2025/10/02 (木) 08:00 5
S班の顔ぶれだけ見ても眞杉匠、岩本俊介、脇本雄太、松浦悠士、清水裕友と5人が並ぶ。ここに吉田拓矢、菅田壱道、南修二と名前を挙げ始めればキリがない。まさに競輪界を代表する精鋭が一堂に会したシリーズ。自然と観る者の胸も高鳴る。
とりわけ注目は眞杉匠だ。欠場明けとはいえ、彼の性格からして休養といっても休んでいない。おそらく練習の虫となり、肉体も精神もバージョンアップさせてきたはずだ。その背中を押すのが盟友・吉田拓矢の存在。互いを理解し尽くしたコンビが並んだときの安心感は、他のラインにはない強みだろう。
一方で脇本雄太。自力を使えばいまだ別格の強さを誇る。ただ、任せたときの危うさ、これはどうしても拭えない。リオから東京オリンピックと戦ってきた男の矜持は確かにある。だが競輪のレースは時に、その矜持すら揺さぶる。今回はどちらの顔を見せるのか。
南修二もまた岐路に立つ。グランプリが射程に入る位置まで来ている今、思い切って攻めるのか、それとも冷静沈着に立ち回るのか。南らしい「決断」が問われる場面になる。
また岩本俊介の一撃、清水裕友と菅田壱道の自力自在戦、ここも見逃せない。隙を見せればたちどころに強襲できるポテンシャルを秘める面々。しかも寛仁親王牌を前にしたタイミング。各自それぞれの立場・思惑が交錯し、勝負どころでぶつかり合う。「ここで負けるわけにはいかない」ーー。その思いが、レースの一瞬一瞬に火花を散らせるだろう。
シリーズ全体を通しても、誰が覇を唱えるのか読みにくい。だからこそ面白い。力と力、思惑と思惑が交錯する、その真っ只中にこそ競輪の醍醐味がある。観る者を巻き込む熱戦になることは間違いない。
さて妄想タイムーー。いや、妄想どころか現実味を帯びてくるのが新田祐大。まだまだトップクラスの力を備えており、予選で大きく崩れることは考えにくい。
地元勢は高橋築、寺沼拓摩、鈴木竜士。中でも鈴木の気配が良く、“地元3割増し”の走りに期待が膨らむ。さらに山口多聞の伸びしろも頼もしく、地元ラインを後押しする存在となろう。
加えて荒川達郎もS級の舞台に慣れつつあり、本格化への兆しを感じさせる。こうして顔ぶれを眺めれば、妄想には事欠かないメンバー構成。京王閣バンクは穴党にとって格好の舞台でもある。となれば、じっくり見極めて高配当を射止めたいーー。そんなシリーズになりそうだ。
妄想は10Rを狙うことにする。まずは並びから整理しておこう。北日本は⑨新田祐大-①守澤太志-④庄子信弘、関東が②荒川達郎-⑤志村太賀-⑦飯嶋則之、九州が⑥平尾一晃-③中村圭志-⑧稲吉悠大となっている。初手は新田が前を取りそう。枠なりで荒川が中団、平尾は後方から(⇐⑨①④・②⑤⑦・⑥③⑧)。
勝負どころで平尾が抑えに出る。新田はいったん下げて、その上を荒川が踏み上げる展開。平尾と荒川でもがき合いになれば、新田が守澤を連れて一気に捲り返す。ゴール前は差し脚戻った守澤が優勢で①=⑨、荒川から切り替える志村へ①-⑤までが本線か。
一方で、妄想はというと「荒川がスタートを取るケース」だ。新田が平尾に合わせて上昇するが、荒川が突っ張って平尾を呼び込む形で並びは(⇐⑥③⑧・②⑤⑦・⑨①④)となる。荒川が新田を警戒して仕掛けを遅らせると、中村に展開が転がり込む。そこからまくる荒川に志村が食らいつき、さらに新田、守澤が強襲する流れ。狙いは②-①⑨⑤③あたり。押さえで②③⑤①ボックスも面白く、ここらを妄想〆ってことにしとく!
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。