2021/10/16 (土) 12:00 13
コロナ禍に入って一体どれほどの時間が経つのか…。もう、いつからコロナだったかとか考えたくもないレベルに入ってきた。日々悶々とするわけだが、今こそ頭を整理して、何が大事なのかを考えたい。
新型コロナウイルスは生命、また健康を脅かすものだが、目に見えない人のつながりを分断することが早くから指摘されてきた。競輪の取材をする身にとっては、「競輪をどう伝えるか」ここが分断される苦しみがある。
この数年、科学者やある道の専門家の言葉として聞いたものが2つ心に残っている。
コロナに関しては「敵はウイルスではなく、人間」というもの。またサイバーテロに対する技術者が、過酷な業務に耐え、なぜそれを続けるのかを問われた時に、「現実を知ってしまった者の、責務」と答えたものがある。
競輪取材の現実は、コロナ対策のため、今までの取材ではない限られたものになっている実情がある。その中で何かできないか、と選手の協力を得て「宮尾すすむポーズ」(布居大地考案)を筆頭に、WEBでアップできるインパクトのある写真を提供してきた。
とはいえ、時も経てばファンも飽きる。実際に何が知りたいのか、見たいのか、はコロナ以前のものもある。
一番は検車場での姿。レース直前、直後、また番組発表時の緊迫感ある表情…。様々なものがあり、できるだけ最前線でその姿を追うのが仕事だった。
そのレースに対する思いを、選手とファンが共有できるように、それが一番だった。
今では選手のパフォーマンス、サービス頼りになっているので、寄りかかるほかはない。限られた場所で何ができるのか。まだコロナ禍の規制は続くと思われるので、そこで戦わないといけない。若干怪しげなものや、また明るく可愛い写真を撮るため、選手の皆様が全力で協力してくれることへの感謝はこの場を借りて伝えさせてもらいます。
ポコっと話は飛ぶが西島叶子(26歳・熊本=118期)。
熊本競輪場は10月いっぱいで選手の利用も不可となり、工事に入る。2024年の再開を待つわけだ。熊本の選手はバンク練習ができなくなる。西島の場合は…。
「鹿児島に行こうと思ってます。鹿屋大にいたので、今の学生たちと一緒に練習もできれば、と。ロードなんかみんなすごく強いんで。バンクは卒業後に400から333に改修されたんですが、メチャクチャきれいなんです。それに山ばっかりで練習になりますから」。
ちょっとした苦境をどう乗り切るか。前向きな気持ちが最も重要なのだ。西島の話を聞いていて、選手の姿、をどんな形ででも多く伝えることが必要だと改めて思い知らされた。コロナ禍の規制は、JKAが身を粉にして、奮闘、奮闘、必死に行っている。はっきり言って記者からすれば「やりすぎやろ! 」くらいに思ってしまうわけだが、今はこれが必要。この中で働いていくだけ。そこでどんな仕事ができるか、だ。
前橋のナイターGIII(ドームスーパーナイトレース)の取材期間中、駅前の喫茶店でコーヒーを飲んでいた。パソコンを開いて、デキるサラリーマンを演出しつつ、武雄モーニングを見ながら、将棋の叡王戦の予選を見ていた。「そこは、6八銀でええんやないの…」。
耳にはイヤホンをしてドラクエの音楽を聞いていたわけだが、イヤホン越しに「番手」「矢口」「天田」と怪しげなワードが聞こえてきた。しかも、若い女性の声…。世の中には変なのがおるのう、と思いちらっと見たら前橋の勝利者インタビューや予想会の仕事をしている美人キャスター軍団だった。
それにしても声がきつい。「こういう質問をして、こういう流れで」「こんなレースをしていたから、この質問は? 」。こっそり、横で聞いていてすみません。怖いくらいの緊迫感で、準備していたのだ。真面目過ぎて、ちょっと引いたほど。「現実を知ってしまった者の、責務」として、勝手に書いてしまいます。ごめんなさい。
競輪の仕事にこんなにも全力の人たちがいるんだ…と感じたことが、このコラムを書いた動機。できるだけ選手の話を聞いて、危ない写真を撮り、できれば動画も何とかしないとな…。勉強します。
そもそも最もファンが知りたい、車券に生きる取材、予想も頑張らないとな…。
Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のTwitterはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。