば今回のように「湿走路について」。
他にも「スタート」「熱走路」「ランク」「データの活用法」など、質問は多岐にわたりました。
これらを文字にして残してみたいと思い、今回のテーマに至りました。

今後もオートレースのさまざまなテーマを深堀りしていきたいと考えております。 季節柄、次回は「熱走路」について取り上げる予定です。

※掲載写真はイメージです。

(P-NAVI編集部より)
今回から「森泉宏一のオート語らんまいけ」にコラムタイトルが変更となりましたが、以前のコラム「実況天国」も引き続きご覧いただけます。
新コラム「森泉宏一のオート語らんまいけ」をよろしくお願いします。

オート語らんまいけ

森泉宏一

生まれは東京、育ちは広島、富山。学生時代に喋りの仕事を志し、2009年にボートレース実況でアナウンサーデビュー。2017年からはオートレース実況も始める。現在はYouTube配信番組などにも多く出演。パーフェクタナビでは「森泉宏一の実況天国」コラム連載中。プライベートでは2022年に年間100本の万車券的中を達成。試走タイムが出ない選手や逃げが得意の選手を好む傾向にある。公営競技を含めた日々の仕事の様子などを投稿している「森泉宏一のモーリーチャンネル」も更新中。

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