閉じる
佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の選択】弱い姿を見せることになろうとも、理想はほど遠くにあろうとも…復帰を決断!

2025/04/17 (木) 18:00 31

「下半身のウエイト禁止で上半身を鍛える頻度マシマシ」と本人談、いよいよ漢が現場に復帰する(写真:著者提供)

 全国300万人の慎太郎ファン、netkeirinをご覧のみなさん、19日開幕の伊東で復帰予定の佐藤慎太郎です。2月と3月は回復を優先して療養に充てたが、ここでいよいよ再始動する。オレには時間がないからな。今回のコラムでは復帰に際して少し本音を吐露していこうと思う。まあ、いつも本音なんだけどな! ガハハ!

結局のところ答えは出なかった

 まさか最初の暴落からもう一段階、さらにもう一段階下げてくるとは思わなかった。トランプ関税の一連の影響は予測して準備していたし、まったく動じなかった。狼狽売りなどもってのほかだ。だが最初の暴落で「このタイミングで行く!」と勢いよく参戦しちまった。大やけどは負わなかったが、想定したはずの旨味は…。競輪のレースに例えるならば、早く仕掛け過ぎて後半タレてしまった感じだな(笑)。……、このまま投資コラムを続ける手もあるんだが、応援してくれる人達に向けて、復帰戦を前にした心境を書き記しておこう。

 手始めに先月のコラムで書いた文章を引用する。

「早く全力で練習したい」という気持ちと、「過信は禁物、療養が優先」という意識。その両方の気持ちを持たなければならないのは、正直苦しい。アクセルを踏むべきか、それともブレーキをかけるべきか。レースでもこういう選択はあるが、ホント正解のわからない選択というのは難しいものがあるね。

 難しかろうが答えを出さないといけないわけで、自分の中で「まだ早いのかもしれない」と思いながらも復帰を決断した。正解か不正解かは知らん。ただ、しっかりとアクセルもブレーキも考慮した毎日の中で決めたことだ。思いつきではない。休んでいる間に「早く慎太郎のレースが見たい」とか「復帰を楽しみに待っている」といった温かい声をかけてもらった。

 ファンのみなさんだけじゃない。競輪関係者をはじめ、さまざまな人が気にかけてくれた。その声に触れ、「休んでなどいられるか、少々無理しようが復帰するしかない」とも思わされたし、自分の中にある「一刻も早く走りたい」という心には火がついた。しかし、だ。

競輪が好きでたまらない(撮影:北山宏一)

 感情の赴くままに簡単に復帰できるかといえば、話はそんな単純なものでもない。オレのレースを楽しみにしてくれる人がいるってことは「本当に楽しんでもらえる走りができるのか?」という懸念もともなうということ。責任とも言うべきかな。これが大いに気がかりだった。

 少しでも不安がある状態で復帰するのは、応援してくれる人に対して、むしろダメなことじゃないのかって気持ちがある。というか今もその気持ちをしっかりと自覚しながら書いている。色々な考えが巡ったが、そう易々と答えなんて出せなかったわ。「答えは出せなかったが、復帰しようと決めることはできた」ってのが、かなり正確な表現だと思う。

弱った姿を見せたくない

 “もうひとつ”ある。人前に出る以上、なおかつ勝負事を生業にしている以上は「弱った姿を見せたくない」という意思がある。このコラムで何度か語っているかもしれないが、強くなりたいという気持ちじゃなくて、弱くなりたくないという気持ちでずっとやってきた。応援してくれる人がオレの走りを見て「こんなはずじゃないだろ」って落胆しちまわないように日々のトレーニングに励んできたわけだ。

 でも今回のケガは復帰してみないことには本気でわからない。走ってみてどうかということが不明だ。正直に言えば練習をしていても「佐藤慎太郎の精神が誰かの体を借りて走っている感覚」が拭えん。意気揚々と「優勝争いしてやらあ」と乗り込むには厳しい感覚があるんだよな。

「股関節の可動域確保」のため、ロードレーサーでのトレーニングを増やした(写真:著者提供)

 この現実は受け入れなくてはいけないし、できる限りのことをやって復帰する。いつまでも“ケガ人”のままでいられないし、佐藤慎太郎に時間はない。いつ突然走れなくなるかなんてわからない。だからこそ今を大切に考えて復帰する。

 そんなわけで、いつもとは違う心境で伊東に出発だ。「復帰戦だが車券にはしっかりと絡みたいです」とか「万全とは言えないが気持ちでカバーして決勝に乗りたい」とかは言えん。自分を大きく評価せずに、“弱った姿を見せることになるのかもしれない”と覚悟してレースに臨む。「こんなに脚が落ちたのか…」とがっかりされることもあるかもしれない。でもいち早く競輪選手・佐藤慎太郎の生活に戻り、1秒でもその生活を大切にしてえんだよな。理想とはほど遠くても。

復帰戦、理想はほど遠くとも受け入れる覚悟で臨む(撮影:北山宏一)

オールスター投票について

 つらつらと本心を書いてみたが、あとはレースが答えを明らかにしてくれるだろう。ケガ人コラムも今月で終焉だ。ただ、今の気持ちって少し新鮮だったりするんだよな。プラスの意味で。オレは今まで自分を追い込み過ぎてきたのかもしれない。気を張って理想を追いかけ過ぎているのかもしれない。尻に鞭を入れるような毎日を送ってきて、血で腫れあがり、そこにも鞭を打ってきた。少し考え直しても良いのかもしれない。

 48歳のオッサンが約2ヶ月も車椅子生活を送ったんだ。そんなに簡単にケガ前の状態に戻るわけもないだろう。それでも今はただただ走ってみようと思う。いつもの強気キャラではないが、当然弱気なはずもない。伊東、KEIRINアドバンス。まずは1走目を全力で行く。

 そういえばオレがケガで休んでいる間にオールスター競輪のファン投票がはじまった。すでに多くのファンが「投票したぞ、慎太郎!」と教えてくれた。競輪選手の本分は「走り」だ。そこは疑いようがない。でも、こういう状況でも多くの人が投票したぜってメッセージをくれるってことは、今まで積み上げてきた佐藤慎太郎の選手人生やキャラクターを応援してくれる人達がいるってこと。今のような苦しい時期に、本当にありがたい限りでした。もっともっとウェルカムだぜ!

 それでは復帰一発目へ出かけて来る!

症状を思えばかなりの早期復帰、“今”を大切にしたい佐藤慎太郎がリスタートを切る(撮影:北山宏一)

【公式HP・SNSはコチラ】
佐藤慎太郎公式ホームページ
佐藤慎太郎X(旧Twitter)

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

佐藤慎太郎“101%のチカラ”

佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。

閉じる

佐藤慎太郎コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票