佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎のレース回顧】地元いわき平で五輪に出ているような感覚に包まれた

2021/08/30 (月) 18:00 13

S級S班・佐藤慎太郎選手が出場レースを振り返る(撮影:島尻譲)

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、元気してますか? 今月のコラムは最近出場してきたレースのことを書いていこうと思う。

過去の義理、その日の対戦、未来のレースに繋げるのが競輪選手

 まずは高知記念の決勝について書きたい。準決勝のレース後、番組表を見ながらあらゆる展開を想像しながら葛藤した。オレの理想とする追い込み選手っていうのは『行きたい位置があるなら、そこで勝負すると決めて行くこと』だし、日頃からコメントを出す時にも態度を表せるようにってことを重々肝に銘じている。でも今回の『勝てる位置を狙っていく』という意思表示はお客さんの車券推理を少々難しくする部分もあったよね。

 以前、長島がオレの前を走ってくれた時、すごく気持ちの入ったレースをしてくれたことがあった。その義理をないがしろにできないっていう信条もある。しかも、番組表で対戦メンバーを眺めていると「これは決め打ちできないな」という複雑さも見て取れた。レースの流れの中での状況判断が多岐に渡るだろうなっていう予測があったんだよね。だからコメントの通り、隙があればどの位置でも突いていくって意識で臨んだ。最終的には2着。優勝には届かなかったけど、前を走ってくれる先行選手への感謝や、その存在の大きさを再確認したレースになった。

一瞬の隙を逃さない対応力、S班のヨコの技術で魅せたシーン (撮影:島尻譲)

地元でのナイターGI、オールスター競輪

 続いてオールスターの場面を幾つか書き留めておきたい。

 いわき平でデビューして25年、地元開催はやっぱり気持ちの入り方が違う。ファンが選んでくれた大舞台だからね、気合い十分に乗り込んだ。開催の直前になると、レース本番を思い浮かべながら走る練習が増えていくから、気持ちを抑えるのが実は難しい…。体を追い込み過ぎてしまうメンタルになっちゃんだよね。

 GIともなると実力が拮抗している選手が集まるから、オレと同じかそれ以上の力を持った選手との対戦が初日から最終日まで続く。見えない疲労すら命取りになるからね。トレーニングメニューを意識して減らすなど、オーバーワークには気を付けて当日を迎えた。

前検日、その表情から闘争心が溢れで出ていた(撮影:島尻譲)

 開催初日、オレは選手宣誓の大役を任せてもらった。無観客開催ではあったけど、オレは競輪選手生活が長いでしょ? ちゃんと観客席に満員のお客さんがいることをイメージできたし、画面越しにいる全国のお客さんにも伝えたいことがあった。『コロナ禍で迫力あるレースで魅せて、いわき平から全国へ元気を届けたい』と競輪選手を代表して宣言した。責任感? 使命感? よくわからないけど、そのあたりの感情があったから多少緊張しちまったよ! ガハハ!

五輪直後の新田と連係したときの胸の内

東京五輪直後の参戦となった新田祐大選手(撮影:島尻譲)

 初日が始まって、早速ドリームレースでオリンピック帰りの新田との連係。もともと強いことは知り過ぎているんだけど、オリンピックに向けて状態をピークに持ってきた新田祐大がどんな走りをするのか、どれほど速くなっているのか、どれほど強くなっているのかが単純に楽しみで仕方がなかった。オレは競輪選手であり、一人の競輪ファンだからね。

 世界と闘い抜いた直後の五輪組と地元オールスターという舞台で連係・対戦できることにテンションが上がらないはずがない。外からレースを観戦したいなっていう感覚もあったくらい(笑)でも、新田の後ろを回るってことを目標にずっとやってきているから、オレが最初に一番近い特等席で新田の走りを感じられるのは光栄なことだし、最高なこと。そういう気持ちで走ったよ。

初日開催のドリームレースで新田選手と連係、3着の結果(撮影:島尻譲)

準決勝、深谷の人間性を見た

 準決勝も印象に残っている。準決勝は深谷とオレと成田の連係だったが、3人で勝ち上がりを決めることができた。成田とはデビュー後の練習グループも一緒で同世代だから、地元で一緒に決勝へ行けるのは本当に嬉しかった。オレが調子の悪い時に成田が好調で、成田が調子を落としている時にオレが好調っていう状況があって、なかなか最近は一緒にならなかったからね。成田が1着、オレが2着。とてつもなく悔しい結果ではあるんだけど、同じボリュームで嬉しさもあったな。

 そして深谷の『地元を連れて走る』って気持ちの入った先行には震えたね。深谷も1着を目指してやっている中での3着だから悔しさも並じゃなかったと思う。そんな中で、レース直後にオレと成田を祝福してくれた深谷の男気というか人間性がかっこよくて。こういった連係の記憶は、この先も忘れることはないし、いつかのシリーズに繋がっていくポイントになると思う。

オリンピックに参加させてもらったような気持ちに

オールスター決勝、5番車・黄の慎太郎選手は新田選手の番手回り、守澤選手と成田選手が後ろを固めた(撮影:島尻譲)

 そして最終日の決勝。結果は6着で終わった。地元ファンにも地元関係者にも優勝する姿を見せたかった。帰ってから何度も映像を見返して検証したんだけど、改めて『紙一重の判断』が要求される勝負だったなと振り返っている。レースに出ている選手のそれぞれの思惑、仕掛けのタイミング、一瞬で生まれる展開のアヤにも対応しなくてはいけないよね。自分の中での結果論は消化したので、しっかりと結果を受け止めて精進するのみ!

 それにしても決勝はレベルが高かった。改めてコラムを書いているとレース中の心境を思い出す。オリンピック帰りの2人と地元の決勝を一緒に走れて、脇本のかかりが凄くて、新田も最終バック過ぎから猛チャージして。気持ちの中で『オリンピックに参加させてもらっているような感覚』になったんだよね。その感覚はレースの勝ち負けに関係のないところにあって、地元いわき平で素晴らしい経験をさせてもらえたなって一言に尽きる。

何事も100%のチカラでやる

 今、松戸記念が終わってこれ書いてるんだけど、松戸でも新田と連係して走ることができた。オールスターでも松戸でも新田を後ろで見ていて、とにかく頼もしい。以前とは完全に違う、新田の走りに成長と変化が見て取れる。レースを自分で積極的に動かして支配しようと試みているし、組み立ても仕掛けのタイミングも以前とは異なる。『ケイリン』で培ったメンタルを『競輪』に活かしているというか、スケールが一回り二回り大きくなっているような逞しさを感じた。新田の競輪偏差値は間違いなく高くなっている。

新田選手と慎太郎選手の福島最強タッグは確実にバージョンアップしていく(撮影:島尻譲)

 オレもさらに自分に磨きをかけていかなくてはならない。時代時代で競輪は形を変えていくから、どこに変化のポイントがあるのかなんてわからない。どんなことにでも常に全力でやることが勝利に近づく秘訣だと思う。メシを食う時はメシに全力、酒を飲む時は酒に全力、コラムを書くときはコラムに全力…、そんな感じで自分の限界を高くしていくだけ! 次の向日町記念も全力で走るので、みなさん応援よろしく!

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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