2025/04/13 (日) 12:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は武雄競輪場で開催されている「大楠賞争奪戦」の決勝レース展望です。
【大楠賞争奪戦】が行われている武雄競輪場は、400バンクの中でも見なし直線の距離が500バンクに匹敵するほど長く(64.4メートル)、ゴール前の攻防が激しくなる傾向にあります。
それだけに仕掛けのタイミングや、風向きなどで延びるコースを知っている、地元選手が有利と言えます。
今大会では山田(庸)選手が初日特選からの3連勝で勝ち上がってきたのは、番組面で恵まれていたとは言えども、やはり走り慣れているバンクであるのは大きいと言えそうです。
その一方で、このバンクに合ってないちぐはぐな走りをしてしまったのが、準決勝の12レースに出走していた眞杉選手でした。
このレースで前受けをした眞杉選手ですが、抑えられるのは想定していたはずであり、後方からの捲りを狙っていたはずです。
ただ、残り2週の2コーナーから動き出した石原選手の仕掛けに反応して、その差を詰めていこうとしたのですが、ここで九州ラインの3番手を固めていた、田中選手と接触してしまいます。
6番手で立て直しを図った眞杉選手は、残り1週のバックから捲っていくものの、先に脚を使っていたこともあってか、ゴール前で伸びきれず4着に敗れてしまいます。
決勝にラインの選手を連れていきたいとの思いもあったのでしょうが、ここは直線の長さを生かすべく、腰を据えた走りをしても良かったのではないかと思います。
同じくSS班の岩本選手も、先行した野口選手の後ろから番手捲りを繰り出せるという、絶好の展開にはなりました。ただ、野口選手との車間を空けなかった一方で、3番手となっていた寺崎選手との車間を空けすぎてしまったのが誤算でした。
寺崎選手が前との差を詰めていった時、その後にいた坂井選手は、脚を使わずに捲りを繰り出せる展開となってしまいます。そこに長い直線も相まって、先に抜け出していた岩本選手を、後方の選手たちと共に飲み込む形となりました。
今大会は新山選手も二次予選で欠場するなど、SS班にとっては受難の大会となりました。それだけに決勝は実力が伯仲した面白いメンバーになった感があります。
その並びですが、九州ラインが⑤嘉永選手-①山田(庸)選手-⑥山口選手-⑧園田選手。関東ラインが②坂井選手-④杉森選手-⑦高橋選手。連日に渡ってバックを取ってきた③太田選手の後ろは、初連係の⑨山田(久)選手となりました。
やはり有利なのは4車で並んだ九州ラインです。山田(庸)選手が1番車には入っていますが、無理に突っ張り先行をしていくのではなく、2番車の坂井選手に前受けをさせての、4番手からの方がレースがしやすいと思います。
その展開となれば、後ろから太田選手が抑えに行ったタイミングで、嘉永選手は一気に先行態勢へと入るでしょう。もし、太田選手が前受けをした場合は、3番手からのレースとなるので、より先行が楽になります。
いずれにしても、九州ラインが早めに仕掛けたのならば、番手にいる山田(庸)選手にとっては展開的に有利となります。山田(庸)選手は今年3月に【ウィナーズカップ】で、バンクレコードを樹立しています。
その好調さは今大会も続いているようで、初日の特選も4コーナーで空いたコースを抜け出してくるという、スピードとレース勘の冴えを両立させた走りでした。
嘉永選手もいい走りは見せていますが、山田選手とのスピードの違いは明らかです。九州ラインが抜け出すような展開となれば、九州ラインの3番手となった山口選手だけでなく、4番手の園田選手との九州ラインでの上位独占も考えられます。
その山田(庸)選手のスピードに、唯一対抗できる存在が、太田選手と言えます。太田選手は先行した九州ラインの後ろからレースを進められたのならば、捲りは届かなくとも、長い直線を生かしてのゴール前勝負に持ち込めるはずです。
また、先行した嘉永選手が流していくようだと、一気にレースの主導権を握っていけるだけの加速もあります。その場合は後方から捲ってくる、坂井選手との車券が高配当をもたらしてくれそうです。
印は◎①山田選手、◯⑥山口選手、△③太田選手、×②坂井選手に打っておきますが、買い目としてはちょい荒れだけでなく、大荒れの予想も出しています。
山田(庸)選手が優勝すれば、地元での完全優勝となるだけでなく、18年にこの大会を制している、兄の山田(英)選手との兄弟制覇も達成されます。九州の4名が団結した時に、それは高い確率で叶えられるでしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。