2018/09/30 (日) 07:01
第73回国民体育大会が福井で行われている。『福井しあわせ元気国体2018』が正式名称だ。福井は十数回、訪れている。歴史のある街で、筆者は特に朝倉氏の遺跡がお気に入りだ。永平寺、東尋坊、大野城址など。何度、足を運んでも魅力のある街だと思っている。近年は恐竜で有名らしいが………話しを国体に戻そう。戦後の1946年に第1回大会が開かれ、各都道府県の代表が地元の名誉を懸けて競うスポーツの祭典である。
自転車競技のトラック種目は9月25~28日の日程で、福井競輪場にて開催された。なぜ国体について書いたかと言えば、参加資格についてである。国体にプロの参加はいかがなものか?と、思ったからだ。各競技の連盟がプロの参加を決めているらしいが、どう考えても国民体育大会の理念を考えれば、ズレているように感じてしまう。今回、自転車競技トラック種目には石井寛子(東京104期)、児玉碧衣(福岡108)のガールズケイリンでタイトルを獲っている2人を筆頭に、寺井えりか(北海道114期)、地元の柳原真緒(福井114期)らも参加している。相手はほとんどが高校生、大学生の中でだ。
高校生、大学生を相手に勝つのはレベルが違い過ぎるのだから当然の話し。国体優勝、普通に聞けば凄いことだが、自転車に限って言えば、逆に恥ずかしいことだろう。大人が子供を相手に戦って勝つのと何ら変わらない。サッカーで香川真司や乾貴士がピッチを、ラグビーでリーチ・マイケルがフィールドを駆け回っていたら?ボクシングで村田諒太がリングに立っていたら?テニスで大坂なおみが強烈なフォアハンドを炸裂(さくれつ)させていたら?もちろん、プロ参加OKの競技もあるだろうが、トッププロはまず出てこない。それなのに女子の自転車競技ではトッププロが堂々と参加している。石井、児玉が高校生相手に優勝しても、感動を与えることはできない。
男子に置き換えてみる。福井と言えば、地元の雄・脇本雄太(福井94期)が思い浮かぶ。言わずと知れた競輪のトップレーサーであり、昨年はワールドカップで金メダルを獲得。今夏のオールスターでは念願のG1タイトルも奪取していて、東京五輪の有力なメダル候補でもある。女子が堂々と名を連ねているのだから、この国体に脇本が参加してもおかしくない。だが、言うまでもなく脇本は参加していない。ここに矛盾を感じてしまうのは、筆者だけであろうか?
世間一般の目線で、年間2,000万円近く稼ぐプロの競輪選手、代表にも名を連ねていた選手が高校生や大学生を相手に戦っているのはハッキリ言ってしまえば“茶番”に過ぎない。
女子の自転車競技者は少なく、高校総体でも今年からやっと正式競技になったばかりである。ここで一つだけ言っておくが、高校自転車部の関係者は努力している。それが形として見られる。問題なのは別の団体で、国体の女子自転車だけは本当に恥ずかしい限りだ。高校生や大学生の夢を摘んでいるとも言えるので、絶対に来年からは出場資格を見直すべきだ。競輪学校に在学している生徒もNGだろう。国体でガールズケイリンのトップが勝っても、誰も評価はしない。前述したように子供を相手に大人が勝つ、それを認めてしまっている体質、風潮はいかがなものか?せめて『プロの部』と『アマチュアの部』に分けるべきだ。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター