2023/05/19 (金) 15:57
競輪日本一を決める今年の「日本選手権競輪(ダービー)」は、岐阜の山口拳矢が初のG1決勝進出で見事、優勝を飾った。デビュー当時から、その潜在能力は高く評価されていたが、わずか3年足らずで、日本一になるとは、筆者も思っていなかった。それも絶対王者と言われる脇本雄太を破っての優勝だけに価値がある。
決勝のメンバーは、脇本に古性優作。新山響平に佐藤慎太郎、和田圭。犬伏湧也に清水裕友、香川雄介。そして山口が単騎となった。もちろん、人気は脇本。初日の特別選抜予選こそ8着に沈み、期待を裏切ったが、二次予選、準決勝の走りは圧巻だった。危惧された腰痛の不安もないように思えた。
また、犬伏は準決勝で脇本を相手に何もできず、3着で決勝進出の権利を取るのがやっと。それならば、決勝はライン3車ということもあり、真っ向から逃げるだろうと予測はできた。レースは、ここに山口が乗り、さらに東北勢が続く。そして脇本は、やはり8番手に置かれてしまった。犬伏を使った清水が、渾身の番手捲りを放つが、山口が最終2センターから踏み込み、初タイトルを手にした。
ネット中継を見ていたが、決勝は大雨の中で行われていた。悪条件の中、いくら脇本でも8番手からでは届かないだろう。犬伏は準決勝の不甲斐なさを、ここで晴らした。筆者が買っていた新山は、山口の位置にいたら2個目のG1タイトルを獲っていただろう。最も悔しかったのは、清水で間違いない。
優勝選手インタビューでは、父・幸二氏が「迷惑をかけた人たちに感謝しなさい」と話しかけた。これは、競輪学校を遅れて卒業した時のことを言っているのだと感じた。山口には、これからいくつものタイトルを獲れるポテンシャルがある。父を超える日も近いだろう。
売り上げは6日間で142億6,391万600円。前年比94.2%。目標は155億円だっただけに、関係者は落胆しているだろう。以前のコラムで、年間の売り上げが1兆円を超えても喜んではいけないと書いたが、優良競輪場である平塚で、この売り上げは信じられないものだ。約13億も目標を下回るなど、平塚開催では記憶にない。
「ゴールデンウイークで家族が出掛けたから」は聞き飽きた。危機感をさらに持たなくてはいけないと思っている。もし、ミッドナイトで補てんすれば良いと考えている関係者がいるとすれば、業界はお先真っ暗だろう。
なぜ、これだけ売れなかったのかを真剣に検証する必要がある。確かに、本場は多くの人で賑わっていたと聞いた。それでも売り上げが伸びなかったのは、なぜなのか?
このままでは、今年は1兆円どころか、地方競馬の売り上げにも負けてしまうかも知れない。G1の中で最も権威のあるダービーでの結果を受けて、これからの開催にも早急に善後策を講じなければならないだろう。
Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta navi編集部
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岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター