2022/02/28 (月) 12:00 13
取手競輪場で開催された「第37回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)」はKEIRINグランプリ王者の古性優作(31歳・大阪=100期)の優勝だった。昨年末から古性の勢いは止まらない。和歌山記念(和歌山グランプリ)はやや調子落ちのようだったが、取手の走りは圧倒的だった。2日目の優秀戦は流れに乗れなかったが、鋭さが目立つシリーズだった。
脇本雄太(32歳・福井=94期)がいない中で、「どんな結果を残すのか」と注目を集めていた。イキのいい若手も多く関東のシリーズ、いや、今年は関東の年になるのか…と思われたが、ビタっとシャットアウト。グランプリを勝った時はド派手なパフォーマンスだったが、今回で“これが古性”をより知らしめた。
とにかく「古性が走るぞ! 」とレースに対しての純粋な楽しみを生む選手だ。基本的には車券を投票し、その上で楽しむのが競輪だが、車券の域を超える楽しさを与えてくれる。まさしく“競輪の鬼”なのだろう。
脇本は全日本選抜の直後の大宮FIを走った。もちろん、3連勝。その中で久しぶりの500バンク、久しぶりのFIをかみしめていた。「こう言っては何なんですけど、FIでは、入り切れない」。
GIや五輪を戦い続けてきただけに、FIでは興奮するような感覚はなかったようだが、負けられない緊張感はあった。
FIを軽んじているのではなく、現実に何を感じているか、は大事。そんなギャップを感じつつも“検車場の鬼”は、いろんな選手との懐かしいコミュニケーションで、昔のリズムを思い出していた。「FI、いいな…」と感じたことだろう。
奈良記念(春日賞争覇戦)を走っていた選手に聞いたが「ワッキーはいつも通りだった(笑)」とのこと。しゃべることがリズムを生む。大宮のワッキーも楽しそうだったし、そう、“競輪を楽しむ”原点を感じさせる時間があった。競輪はいさかいを生んだりするものではない、楽しむものだ。そして時にお金が増える。しかし、基本的にはちょっくら減る。
ボートレースでは難しい事象が起こり、トップレーサーの峰竜太が4か月の出場停止処分を受けた。ネット上の事象は公営競技にとって、少し先を行く感がある。現状のルールを超えることはいけないが、変わらないといけない現実もある。
SNSやコロナは喫緊の課題。これも規制、あれも規制、を是とし、それにうなずくばかりの人もいるだろうが、そこにファンは不在。ただ、現場には「これはこうなりそうだが、こうはできないか」など、それぞれの立場の中で懸命に模索する人たちがいる。
人間はツールを有効に利用するからこそ、人間たり得る。逆境に立ち向かうからこそ、成長する。立ち止まっていては進化はない。まして、競輪界、公営競技はファンに対して純粋な責任を負っているもの。現状打破の道を見出そうとしなければ、裏切りでしかない。特に記者の場合は、伝えることから離れていけば、バンクで戦っている選手に対する裏切りにもなる。
私の周りには面白い原稿や、ファンの目を引く写真、のめり込んだ文章を書く人たちがいる。選手と相まって何かできないか、を常に考えている人たちがいる。支えてくれる関係者も多ければ、熱量では到底かなわないパワフルな施行者の方々もいる。いいものが揃っている競輪界なので、いろんなことが起こっても、前向きな気持ちではある。競輪を楽しもう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。