2025/12/07 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は佐世保競輪場で開催されている「九十九島賞争奪戦」の決勝レース展望です。
【競輪祭】を挟んでの開催となった【九十九島賞争奪戦】は、その【競輪祭】にも出場していた選手たちが参戦してきたこともあり、豪華なメンバー構成となりました。
その中には新山選手、松浦選手、清水選手、犬伏選手と今期のSS班が名を連ねています。どの選手も【競輪祭】でも思うようなレースができず、SS班からの陥落となりました。
自分の経験としては、グランプリ出場が難しくなった段階で、来年に気持ちを切り替えて、この時期のレースへと臨んでいました。
4人共に万全の状態ならば、SS班に返り咲ける実力者ばかりです。来年の2月には熊本競輪場で【全日本選抜競輪】も行われるだけに、そこでの優勝を目指して、しっかりと調整してもらいたいと思います。
ただ、切り替えができる4人とは違って、悔いが残っているのは、あと少しの差で、【競輪グランプリ】への出場が叶わなかった、荒井選手なのではと思います。
【競輪祭】の決勝では、ホームでカマしていった松本選手の番手という、最高の位置取りとなりました。
荒井選手は今年で47歳となります。若手選手を向こうに回して、年齢を感じさせない走りを見せていますが、それでも肉体的な衰えは感じているはずであり、願っても無いチャンスが来たと思っていたはずです。
レース後のコメントからも悔しさが伝わってきており、今大会におけるモチベーションはどうなのかとも思っていました。
また、【競輪祭】で一度状態をピークに持っていっただけでなく、その後には九州地区の地区プロもあっただけに、決して、状態面は良くなかったと思います。
それでも地元の記念競輪ということもあり、番組にも恵まれていたこともあってか、二次予選、準決勝と連勝で決勝に進んできました。
荒井選手が勝利した二次予選と準決勝で、ラインを組んでいたのが犬伏選手です。初日の特選は新山選手とやりあっての9着ながらも、二次予選、準決勝と早めの仕掛けながらも2着に残している走りを見ても、調子は良さそうです。
一方、準決勝では吉川選手との3着同着ながらも、二次予選の着順が上だったことで、決勝進出となったのが松浦選手です。まだ、いい頃の状態までは戻り切っていませんが、決勝に進出できただけでなく、犬伏選手が決勝に進んできたのも含めて、運が向いているのは間違いありません。
決勝の並びですが、4車となった九州ラインは、⑤北津留選手-①荒井選手-⑧上野選手-⑥角選手となりました。
九州の並びですが、北津留選手と同じ福岡の角選手が、どこに入るのかとも思いました。ここは地元の荒井選手に番手を譲っただけでなく、点数上位の上野選手にも3番手を譲ったのは、九州で上位を独占したいとの思いもあるのでしょう。
中四国ラインの2車は②犬伏選手-⑨松浦選手。東日本での連係となったのが④坂井選手-③佐々木選手。初日から3連勝の⑦稲川選手は単騎戦となっています。
1番車に準決勝でもスタートを取りに行った荒井選手が入ったことで、北津留選手の前受けが濃厚となりました。5番手からが中四国ライン、そして東日本ラインで、稲川選手は切れ目からのレースとなりそうです。
後方から坂井選手が抑えに行きますが、それを見た北津留選手は、一歩も引かずに突っ張り先行へと入っていくはずです。
そのまま北津留選手が先行し、番手の荒井選手としてはおあつらえ向きの展開となりますが、「昨日の友は今日の敵」とばかりに、捲りの体制へと入っていくのが犬伏選手です。
4車の厚みがあるだけに、荒井選手が有利なのは間違いありませんが、それを乗り越えていけるようなスピードが、犬伏選手にはあります。
印としては◎①荒井選手、〇②犬伏選手、△⑧上野選手、×⑨松浦選手となりますが、3連単では犬伏選手が頭となる買い目も出してあります。
松浦選手としては、捲っていく犬伏選手のスピードについていけるかが鍵となります。もし、付いて行けたとしても、犬伏選手を交わし切るまでの状態では無いと見ています。
むしろ、単騎戦ながらも状態がいいのが稲川選手です。さすがに優勝は難しくとも、展開次第で2着はあると見ています。基本的に堅そうなレースながらも、高配当を狙うのならば、稲川選手を抑えておくべきでしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。
