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【今年デビュー128期】落ち込むたびに背中を押してくれた父の声 北津留千羽「デビュー戦までに自信を持てるように」/卒業記念インタビュー

アプリ限定 2025/03/12 (水) 11:59 6

今年デビューする競輪選手候補生の第127回生(男子)と第128回生(女子)の卒業式が7日、伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。当サイトでは競輪選手候補生の卒業を記念してルーキーたちの横顔を特集シリーズで更新中。Vol.3となる今回はマウンテンバイク全日本選手権(ジュニア)のチャンピオン北津留千羽(きたつる・ちはね)のインタビューをお届けする。(取材:3月4日卒業記念レースにて/構成:netkeirin編集部)

128回生としてデビューする北津留千羽(写真提供:公財JKA)

 S級戦線で凌ぎを削る北津留翼を父に持ち、2023年の全日本選手権(ジュニア)ではマウンテンバイクで優勝経験がある北津留千羽。名実ともに注目を浴びての入所となったが、卒業記念レースを迎えるまでは順風満帆とは行かず、苦しみもあったようだ。

ホームシックによる負のスパイラルに耐えて

ーーこの10か月、養成所生活はいかがでしたか?

 養成所に入所してから夏季帰省までは本当にあっという間でした。充実していて時間も一気に過ぎていきました。でも後半は気持ちに波があり、苦しいことも多かったです。

ーー卒業記念レースの前検日に「養成所生活ではホームシックにもなった」とコメントを出されていましたね。

 夏季帰省から養成所に戻り、ホームシックになってしまって。そこからは時間の流れがとても遅くて。ツラい気持ちで過ごしていたので、卒業を迎えるまでとても長く感じたのが正直なところです。

ーー気持ちがアップダウンすると疲弊しますし、親元を離れての集団生活は相当難しかったと想像します。

 本当にそうでした。競走訓練で簡単なこともできなくて、「なぜ自分はこんなこともできないんだろう」と落ち込んでしまって…。気持ちがどんどんネガティブに入ってしまったんです。そのネガティブな気持ちのままで取り組んでいては、うまくいくいものもうまく行かず…。そしてまた「なんて自分はできないんだろう」って気持ちが沈んで、という感じでした。

ーーお父さん(北津留翼選手)はそんな時どういった言葉をかけてくれましたか?

 電話越しに自分のことを褒めてくれるような言葉をたくさん投げかけてくれました。『お父さんの学校時代よりも全然優秀じゃん!』のような感じで励ましてもらいました。

ーー父娘の絆で難局を乗り越えられたんですね。

 そうですね。父の言葉には本当に元気づけられましたし、背中を押してもらいました。

紆余曲折を経て卒業記念レースに辿り着いた(写真提供:チャリ・ロト)

卒業後、まずは大好きなマウンテンバイクに!

ーーそんな養成所生活の中で成長できたポイントはありますか? 話の流れ的にメンタルが強化された感じなのでしょうか?

 いいえ、強化されたのは筋力です(笑)。

ーー筋力ですか?

 今までの人生でジムトレーニングというものをまったくやってきていませんでした。他の候補生はみんなすごく重量を持てますし、負荷をかけられるんです。 みんながウエイトトレーニングで重いものを上げていたので、「私もやらないと!」って意識が変わりました。それでウエイトトレーニングもやり込んだので、筋力面とかパワーとかは上がったと思います。

ーーまったく取り組んでいなかった部分を強化することで成長できたのですね。身体のバランスなどは崩れないものなのでしょうか?

 それは大丈夫でした。でもここ2週間くらい長い距離を乗っていなくて、少し筋力が落ちているような感覚があるんですよね。そういう所には敏感になっているかもしれません。でも悪い影響はないと思います。

ーーデビュー後にレースを走り、お客さんにはどんな部分を見て欲しいですか?

