アプリ限定 2025/06/26 (木) 12:00 2
『競輪選手になるために、そして夢を叶えるために』今年は第129回生として男子72名、第130回生として女子21名の候補生たちが日本競輪選手養成所に入所し、2026年のプロデビューを目指している。この時期、“未来の競輪スター候補”と題して毎年お届けしている本シリーズだが、今年は10名の注目候補生へインタビューを実施した。今回は129回生・榊枝天旺(さかきえだ・てお)候補生を紹介する。(取材・netkeirin編集部)
元ナショナルチームの榊枝輝文(48歳・福島=79期)を父に持つ榊枝候補生。ファンなら勘づく“天旺”という一風変わった名前はオランダのテオ・ボス選手が由来だ。中学から自転車競技を始め、高校生活最後の2024年は「スプリント」で高校三冠(※)という偉業を遂げた最強の19歳が養成所に乗り込んできたーー。
※高校三冠:全国高校選抜大会、インターハイ、国民スポーツ大会の3つを制覇
ーー榊枝候補生は小さい頃から競輪を知っていたと思いますが、競輪養成所のホームページで「あまり競輪をかっこいいと思ったことがなかった」と仰っていたのが印象的です。今、改めて競輪選手に対してどのようなことを思っていますか?
まだ養成所に入所して1か月くらいしか経っていませんが、「競輪選手って凄いんだな」と感じています。正直、入所するまでは「自分でもすぐS級とか行けるんじゃないか」と思っていたところがあったんですが、実際に養成所での生活を送ってみてその凄さを身に沁みて感じました。自分の父も、父の周りの選手も、みんな本当に凄いんだなと思います。
ーー具体的にすごいと思うところはありますか?
まず、この養成所生活を10か月間乗り越えていることが、とにかくすごいです。競輪は自分のミスでお客さんにも迷惑がかかってしまうこともあり、とても大変な世界だと思います。自分にはまだそういった自覚がないので…本当に尊敬します。
ーーやっぱり養成所での練習は過酷ですか?
練習もそうですけど、環境の面で過酷さを感じます。全て一分単位で動かなくてはならないのは大変です。
ーー実際に今活躍している先輩レーサーでかっこいいと思う選手や、かっこいいと思う理想のレースはありますか?
GIとかグランプリとか見ていて、先行する選手の度胸や捲っていく脚力に惹かれます。自分が一番目標としているのは先行なので、新山響平選手や、突っ張り先行を戦法としている選手はやっぱりかっこいいです。
ーー榊枝候補生も先行でやっていきたいんですね。目指している選手はいますか?
そうですね。目指している選手は特にいないのですが、新山選手が自分の後ろについてくれるような選手になりたいと思います。
ーー今先行で活躍されている新山選手を、自分が先行して引っ張っていきたいということですね。
はい。
ーー次にお父さんのことも聞かせてください。練習のときと普段とでは違いますか?
練習ではそこまで厳しくはないですが、(練習に比べると)普段の父はよく喋ります。家族はみんな仲良しですね。中学生になった妹がいるんですが、妹の学校の話をしたり、普通の会話ですが本当にいろいろな話をします。普通の話をしていたと思ったら、急に自転車のポジションの話になって「今乗ってみろ!」と言われたりもしました(笑)。
ーーなんとも急ですね(笑) 自転車に乗っていない時の趣味はありますか?
両親が僕の長所と短所を書く機会があったんですが、そこに「熱しやすく冷めやすい」と書いてあって…(笑) うーん、趣味はなんだろうな…最近はやっていないですが釣りは以前やっていましたね。
ーー釣りですか、それは冷めてしまったんでしょうか…?
いや、釣りはやりたいです!でも用意していくまでが面倒くさいですね(笑)
ーー用意して行くほどではないということですね(笑)
そうですね。でも釣りは結構やっていました。釣り以外だと、写真を撮ることが好きです。
ーー写真ですか! 風景写真ですか?
はい、なんでも撮ります。一眼レフも買いました。結構奮発しちゃいました(笑)
ーー一眼レフは本格的ですね! さて、また競輪のお話を聞かせてください。榊枝候補生は自転車競技「スプリント」で高校三冠という素晴らしい成績を残しての入所となりましたが、今プレッシャーは感じていますか?
プレッシャーは全くないです。達成したときはもう本当に嬉しかったですが、競輪選手として生きていくために“競技で三冠を達成した過去”は捨てて、新たな気持ちでまた一からやっていきたいと思っています。
ーー素晴らしいです。これまでに「悔しかった」ことを教えてください。
去年、アジア選手権と世界選手権に出れなかったんです。すごく出たかったのですが、力不足で出れなくて…。父からは「気持ちに変化がある時は、大きく変わることができる時だから」と言われました。そこから、悔しさをバネに大きく変わろうという思いで毎日練習しました。
悔しいといえば今回の記録会でも全くタイムが出なくて…。全体の中間くらいのタイムでした。父にも「あまり周りと比べるな」と言われていたんですが、どうしても比べてしまいました。初めて挫折を経験しています。でも応援してくれている家族や仲間がいるので、第二回の記録会では感謝の気持ちを持って、いいタイムを出せたらいいなと思います。
ーーでは、ひとまず直近の目標は第二回の記録会ですね。
はい。ゴールデンキャップを獲るのはもちろんですが、200mや400mなど、どれか一つの種目で世間を驚かせるタイムを出して、デビューした時に皆さんに注目されるような選手になりたいです。
ーー競輪選手としての大きな目標を教えてください。
人生の目標は幸せな家庭を築くことなんですが、競輪選手としての目標はKEIRINグランプリに出場することです。でも一番は幸せな家庭を築くことですね。
ーー「幸せな家庭」が一番の目標なんですね(笑) どちらも応援しています!
第一回記録会200mTTでは11"42、400mTTでは23"02で「スピードと持久力が優れている」候補生に振り分けられる白帽を獲得した榊枝候補生。“高校三冠”の栄光は胸の奥にしまい、競輪選手を目指すべく新たな挑戦の道を歩み始めた。競輪界の頂上「KEIRINグランプリ」出場を掲げつつ、一番の目標は「幸せな家庭を築くこと」。その両方をつかみ取る日が来ることを心待ちにしている。
netkeirin編集部
netkeirin Editorial department
netkeirin編集部がピックアップする“未来の競輪スター候補”のインタビューをお届けします。