2025/04/06 (日) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は高知競輪場で開催されている「よさこい賞争覇戦」の決勝レース展望です。
「高知」と言えば、やはり全国一の消費量を誇るカツオが名物ですが、競輪ファンの皆さんの中には、やはり、全国に3カ所しかない500バンクを思い浮かべるかもしれません。
ちなみに高知競輪場の宿舎では、カツオのタタキが食事に出てきます。駆け引きの難しい500バンクですが、会心のレースができた時のカツオのタタキの味は、また格別でした。
ただ、今大会でいうと走り慣れていない500バンクが遠因となった上に、ラインの攻防による落車も多く見られました。これは、7車立てのレースと、9車立てのレースの展開の違いもあったかと思います。
7車立てのレースですが、展開の鍵を握る先行選手が少なくなった場合には、二分戦となることが多く見られます。
一方、記念競輪のような9車立てのレースでは、番組編成的にも三分戦が多くなり、時としては細切れ戦になることもあります。
選手の数の違いだけでなく、ラインの数も増えていけば増えていくほど、駆け引きは複雑になっていきます。
その結果、思いがけないような事故も起こってしまうのですが、それも想定したレース運びができているのが、9車立てに慣れているSS班の選手たちです。
初日の特選では落車に巻き込まれた犬伏選手でしたが、思ったよりも軽症だったのか、二次予選、準決勝と連勝を果たしています。
自分の経験談としては落車の後はアドレナリンが出ていますが、それが時間を経つことに張りや痛みへと変わっていきます。
なので、大したことが無いと思っても、アイシングはしっかりと行っていただけでなく、クールダウンにも時間をかけていました。そして、日を追うごとに悪化していくのは、むち打ちのような症状が出てくる「首」です。
犬伏選手は落車の影響など感じさせないようなの走りを見せていますが、最終日もしっかりとケアをして、万全な状態で決勝を迎えてもらいたいと思います。
その決勝メンバーの並びですが、中四国ラインが①犬伏選手-⑦清水選手。関東ラインが②眞杉選手-⑥志村選手。九州ラインが⑨山崎選手-④小川選手であり、⑤松井選手の後ろは、東日本のくくりで⑧渡部選手。そして、③脇本選手が単騎戦となりました。
準決勝の3つのレースを見ていると、最もインパクトがあったのが、12レースに臨んだ脇本選手です。伊藤選手が先行したレースは、5番手となった松井選手が前との車間を取っただけでなく、捲っていくタイミングをギリギリまで待ったことで、後方にいた脇本選手にとっては苦しい展開となりました。
それがゴール前では図ったのようにキッチリと差し切ったのは見事でしたが、上がりタイムも13秒6を記録しています。比較すると11レースにおける眞杉選手が13秒7で、10レースの犬伏選手は13秒9でした。
捲りが効きづらい高知バンクだけに、3人揃って強さを証明したレース内容ながらも、脇本選手のスピードは一枚上だったとも言えます。
ただ、脇本選手は単騎戦となっただけに、この決勝ではやるべきことが限られてきます。ただ、眞杉選手は先行よりは捲りを出している上に、先行意欲の強い松井選手も、今大会はバックを取っていません。
スタートを取るのは車番のいい(1番車)犬伏選手ではなく、前受けをすることが多い2番車の眞杉選手が、ここでも誘導員の後ろを主張してくると見てます。
その場合は関東ライン(眞杉選手)、中四国ライン(犬伏選手)、単騎の脇本選手の後には(東日本ライン)松井選手、山崎選手(九州ライン)で流れていきそうです。
誘導員が退避する前に、後方にいた山崎選手が眞杉選手を抑えにかかり、松井選手がその上からインを切りに行きます。そこで車列が短くなったタイミングで、犬伏選手が先行体勢へと入っているはずです。
この展開になれば、後方で車列が短くなるのを待っていた、眞杉選手の捲り一発が決まります。捲っていった眞杉選手のその上を、更に捲っていけるのは、スピード勝負に持ち込める犬伏選手が脇本選手しかいません。
脇本選手は切れ目からのレースとなりますが、消極的になった結果、9番手まで下げられるのは避けたいところでしょう。
印としては◎②眞杉選手、◯①犬伏選手、△③脇本選手、✕⑦清水選手となります。ここではSS班が上位と見ますが、清水選手も状態はそこまで良く無くとも、犬伏選手の捲りに乗っていけたのならば、車券圏内は充分に考えられます。
SS班が上位独占となれば、配当も安くなってしまうだけに、絞った買い目を予想に出しておきました。参考にしていただければ幸いです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。