 自分は脚質的には持久力を武器にしているタイプなので、持久力をうまく生かしたレースをしていきたいと思っています。そういう部分に注目してもらえたら嬉しいです。

ーー入所時にインタビューさせてもらった時に「在所中は大好きなハニートーストを食べられなくなる」と悲しんでいました。やっぱり食べられませんでしたか?

 食べられませんでした。卒業したら絶対に食べたいです(笑)。

ーーたっぷりハチミツをかけていただいて! ハニートースト以外で卒業したら絶対にやりたいことがあれば教えてください。

 マウンテンバイクに乗りたいです。ずっと大好きで乗ってきたマウンテンバイクですが、養成所では乗ることができませんでした。まずは目一杯乗りたいです。

ーーさすがマウンテンバイク全日本選手権(ジュニア)チャンピオンです。そういえば絵が好きとのことですが、どんな絵を描いているんですか?

 自分が想像して勝手に作ったキャラクターです。『ちいかわ』が好きで、かわいい感じのキャラクターが好きなので、そういう雰囲気のものですね。

持久力をベースにいつか“強い捲り”で勝負したい

卒記レース最終日に絶妙な仕掛けで捲りを放った(写真提供:チャリ・ロト)

ーー競輪の話に戻りますが、卒業間近でプロデビューを控えた今、期待と不安はどの程度の割合ですか?

 不安な気持ちが70%くらいで、楽しみな気持ちが30%くらいです。これから卒業して地元に戻って練習をして、父にもたくさん話を聞いてみようと考えています。デビューするまでにもっと自信を持って走れるように準備していくつもりです。

ーー目指していく選手像はどのようなイメージでしょうか?

 持久力というのがベースにはあるんですけど、もっとスピードを強化して強い捲りを打てるようになりたい気持ちはあります。

ーー“強い捲り”といえば誰よりも詳しい選手が一番近くにいますし、最高の環境ですね。

 ありがとうございます。父には質問したいこともたくさんあるので、話を聞きながら強化していければと思います。

ーーデビューしてからの目標はありますか?

 一番高い目標なら、やっぱりガールズグランプリです。でも今は実力がともなっていないので、そこに向けて自分の実力をしっかりとつけていくような生活を送れたらと思います。

ーー128期の同期のみなさんはどんな関係性でしたか?

 絆もありますし、ライバルでもあって。個々に実力差もあるけど、みんなで切磋琢磨して高め合っていける関係性だったと思います。

ーー特別仲の良い候補生はできましたか?

 橋本のこ候補生です。同級生で話しやすくて、色々な話をしました。

ーー最後に意気込みをいただいても良いでしょうか。

 レースでは積極的に動いていけるような強い選手になりたいと思っています。精一杯頑張ります!

今の実力と潰すべき課題を把握してスタートラインを見据えている(写真提供:チャリ・ロト)


 ホームシックの話題をはじめ苦しい時間を思い起こさせてしまう質問にも、明るい笑顔を絶やさず一言ひとこと丁寧に応じてくれた北津留千羽候補生。デビューまでの準備期間に父・翼にたくさんの質問を投げ、指導を乞うと教えてくれた。また愛娘の卒業記念レースを観戦した父も「(レースやフォームを)実際に見てわかったことがいっぱいあった」と改良ポイントを発見しているそう。卒業記念レースでは決勝進出とはならなかったが、最終日一般戦で、狙い澄ました捲りを放ち、独走状態の白星締め。デビュー戦まであと少しの助走期間、父娘の絆をもって羽ばたくための浮力を手に入れる。

■卒業記念インタビュー公開スケジュール
・3月10日(月)12時00分 北岡マリア
・3月11日(火)12時00分 椎名俊介
・3月12日(水)12時00分 北津留千羽
・3月13日(木)12時00分 岩原健馬
・3月14日(金)12時00分 半田水晶
・3月15日(土)12時00分 酒井亜樹
・3月16日(日)12時00分 “銀河系軍団”127回生・128回生データ考察特集

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