2021/06/11 (金) 18:06
2年目となる「ルーキーシリーズ」が6月6日の和歌山で終了した。昨年から始まったこのルーキーシリーズ。今年は昨年よりも一戦多くなり、全4戦で開催された。オールドファンなら「新人リーグ」を思い出してもらいたい。ただし、当時の新人リーグは成績によってランク付けされていたが、ルーキーシリーズに格付けはない。これをデビューと言っていいのか悩むところではあるが、プロとしてということなら、デビューになるのだろう。
いくつかの競輪場で行われたシリーズをネットで観戦した。車券は当初、買うつもりはなかった。なぜなら技術も含め、本当の意味でプロとして見られない部分もあったからだ。日本競輪選手養成所を卒業して1、2カ月。以前ならデビューまで4カ月の訓練期間があり、その間に師匠や仲間から厳しい指導を受けていた。果たして、どれだけ成長できているのか? そう思いながら見ていたが、やはり見ているだけではつまらない。手を出してしまった。
ルーキーシリーズの初戦を制した犬伏湧也(左)と内野艶和(右)。写真提供:公益財団法人JKA
初戦の静岡は、男子が犬伏湧也(徳島)、女子は内野艶和(福岡)が優勝した。犬伏に関して言えば、在所1位というから潜在能力は高いのだろう。高校時代までは野球部に所属。甲子園出場はならなかったが、徳島の実力を考えれば致し方ないと考える。結論を言うと犬伏は名古屋、和歌山も優勝。同期の中では圧倒的な存在感を示した。ただ、勝った内容に関しては、同期だけとの争いならば、逃げて結果を残して欲しかったのが筆者の本音だ。見た感じではあるが、トップスピードに持っていくまでは時間がかかるものの、そこからは抜群の推進力を見せていた。身長こそ高くないが、胸筋の盛り上がりなどを見れば、今後に期待できる。もう1人、注目していたのがリオデジャネイロ五輪オムニアムに出場した窪木一茂(福島)。能力の高さは認めるが、やはりまだ競輪の身体になっていない。今後は、いかに競輪の身体を作ってくるかだろう。
女子は正直、これだという選手は見当たらなかった。4戦全てで自分をアピールするような選手はいなかった。奥井迪や加瀬加奈子、高木真備が先行にこだわる。石井寛子は巧さを生かす。児玉碧衣のパワフルさ等々。今までは誰かしら目立った選手がいたのだが、残念ながら今期生には、まだ見つけられなかった。強いて挙げるなら、和歌山で優勝した山口真未(静岡)だろう。決勝の舞台で大逃げを打てる度胸には好感が持てたし、期待したい。
今年のルーキーシリーズを振り返ったが、正直なところ、まだ意味合いが分からないでいる。養成所時代に戦った人間との戦いである。冒頭にも書いたが、卒業後ある程度の時間が経てば同期対決もありだろうが、短い期間ではどうしても養成所時代の成績通りになってしまう。もちろん、全てがそう決まるわけではないけれども、もし経験を積ませるためだけなら、開催しなくても良いのではないか?とも考える。さらに、このルーキーシリーズの成績は、生涯成績に残るのだろうか? 仮に残るのだとしたら、見当違いとも言えるだろう。プロになった以上、プロの先輩達と戦うべきである。どうしても開催したいなら、1期上の選手との対戦ならどうだろうか? 他の競技でも教育リーグと名のついたものもあるし、新人戦も1年生だけとは限らないものもある。そして7月からの斡旋を何と呼べばいいのか? 本デビューや、本格デビューという言葉が見られるが、選手達も後年、デビューがどちらなのか迷うかもしれない。
そもそも公営競技である以上、ファンの前で恥ずかしくない競走ができるまで我慢した方が良いとも考える。車券の対象にならない新人戦であったとしても、歓迎する。
(※トップ画像はイメージです。本文とは関係ありません)
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター