アプリ限定 2025/11/15 (土) 16:00 4
11月19日から21日の3日間、小倉競輪場で開催される「競輪祭女子王座戦(GI)」。2023年から始まったこの大会は今年で3回目を迎える。男子のGI競輪祭と同時開催される華やかな舞台。今年も小倉ドームで熱戦が繰り広げられる。
優勝すれば12月29日に平塚で行われる「ガールズグランプリ2025」の出場権を得られる競輪祭女子王座戦。そしてこの大会が終わると、グランプリ出場メンバー7名が出揃う。
賞金は優勝が590万円(副賞込み)、決勝2着の賞金は226万9000円、決勝3着は134万7000円。賞金額が大きいため、グランプリ出場ボーダーにいる選手は決勝進出が絶対条件となる“運命の戦い”だ。
ここまで2025年のGIすべてを優勝している佐藤水菜の“年間GI完全制覇”か、地元・児玉碧衣の逆襲かーー注目の選手たちの戦いを展望する。
主役はもちろん、ここまでGI3連勝中の佐藤水菜(神奈川)。4月のオールガールズクラシック(岐阜)、6月のパールカップ(岸和田)、8月の女子オールスター競輪(宇都宮)と、すべてのGIで優勝を飾り、年間タイトル独占まであと2冠(競輪祭・グランプリ)に迫っている。
10月の自転車トラック世界選手権(チリ)ではケイリンで2年連続金メダル、スプリントで銀メダルを獲得。世界でも無敵のスピードを誇る。ガールズケイリンでは年間タイトルの全冠制覇を目標に、集中力を高めて小倉へ入るだろう。
競輪祭女子王座戦では、初回が準優勝(優勝は梅川風子)、2回目は優勝。スピードが生きるドームバンクでは、逃げてもまくっても死角がない。佐藤が完全制覇で“史上最強”を証明するか注目だ。
賞金ランキング2位の児玉碧衣(福岡)は、地元九州の意地を見せたい。
ホームバンクは久留米だが、同じ福岡県の小倉バンクは愛着も深く走り慣れた舞台。競輪祭女子王座戦の前身である「ガールズグランプリトライアル」では4度の優勝を誇る。
GI昇格後の2大会はともに予選敗退と苦戦が続くが、今年は復調著しい。8月佐世保から11月岸和田まで7場所連続完全優勝(22連勝)と勢いがある。
「地元の大歓声を味方に、自分らしいスピードで勝負する」ーー意地を見せる準備は整っている。悲願のタイトル奪取へ、勝負の3日間となる。
梅川風子(東京)はこの時期の小倉に強い。ガールズグランプリトライアルで2度優勝、GI昇格後も2023年に制覇しており、相性は抜群だ。
今年は一般開催で優勝ラッシュ。 GI戦線ではオールガールズクラシック(岐阜)で決勝3着、パールカップ(岸和田)で決勝4着、女子オールスター競輪(宇都宮)では落車と悔しい結果に終わった。
「最後のGIで結果を出したい」ーー賞金ランキング6位につける梅川は、決勝進出で賞金上積みを狙いながら、再びの女王戴冠を目指す。
賞金ランキング3位の久米詩(静岡)、4位の尾崎睦(神奈川)、5位の坂口楓華(愛知)の3人は、無事故完走ならばグランプリ出場が確定的。 ただし3人ともGIタイトルが未経験であり、「最後の1冠」への渇望は強い。
例年の傾向を見ると、競輪祭女子王座戦を制すればグランプリ本番での枠順が有利になるだろう。GI3勝の佐藤水菜の1番車は決定的で、この大会の優勝者が2番車を得る見込みだ。
この大会も佐藤が優勝ならば、枠順は賞金ランキング順となりそうだ。上位勢にとっては優勝そのものはもちろん、賞金の上積みが大きな意味を持つ大会となる。
6位の梅川と約167万円差の7位につけるのが山原さくら(山口)。8位尾方真生との差はわずか54万円で、まさに“薄氷”だ。
山原が優勝すれば自力でグランプリ出場が決まるが、決勝進出を逃すとピンチで、賞金8位以下から優勝者が出た場合は補欠となる。
ただし近況は絶好調。10月玉野から4場所連続完全優勝中で波に乗る。2024年10月に高知支部から山口支部へ移籍したが、小倉で練習していた経験がありバンクは走り慣れている。
決勝進出と賞金上積みを果たし、2022年以来のグランプリ出場を狙う。
賞金ボーダーは僅差。勝ち上がりでの賞金を補足しておくと、予選1着が18万円、準決1着が24万円となる。前述のとおり決勝2着賞金が226万円なので、優勝を逃しても最大268万円の上積みが可能だ。出場が可能なラインは誰までだろうか?
先ほどの条件を踏まえると、準優勝でグランプリ出場の可能性を残すのは賞金ランキング16位の大浦彩瑛(神奈川)まで。ただ13位の那須萌美(宮崎)から16位の大浦彩瑛に関しては、ランキング上位が失格などで賞金を上積みできなかった場合など、厳しい条件が絡んでくる。
つまり賞金13位以下の選手が自力でグランプリ出場を狙うには、優勝しかないということになる。
8位尾方真生(福岡)、9位柳原真緒(福井)、10位太田美穂(三重)、11位奥井迪(東京)、12位小林莉子(東京)は競輪祭での決勝進出が絶対条件。予選・準決で敗退すれば、即グランプリ争いから脱落だ。初日から緊張感に包まれた戦いが予想される。
現状の賞金ランキング圏外から大逆転を狙うのが、新星・仲澤春香(福井)だ。
ナショナルチームでの活動が中心で出走数は限られているが、今年は25走中20勝、優勝6回と抜群の勝率を誇る。 GI初挑戦のパールカップ(岸和田)では決勝5着、女子オールスター競輪(宇都宮)では4着と存在感を放った。
今回の競輪祭女子王座戦は初出場だが、小倉では昨年10月に完全優勝を果たしており、バンク適性は十分。勢いのある走りで一気に頂点を奪う可能性を秘めている。“ストップ佐藤水菜”を果たすとすれば、同じナショナルチームの仲澤かもしれない。
GI3連勝中の佐藤水菜が「年間GI完全制覇」を達成するのか、地元・児玉碧衣が意地を見せるのか。新星・仲澤春香のグランプリ初出場はあるのか…ガールズグランプリ2025の舞台に立つメンバーが決まる最終決戦が待ちきれない。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。
