2022/03/17 (木) 12:00 7
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は宇都宮競輪「ウィナーズカップ(GII)」に出場する眞杉匠選手を解説する。
⚫︎眞杉匠
公式プロフィールでは身長175cm、体重は76kg。競輪選手とは思えないほどスタイリッシュだ。身長の割に長い手足を持っており、パッと見窮屈そうに、パタンと肘を折りたたんだようなフォームをしている。
しかし、眞杉選手は各関節の柔軟性に優れている。窮屈そうに見えても、一つ一つの動きに無駄なプレーキが一切かかっていない。一踏み一踏みがパワーロスすること無く、自転車を進ませようとする「効率」が、競輪選手の中で最上級に感じる。全力でモガいても力が抜けているように見えるのだ。このスムーズな連動が、競輪選手としては理想的だ。一見、肘をバタバタさせてペダルをガンガン踏み込んでいるフォームは、とてもスピードが出ているように見える。しかし、その認識は大間違いだ。決して理想的なフォームではなく、無駄な力が入って自転車に力が伝わっていない証拠なのだ。
今では、眞杉選手の後ろがGI優勝に一番近い位置とも言われている。眞杉選手の先行を捲くるのはかなり困難だ。踏み出しが良いので、細切れ戦で出入りの激しいレースになってもダッシュ負けすることが無い。その上トップスピードも高いので、1本棒の展開にめっぽう強く、マークする選手は非常に仕事がしやすいだろう。
要は、ライン全員を確定板に載せる事が可能だ。勝ち上がりにも重宝される。競輪選手がフリーエージェント制ならば、間違いなく今1番高い評価が付くはずだ。言うなれば競輪界のムーキー・ベッツだ。眞杉選手の年齢ならば、10年3億ドル(350億円)は堅い。
今回のウィナーズカップは眞杉選手の地元、宇都宮で行われる。間違いなく優勝争いに絡んでくるだろう。いや、優勝も充分に有り得る。そうなれば最高に盛り上がる事はほぼ間違いない。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
タイトル戦ということで、SS級選手が勢揃いしているが、ここはあえて20代の自力選手に期待したい。地元の眞杉匠選手を筆頭に、町田太我選手、山口拳矢選手、そして初のビッグレースに挑む吉田有希選手に注目したい。
500バンクと言うことで、仕掛けも遅くなり、自力選手の台頭は充分にあるだろう。若手選手にとっては、ここ宇都宮で世代交代をさせるという強い気持ちを持って欲しい。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。