2025/11/16 (日) 12:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は小田原競輪場で開催されている「施設整備等協賛競輪」の決勝レース展望です。
小田原競輪場で先週末に開催された、【北条早雲杯争奪戦】に続き、2週連続での記念競輪開催となったのが【施設整備等協賛競輪】です。
来週は【競輪祭】の開催を控えており、SS班が不在とメンバー的には手薄となりました。その中でも注目を集めていたのが、GIII初参戦かつ、今大会が怪我からの復帰戦となる市田選手でした。
市田選手は初日の一次予選でも人気の中心になっていましたが、9車でのラインの競走に慣れていないことや、自分の力だけで勝とうとしたばかりに8着に敗れてしまいます。
本人もレース後は反省していましたが、実力の違いを証明するかのように、明くる日の二次予選、そして3日目の特選では、番手の選手が離れてしまうようなカマシを見せて快勝します。
市田選手はスタートが上手くないので、1番車でも前受けのレースができていません。それでも中団に待機しておけば、レースの選択肢が広がるのにも関わらず、自らの得意な形でもあるのでしょうが、後方に下げてからの捲りのレースが多くなっています。
市田選手が今後、記念競輪で結果を出すためには、9車立てで行われるラインのレースに慣れる必要と、臨機応変なレース運びができる「引き出し」を増やしていく必要があります。
特昇を果たした若手選手の誰もが経験することですが、S班の実力者が揃ったレースになるほどに、A級では通用した実力だけでは勝てなくなります。そこでレース前の作戦や、ラインの重要性に気付かされるわけです。
幸いなことに市田選手のいる近畿地区は、番手の仕事ができる選手が揃っています。今後、FIや記念競輪で、こうした選手とラインを組む機会も増えていくはずです。
その時にラインの力を信じるレースをしていったのならば、実力的にもタイトル奪取は現実となってくるでしょう。最終日もどんな走りを見せてくれるか楽しみです。
今大会は7月に特昇となったばかりである125期の小堀選手の走りにも注目していました。その小堀選手ですが、準決勝では積極的なレース運びをしていくも、早めの仕掛けもあってか7着に敗れています。
ただ、このレースでは人気を集めていた伊藤選手も9着に敗れており、3連単は高配当となりました。
【北条早雲杯争奪戦】もそうでしたが、小田原バンクのような短走路のレースは、思い切って先行していくラインが有利となります。
とはいっても、あまりにも先行争いが激しくなると、捲りを狙っているラインが届く展開ともなります。その展開を見定めていたかのように、今大会では駆け引きに秀でたベテラン選手の活躍が目立っていました。
決勝の並びは②山田選手-⑦西村選手の中部ライン、⑨阿部選手-⑤宮本選手-③塚本選手の九州ライン、⑥一戸選手-④岡本選手-⑧志村選手の関東ラインとなり、地元の①松坂選手は単騎となっています。
決勝に勝ち上がってきた9名の中で、調子の良さが目立っていたのは阿部選手です。また準決勝では、小堀選手の先行を交わし切った一戸選手も好調をキープしています。
互いに先行のできる選手ながらも、ここは阿部選手の先行1車となりそうです。1番車の松坂選手の前受けはないので、2番車に入った山田選手が、スタートを取って中部ラインが前受けとなるでしょう。
その後に九州ライン、関東ラインの並びとなり、松坂選手はラインの切れ目からのレースとなります。後方から一戸選手が山田選手を抑えにかかった時、阿部選手がその上から一気に先行態勢へと入っていくと見ています。
この展開となれば九州ラインにレースの主導権を握られてしまうだけに、一戸選手や山田選手は早めの巻き返しで、どこまで迫っていけるかとなります。
その展開を嫌った九州ラインが、スタートを取りに行く可能性もありますし、スタートの早い志村選手のいる関東ラインが、前受けとなっている可能性もあります。
関東ラインが前受けをした場合には、阿部選手は後方から抑えに行った際に、そのまま先行態勢へと入るかもしれません。こうなると山田選手の捲りが決まる展開となります。
難しいレースの予想を、更に難しくしているスタートの取り合いとなりますが、どんな展開となろうとも、ラインの強さでは一枚上の九州ラインが予想の中心と見ていいでしょう。
印としては◎⑤宮本選手、〇⑨阿部選手、△②山田選手、×⑥一戸選手に打ちます。印こそ回しませんでしたが、③塚本選手も今大会は安定したレースを見せているだけに、阿部選手が先行した場合には、確実に車券の対象となってくれそうです。
【施設整備等協賛競輪】は四日間に渡り、CSの解説を行っています。場内では高木真備さんが出演するトークショーや予想会だけでなく、開催最終日には郡司選手のトークショーも行われます。
個人的に立ち寄って欲しいと思うのが、無料のドリンクコーナーです。そこではお茶やコーヒーだけでなく、季節ごとに異なるジュースが無料で味わえます。今開催はゆずジュースと梅ジュースになっていました。
また、場内には様々なキッチンカーも出店しており、トークショーの他にも様々なイベントが開催されています。開催最終日は風も無く、好天に恵まれる予報も出ています。
解説者としてはCS中継を見てもらいたいところですが(笑)、お時間のある方は小田原競輪場で臨場感溢れるレースと、様々なイベントを楽しんでください。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。
