2025/05/04 (日) 12:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は名古屋競輪場で開催されている「日本選手権競輪」の決勝レース展望です。
競馬はそれほど詳しくはありませんが、それでも「日本ダービー」が特別なレースであることは知っています。
競輪選手にとっての「ダービー」と言えば、「競輪ダービー」とも言われる【日本選手権競輪】です。現在もGIでは最高の賞金総額となっていますが、【競輪グランプリ】が開催されるまでは、最も賞金が高いレースでもありました。
【日本選手権競輪】は6日間の日程もさることながら、二次予選から準決勝へ進める人数が、レースによっては2人までとなっており、GIの中でも勝ち上がりが難しくなっています。
自分が現役だった頃は、日本選手権競輪に向けてのトライアルレースが、二開催に渡って行われていた時期となります。特選に出場する選手も競走得点では無く、トライアルのポイントで決まっていました。
「日本ダービー」も18頭しか出走が許されていませんが、当時の【日本選手権競輪】は決勝の9名どころか、本戦に進むことさえも大変でした。こうした背景を踏まえても、競輪選手の勝ちたいレースとして、【日本選手権競輪】が取り上げられるのも納得がいきます。
今年の【日本選手権競輪】は、新旧ナショナルチームに所属していた選手の活躍が目立っていました。これは名古屋競輪場が時計の出やすい高速バンクであり、トップスピードを延ばす練習をしてきた走りに適していたからです。
ただ、準決勝に勝ち上がってきた現在のナショナルチームの太田選手、中野選手ともに決勝進出とはならず、その一方で旧ナショナルチームの新山選手と、松井選手が決勝に名を連ねました。
ここはレースの組み立てに分がある旧ナショナルチームの2人が勝ったとも言えるでしょう。また、現在の競輪はタテ脚に加えて横の動きもできる「オールラウンダー」が活躍しており、それを体現する古性選手と眞杉選手も9名の中に名を連ねたのも納得がいくところです。
決勝の並びですが、①古性選手と④浅井選手が単騎戦。北日本ラインは②新山選手-⑧菅田選手-⑥阿部選手と決勝では唯一の3車でのラインとなりました。そして関東ラインが③眞杉選手-⑨吉田選手、南関東ラインが⑦松井選手-⑤岩本選手となります。
今大会で抜群の動きを見せているのが、4日目のゴールデンレーサー賞でも抜群の動きを見せていた古性選手です。勝負どころを見逃さないだけでなく、そのコースを抜けて来られるだけの横の動きと、タテ脚も証明した、まさに古性選手しかできない走りでした。
他には突っ張り先行だけでなく、準決勝ではカマシて行った太田選手の後ろから、捲っていった新山選手も状態は良さそうです。
このメンバーでも先行していくのは新山選手だと思います。1番車の古性選手は単騎だけに前受けはしてこないでしょうし、8番車と言えども菅田選手はスタートがいいだけに、北日本ラインがスタートを取り、その後ろが古性選手。関東ラインを挟んで浅井選手、南関東ラインの並びとなりそうです。
先行する抑えにかかるのは、松井選手となります。ここで旧ナショナルチームの対決となりますが、新山選手は突っ張りにかかるので、松井選手は元の位置まで戻るはずです。
そこでペースが緩んだのを見て、一気に先行態勢へと入るのが眞杉選手となります。新山選手も抵抗するとは思いますが、眞杉選手と吉田選手を前に出したとしても3番手となるだけに、ここは無理をせずに後ろに入るかもしれません。
ただ、ここで2人がやりあうようならば、2つのラインの後ろにいる選手にチャンスが生まれてきます。新山選手の後ろにいる菅田選手、眞杉選手の後ろにいる吉田選手は、共にタテ脚もあるだけに、直線で抜け出してくる可能性は充分にありますが、こうした混戦でこそ、確実にビクトリーロードを突き抜けてくるのが古性選手だと見ています。
印としては◎①古性選手、〇⑨吉田選手、△⑧菅田選手、×②新山選手としておきますが、先ほども書いたように、新山選手が関東ラインの後ろに入るどころか、眞杉選手のダッシュに吉田選手が離れるようだと、その番手にも入れるはずです。そうなれば、準決勝の再現とばかりに、番手捲りを決める可能性も充分にあると思います。
今大会は1着賞金の9400万円もさることながら、2着の賞金も通常のGI並みと言える、4321万円となっています。昨年2着だった岩本選手が、その年のグランプリに出場しているように、今年も2着に入れば賞金面でのクランプり出走が濃厚となります。レースでは優勝選手だけでなく、2着に来るのはどの選手かにも注目してください。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。