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前田睦生の感情移入

【寛仁親王牌】2人の“越後武者” 弥彦で競輪人生のすべてをかける

2021/10/20 (水) 12:00 15

諸橋愛(右)と佐藤慎太郎が語り合うシーン(2018年)

2011〜2015年は5年連続弥彦で開催

 2021年は弥彦で寛仁親王牌が行われる。10月21〜24日。“2人”の選手にとっては、もしかしたらこの発表は最後の知らせに聞こえたかもしれない。

 2人の選手とは、諸橋愛(44歳・新潟=79期)と鈴木庸之(35歳・新潟=92期)。諸橋は2011年からの5大会すべてに参加している。成績を見てみよう。

成績
2011
201234落5
20132772
20145111
201513落

 生々しい闘争の跡がある。かける思いは上記の数字にすべて叩き込まれている。が、思いは届かなかった…。その後は記念での大活躍で留飲を下げた形だが、この大会はまた諸橋の心を燃え上がらせる。

 何度でも立ち上がり、何度でも挑む。『刮目して見よ』とは今回の諸橋の走りに違いない。

笑う鬼が歩いてくる

鈴木庸之は笑う鬼

 鈴木は上述5大会には出場できなかった。エリート街道を歩いてきたわけでもなく、ド根性で今の地位にはい上がってきた。腰を悪くして選手生命が危ぶまれたこともある。半年近い寝たきりの生活から復活した鬼だ。しかしこの鬼は、よく笑う。

 でも普段の明るさからは、想像できない地獄をくぐり抜けてきたのだ。「今回が自分の競輪人生のピークになるように」と。覚悟を決めて挑む。諸橋と鈴木の後ろには、毘沙門天が見えよう。諸橋にとっては、過去のすべてに対するリベンジ。そして、幻のゴールへと思いははせる。

 諸橋は、2017年の平塚競輪のKEIRINグランプリは失格。ただ一度だけ出場がかなったレースは、悪夢で終わっている。その夢から覚めるには、今回優勝し、そして静岡への道しかない。

静かな森に響く音色は

弥彦の森が諸橋愛を包む

 寛仁親王牌の開催時期は2015年までの暑い7月から変わり、今は10月。今年は一気に秋を過ぎ去る勢いの中で開催される。弥彦の森は静謐の中に沈んでいることだろう。そこに何があるか…。

 脇本雄太(32歳・福井=94期)の腰は相当、重症だったようだ。欠場、また療養が必要なほどになっているのは残念だが、まだ32歳。先を見て、のんびり休んでほしい。

 脇本が絶対的な支配者だったことは否めない。9月岐阜競輪の共同通信社杯(GII)では山口拳矢(25歳・岐阜=117期)が風穴を開けた。脇本不在の時に何が起きるか…今結果を出すことが、脇本への挑戦状になる。ドラマはまだ先にもある。

 地元の2人、そして脇本不在…。まだまだ、話題は尽きない。

新田祐大が狙うグランドスラム達成

新田祐大は上だけを見ている

 新田祐大(35歳・福島=90期)がグランドスラム達成に王手をかけている。残すタイトルはこの寛仁親王牌。昨年大会の取材時にはそこまでの意識はなかったようだが、今年は狙っていく。弥彦の長い直線を、どう生かすのか。新田の不敵な笑みが浮かぶ。

 誰が優勝するのか、は当然最大の関心事。しかし今回は、開催場所、状況、いろんなことを考えていると、誰がどんな走りをしたか。どの選手がどんな挑戦をしたか。歯を食いしばったか、笑ったか。全員の一挙手一投足が気になるシリーズだ。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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