2025/03/31 (月) 18:00 21
現役時代はKEIRINグランプリを3度制覇、トップ選手として名を馳せ、現在は評論家として活躍する競輪界のレジェンド・山田裕仁さんが前橋競輪場で開催された「まえばし春風賞」を振り返ります。
2025年3月30日(日)前橋12R 施設整備等協賛競輪in前橋 まえばし春風賞(GIII・最終日)S級決勝
左から車番、選手名、期別、府県、年齢
①佐藤礼文(115期=茨城・33歳)
②小倉竜二(77期=徳島・48歳)
③和田真久留(99期=神奈川・34歳)
④篠田幸希(123期=群馬・26歳)
⑤高橋晋也(115期=福島・30歳)
⑥伊代野貴照(101期=奈良・44歳)
⑦佐々木豪(109期=愛媛・29歳)
⑧阿部大樹(94期=埼玉・36歳)
⑨山崎芳仁(88期=福島・45歳)
【初手・並び】
←⑤⑨(北日本)⑦②(四国)④①⑧(関東)③⑥(混成)
【結果】
1着 ⑨山崎芳仁
2着 ②小倉竜二
3着 ③和田真久留
3月30日には群馬県の前橋競輪場で、まえばし春風賞(GIII)の決勝戦が行われています。通常はビッグレースの直前などに「裏」で開催されることが多い協賛GIIIで、通常の記念よりも出場選手のレベルは落ちるわけですが、それでもなかなか面白いメンバー。荒井崇博選手(82期=長崎・46歳)と和田真久留選手(99期=神奈川・34歳)は競走得点が112点台ですから、なかなかのものです。
近況がいいのは、平塚、四日市とF1を連続優勝してきた和田選手。初日特選でも人気の中心となりましたが、残念ながらなにもできずに終わってしまいましたね。最終ホームから仕掛けた佐々木豪選手(109期=愛媛・29歳)が前を捉えるかと思われたところを、後方から自力で捲った荒井選手が、直線で外から突き抜けて1着。佐々木選手と、その番手から差した小倉竜二選手(77期=徳島・48歳)が2着同着という結果でした。
この初日特選からして「3連単ダブル万車券」の波乱決着だったわけですが、このシリーズでは以降も高配当が続発。3日目第10〜12レースの準決勝なんて、12万車券、1万車券、トドメに24万車券ですからね。確たる中心を欠くシリーズで、難しいレースが多くて当然ではあるのですが、それにしても荒れました。こんなの、レース直後に解説を求められても、なかなか言葉が出てきませんよ(笑)。
準決勝第12レースの大波乱は、人気の中心である荒井選手が敗れたのが大きかったですね。前を任された佐々木選手が内に突っ込んで包まれ、荒井選手が離れざるをえない隊列になってしまいました。佐々木選手はそこから抜け出して1着をとりましたが、自力に切り替えた荒井選手は、落車の煽りも受けて5着に敗退。1〜3着がすべてスジ違いだったのもあって、ちょっと手が届かないレベルの高配当が飛び出しました。
そんな大混戦をくぐり抜けて、決勝戦に駒を進めた9人。ライン4つのコマ切れ戦で、唯一の3車ラインが関東勢です。先頭は地元の篠田幸希選手(123期=群馬・26歳)で、番手を回るのは佐藤礼文選手(115期=茨城・33歳)。3番手を固めるのが阿部大樹選手(94期=埼玉・36歳)という並びで、車番にも恵まれましたね。この“数の利”を生かすためにも、積極的なレースを期待したいものです。
デキのよさが目立つ四国勢は、先頭が佐々木選手で、番手が小倉選手という組み合わせ。同地区の小倉選手が番手につくとなると、佐々木選手は準決勝のような失敗はなおさらできません。そして和田選手は、これがGIIIでの初優出である伊代野貴照選手(101期=奈良・44歳)と即席コンビを結成。思いきって逃げる手もなくはないですが、この組み合わせならば、和田選手は捲り主体でしょう。
そして福島勢は、高橋晋也選手(115期=福島・30歳)が先頭で、その番手を山崎芳仁選手(88期=福島・45歳)が回ります。ここで最も先行しそうなのは高橋選手ですが、車番が悪く後ろ攻めになりそうで、そこからどうレースを組み立てるかが難しい。1着こそとれていませんが、けっして悪いデキではないだけに、高橋選手が楽に主導権を奪えるような展開になると面白そうですね。
それでは、そろそろ決勝戦のレース回顧といきましょう。レース開始の号砲と同時に飛び出したのが、5番車の高橋選手。スタートを取りきって、北日本勢が前受けを決めます。その直後3番手は佐々木選手で、関東勢の先頭である篠田選手は5番手から。そして最後方8番手に和田選手というのが、初手の並びです。先行へのこだわりが強い高橋選手が前受けとなると…展開が想定とはかなり変わってきます。
