静岡競輪「KEIRINグランプリ」以来の出走

　奈良競輪場で開設71周年記念「春日賞争覇戦(GIII)」が、10〜13日の4日間で開催される。守澤太志(36歳・秋田＝96期)は昨年12月広島記念(ひろしまピースカップ)の初日に落車し、右鎖骨骨折の重傷を負った。年末の静岡グランプリは走ったものの、そこからもう一度立て直しを図り、今回が復帰戦となる。

　2022年の賞金はもちろん、まだ0円だ。

　守澤にとっての今年は“昨年の戦いはどうだったか…を問われる”1年になる。S級S班1年目の戦いとして、ふさわしいものであったかもしれないが、守澤はその上を目指していたはず。目標は「またグランプリに出場すること」だったので、それは達成できた。しかし、その形は描いていた理想ではなく、やっとのことでつかみ取ったもの。やはりGI優勝を成し遂げてこそ…だろう。

　目の前に佐藤慎太郎(45歳・福島＝78期)という目標があるので、“乗り越えられるか”がこの一年だ。佐藤は今年すでに記念を4場所走っている。堅実に戦い、静岡記念は優勝と賞金も着実に積み重ねている。ただもう守澤としては焦ることもないだろう。

　今は出遅れた以上、どこかで取るしかない…という心境のはず。昨年はすべてのレースにおいて同等に責任を背負っていたかと思うが、今年はその責任の上に、自分の勝負をGI戦で重ねて戦っていく。

歴代のマーク屋以上の存在感を示せ

　壁は高く、厚い。また成田和也(43歳・福島＝88期)という信頼度の高さでは全国屈指の選手も北日本にはいる。佐藤の昔からの持論でもある「日々、どんなレースをしているか」がある。静岡では(佐藤)シンタロウ自身が、自身への挑戦とも思えるような決断をし、結果につなげた。成田も日々の戦いぶりはわかりやすく、競りだな…という構成の時はメンバー表を見る時に、少しニヤっとしてこちらを見る。

「そ、そうですよね…」。

　あの微笑みは、シビれる。基本的には険しい表情。戦場に向かう男の顔つきだ。勝つために向かうわけだが、それ以前の戦いもある。楽な競りなどなく、苦しいだけの道で、誰しも万度び競りたいわけではない。でも成田や他のマーク屋の方々には申し訳ないが、その戦いにファンが胸打たれるものがある。

　時々、見たいものです。

　守澤がその道に歩むかどうか、が気になっている。タテ脚があり、また番組面でもほったらかしにはされないため競る場面は少ないが、意識してほしいマインドがある。それは小野俊之(45歳・大分＝77期)の心持ちだ。

すべてを威圧するマーク屋の姿

　小野は2004年の立川グランプリを制し“天下布武”を成し遂げた。今の時代なので語弊もあるかもしれないが、往年の意味合いで小野の中に備わる“男らしさ”がマーク屋として鮮烈だった。自在にやっても強かったが、『番手』にこだわることで生々しく表現された。

「一番強い先行選手の後ろにオレがいればいいんでしょう。ハッハッハ！ 」

　『それが競輪』と言わんばかりの存在感だった。先行日本一の村上義弘(47歳・京都＝73期)の後ろには小野がふさわしいという時期すらあったのだ。競技性が変わってしまったことは事実でも、競輪で大事にされているもので変わらないものもある。

　性格的に穏やかで優しい守澤だが、冗談でなく、名前をもじるのは申し訳ないが“攻澤”の姿に期待したい。

　そこにいるだけで、番組の中にその名前があるだけで攻撃されているような…。

あの男も帰ってくる！

　脇本雄太(34歳・福井＝94期)も長引いてしまった腸骨骨折の治療から帰ってくる。S班は守澤と古性優作(30歳・大阪＝100期)、松浦悠士(31歳・広島＝98期)、宿口陽一(37歳・埼玉＝91期)、吉田拓矢(26歳・茨城=107期)の5人。吉田は膝の皿が外れた、との診断もあったが軽傷の様子だ。

　吉田のライバル・新山響平(28歳・青森＝107期)も今年のGI制覇の期待がかかる1年。なんとも興味深いシリーズになる。

　命を懸けて挑む三谷将太(36歳・奈良＝92期)に長兄・三谷政史(39歳・奈良＝93期)に三男・三谷竜生(34歳・奈良＝101期)と三谷三兄弟も揃い踏み。

　古都・奈良の2月は深々と時が刻まれる。静寂の地で争われる血液が沸騰するようなバトルが、待っている。

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