2022/01/07 (金) 12:00 1
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は立川競輪場で開催されている鳳凰賞典レースの決勝レース展望です。
【鳳凰賞典レース】は初日、2日目と冷たくて、強い風が吹く中での開催となっただけでなく、準決勝が行われた3日目の6レース以降は風こそありませんでしたが、雪がバンクの中に舞っていました。選手たちにとっては、冷蔵庫の中でレースをしているような気持ちだったのではないのでしょうか。
この時期特有と言える、走っていても重い立川バンクで台頭してくるのが、追込選手も先行選手も、スピードより長くもがける、言わゆる「地脚」のある選手たち。決勝のメンバーでは浅井選手、清水選手、吉田選手がそれに該当します。
ただ、別格と言える存在が、スプリンター型の新田選手。オリンピックの練習でとてつもないギアを踏んできたからか、この条件でもスピードを保ったままで長い距離を踏めています。スピードに乗るのが大変なバンクでも好タイムを記録しているように、暮れの【椿賞争奪戦】からの好調を保ったまま、今大会に臨んできた印象を受けます。
その新田選手と同様に、調子の良さが目立っていたのが浅井選手です。この準決勝でも後方から上がっていき、ゴール前ではあわやのレースを見せていましたが、その後に接触して落車。ただ、滑っての落車ということで、怪我も軽傷ですみそうですし、マシントラブルもそこまで出ないとは思いますが、この決勝では、少ならずとも影響は出てきそうです。
決勝の並びですが、北日本ラインは木村選手が先頭を走り、その後ろが新田選手-菊地選手。関東ラインが吉田選手-稲村選手。中四国ラインは清水選手-久米選手と、ここまでは想定できましたが、それぞれが単騎で走ると見ていた浅井選手の後ろに、桐山選手が付けたのは意外でした。
有利となったのは唯一の3車となった北日本ラインです。新田選手にとっても、前を木村選手が走ってくれるのは大きいですし、北日本ラインで前受けができるようなら、そのまま木村選手が突っ張り先行。新田選手はそのスピードを受けての二段掛けも想定できます。
北日本ラインが先行した場合に、その後ろに付けていそうなのが関東ラインです。新田選手が木村選手を早めに交わしていった時に、3番手となるのが吉田選手。関東ラインの後ろにいる浅井選手にとっても、捲っていくには絶好のポジションとなります。
しかも、立川バンクは4コーナーからが長いので、新田選手の後ろにいる菊地選手よりも、地脚で勝る吉田選手や、浅井選手が交わして行くのではないかと見ています。
ただ、先行が想定される木村選手に、道中は最後方にいそうな清水選手がもがき合い、結果としてインを叩けるようだと、また展開が違ってきます。その時、中四国ラインの後ろを回っていそうなのが、浅井選手-桐山選手であり、そこで吉田選手がかましていけるようだと、北日本ライン以外での決着も見えてきます。
雪の心配はなさそうですが、バンクの重たさは変わらないでしょうし、風向きだけでなく、風の強さもまた、波乱を引き起こすのかもしれません。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。