後ろ攻めとなった和田選手が動き出したのは、青板(残り3周)周回の2コーナーから。先頭の高橋選手を斬りにいこうとしますが、バック通過で先頭誘導員が離れたところで、高橋選手は突っ張る姿勢をみせます。和田選手も無理はせず、しばらくは様子見モードに。しかし、結局はバックを踏んで元の位置に戻りながら、2センターを回ります。再び一列棒状となって、赤板掲示(残り2周)を通過しました。
そのまま赤板後の1センターを回りますが、その後も誰か動いてくる気配のないままで、レースは打鐘を迎えます。先頭の高橋選手はペースを上げますが、ここで後方の和田選手が内を抜けて、ポジションを上げようと試みます。この和田選手の動きに、連係する伊代野選手は反応できずに離れてしまいました。最終ホーム手前で、和田選手は篠田選手の内側に入り込み、小倉選手の後ろに取りつきます。
最終ホームを通過した直前、和田選手の外併走となっていた篠田選手が仕掛けて、前を捲りにいきます。しかし、和田選手の後ろにつけていた佐藤選手や阿部選手は、篠田選手を追走できません。単騎捲りとなった篠田選手は、最終1センターで小倉選手に軽くブロックされたところで、それ以上は無理をしませんでしたね。その直後、今度は3番手の佐々木選手が前を捲りにいきました。
この仕掛けに合わせて、山崎選手が高橋選手の番手から発進。合わされた佐々木選手が苦しくなったのをみて、番手にいた小倉選手はタテに踏んで前との差を一気に詰め、山崎選手の後ろを狙いにいきます。その内まで進出していた和田選手は、小倉選手の後ろに切り替えました。最終3コーナーでは、小倉選手は外から迫ってくる佐々木選手を退け、山崎選手の後ろを取りきります。
番手から力強く捲った山崎選手を小倉選手が追うという隊列で、最終2センターを通過。その後ろからは和田選手が追って、この3車がタテに並んで最後の直線に向きます。その後ろからは佐藤選手も伸びてきますが、前橋335mバンクの直線は短い。外に出して差しにいった小倉選手や和田選手は届かず、山崎選手が先頭でゴールラインを駆け抜けました。山崎選手、じつに5年ぶりとなるGIII優勝です。
2着は小倉選手で3着は和田選手と、最後の直線に入った順番のままでゴールイン。内から最後よく伸びた佐藤選手が4着で、山崎選手に仕掛けを合わされた佐々木選手は6着に終わっています。初手で前受けを狙いにいった高橋選手のファインプレーで、突っ張られてのもがき合いや共倒れは避けたいという心理から、他のラインは動きを封じられてしまいましたね。後ろ攻めとなった和田選手は、かなり厳しかったはずです。
それにしても、佐々木選手を寄せ付けなかった山崎選手の番手捲りは、かかっていましたね。優勝インタビューで山崎選手が語ったように「高橋選手のおかげ」で、「今回は周りに助けられて勝ち上がれた」のも事実ではありますが、それでも力がなければグレードレースは勝てませんから。終わってみれば、グレードレースの勝利経験のある選手が上位を独占と、“格”を感じさせる結果でもありました。
佐々木選手については、準決勝での失敗や「小倉選手が番手」というプレッシャーが悪い方向に働いたのか、思い切りに欠ける走りになってしまった感がありますね。いい位置を取れていたのですから、もっと果敢に攻めてもよかった。主導権を奪った高橋選手をあそこまで楽に逃がしてしまうと、さすがに厳しい。それは関東勢も同様で、高橋選手に「してやられた」という結果だったといえます。
それにしても…山崎選手は2020年1月のいわき平以来となる、約5年ぶりのGIII優勝ですか。勝ち上がりの過程もそうでしたが、彼がこれまで積み上げてきたものが「ザキさんを応援したい」という気持ちとなって、無風のはずの前橋ドームに強い追い風が吹いていたように感じました。小倉選手もそうですが、やはりベテラン勢がこのように存在感を発揮している姿が見られるのは、うれしいものです。
山田裕仁
Yamada Yuji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校第61期卒。KEIRINグランプリ97年、2002年、2003年を制覇するなど、競輪界を代表する選手として圧倒的な存在感を示す。2002年には年間獲得賞金額2憶4434万8500円を記録し、最高記録を達成。2018年に三谷竜生選手に破られるまで、長らく最高記録を保持した。年間賞金王2回、通算成績2110戦612勝。馬主としても有名で、元騎手の安藤勝己氏とは中学校の先輩・後輩の間柄。